ローカルルールを必読のこと

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董卓の娘相談スレ

1 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 00:14:55 ID:admin


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                      \ 、    _    / {i:i:7i:i:i:i:iリ
         、              丶 ー "  _ -    ∨i:i:i:i:i/
      、ト \、             /ト -=       ィ/i:i:i:i:i/ 7
         丶>― 、        _ 斗 7i:i:i:i:/!    //i:i:i:i:ア.ィ/,
        _ ノ ⌒ 丶\  _ -=    ,:i:i:i:i/.∧  ///i:i:i/:::::イ 丶
      r " <7 ̄ 、\ X       |:i:i:イ /f/ // ,i:i/::::/     ∨
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97 :名無しさん:2021/02/16(火) 09:17:52 ID:CmMYxTVn0
今回もなろうに投稿する予定だっけ?

98 :神奈いです ★:2021/02/16(火) 13:16:00 ID:admin
>>97
> 今回もなろうに投稿する予定だっけ?

どこがいいですかね?おすすめあります?

99 :名無しさん:2021/02/16(火) 13:24:02 ID:CmMYxTVn0
なんやかんやでなろうと笛以外は開拓してないなぁ……
カクヨムはどうなんだろ、UI改善した?

100 :名無しさん:2021/02/16(火) 13:28:12 ID:8Svr4FMZi
なろうは今結構長いこと「もう遅い」系がランキング上位独占してますね
ポツポツ環境変わりそうな空気して来てますが

ただ今ランキング上位にいる「もう遅い」系って
一昔前からあった居なくなって初めて有り難みがわかる系とちょっと毛色が違うんですよね

あくまで主人公に非がない状態だからスカッとしたのに
今ランキング上位にいるのは会社から依頼退職打診されたから情報漏洩させまくってやった
みたいな感じで主人公に好感持ちにくい奴が多い

101 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:00:31 ID:+sec4koS0
河伯の巫女5話

「ああ、天は黒く、地は黄色。宇宙はとっても無限大ですねえ。
 黄土高原ってほんとうに黄色いんだ」

 お父様の前ではじめて読んだ、書物の一節そのままの風景が広がっています。
 私の記憶にある土って、基本的に茶色いものでしたけど。

 私はいま、馬車に乗って、漢王朝の都、洛陽へ向かっています。
 まわりはお父様の兵隊が固めているので、とっても安全です。
 ちなみに洛陽は、お父様のお城がある安邑県から南東に進み、黄河を渡った南側にあります。

 中国の地図ってなんとなく覚えてますか?
 黄河って、中流のあたりで、北の方にぐねぐねって蛇行してますよね。
 なんで蛇行してるのかっていうと、このあたりに「黄土高原」っていう障害物があるからなんです。
 この黄土高原の黄色い土が流れ込んでいるから、黄河は黄色いのだそうで。
 スケールの大きな話ですねえ。さすが中国です。
 
「青ちゃん、青ちゃん、なんともないかね?」

 馬車に揺られながらぼけーっと大地を眺めていたら、隣に座っている董卓パパが、心配して声をかけてくれました。

「ええ、まあ、とっても揺れますけど……
 遠くを見ていれば酔わないはず……うっぷ」

 そうなんです。この馬車めっちゃ揺れるんですよ。
 地面のデコボコを正確にお尻に伝えてくれる超敏感設計です。
 ゴムタイヤなんかないですし、当たり前といえば当たり前なんでしょうけど……正直ちょっときついです。

「むう、無理せずに安邑に残っていればよかったと思うんじゃが」

「いいえ、父上、これは大事なことなのです。ぜひお供を」

 だって皆殺しにされたくないですから。

 マンガのうろおぼえなんですけど、お父様が会いに行く「何進」って人が重要人物なんですよ。
 たしかこの何進さんが宦官を殺そうとして逆に殺され、ブチ切れた何進の部下が宦官を皆殺しにして、
 それでなんやかんやあって董卓お父様が漢の政権を握ることになるんです。
 政権を握ったお父様は暴虐非道のかぎりを尽くし、皇帝を殺害する大罪を犯し。
 最終的に暗殺されて、一族もそろって皆殺しにされるわけですね。

 なので、何進さんに会いに行くこの旅は重要イベントのはず……!
 正直どうやって殺されないようにすればいいか、作戦みたいのは全然思いつかないのですが。
 なにか思いついた時に、近くにお父様がいなくて手遅れっていうのは嫌じゃないですか。
 だから私もおねだりして、ついていくことにしたのです。

「まあ、予言だというならやむを得んが……
 洛陽の都で巫女とか予言とか言うでないぞ?
 うるさい儒者に見つかったら、何を言われるか分からん」

「はい、お父様。心得ています」

 後漢王朝というのは、初代皇帝が予言を利用して皇帝になったこともあって、国が管理していない予言にうるさいんだそうです。
 予言って国で管理するものだったのかぁ。たまげたなあ。
 まあそんなわけで、巫女とか神憑きとかいうのも外聞がよろしくないのだそうです。
 田舎では、巫女さんが大手を振っておまじないとかやりまくってますけどね!
 面倒なことになりそうなので、都では静かにしていようと思っています。

「主公、お話し中、えろうすんまへん。お客さんのようですわ」

 郭隊長が馬車に馬を寄せてきて、そう言いました。
 郭さんが指さす遠く先には、うっすらと土煙が上がっています。騎馬の群れ、でしょうか?

「おお、南匈奴の部隊じゃな。ではここらで休憩としよう」

 お父様はすぐに郭隊長に命令を出して、全軍を一時停止させるようです。
 兵隊さんたちが野営の準備を進めていると、立派な服装の騎馬武者が、お供を引き連れて近づいてきました。

102 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:01 ID:+sec4koS0
「オオ、董タイシュ! ワレラガ盟友!!」

「おお、右賢王殿下。こたびの出馬、援軍ありがたし」

 さっそくお父様と直接挨拶をしています。偉い人のようですね。

「ん、青は聞いていないのかい?
 南匈奴は異民族だけど、皇帝陛下に忠誠を誓っているからね。
 反乱討伐に援軍を出してくれることになったんだよ。
 あの方は匈奴では、単于の次に偉いんだ」

 たしか単于というのは匈奴の皇帝でしたね。つまり副皇帝ですか。大物じゃないですか。
 牛輔義兄様によると、あの方のお名前は「於夫羅」というそうです。
 そういえば三国志ゲーにそんな武将がいたでしょうか?

「それでは右賢王殿下。話はあとにして、まずは歓迎を」

「オオ、ソレイイネ!」

 於夫羅さんが匈奴の騎馬部隊のほうに帰って行き、お父様の兵隊さんたちがテントを張って煮炊きをしはじめました。
 ……あれ? いま兵隊さんたちが運んでいるの、お酒が入った甕じゃありませんでした?
 いま行軍中ですよね??

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「「ワハハハハ!」」

 宴会がはじまってしまいました……信じられません……

「農民ノ反乱ナゾ、ワガ騎兵ナラバ、イチゲキゾ!! 敵ノ大将ガ相手トキイタ!」

 宴会場では、両軍の将兵が飲むや喰うやの大騒ぎ。
 私は、お父様の言いつけで天幕の裏手に隠れているのですが。
 布地一枚隔てた向こう側で、於夫羅さんが景気のいいことを言っています。

「……え、張角ってたしか籠城してたと思うんじゃが……」

「エ……?
 マテ、マサカ城攻メニ匈奴ヲ使ワナイヨナ?」

「あ、いや、さすがに都もそこまで馬鹿ではないと思うが……」

「……宦官どもは、それすらわからないかもしれませんね……」

 於夫羅さんと、お父様と牛輔義兄様が引いているのが天幕越しでも伝わってきます。
 っていうか、騎兵は攻城戦が苦手だなんて常識ですよね?
 ゲームでも、はしごとか破城槌とか攻城櫓で攻めるんですよ?

「ま、まあ、飲みなされ。話題を変えよう……」

 私もそれが良いと思います。

「ソウダナ……エット、ソウイエバ、董タイシュの娘ハ神童ト聞イタゾ」

 あれ、こんどは私の話題ですか?

「いや、お恥ずかしい。少し字が読めるだけで、噂ばかり先行してですな」

「オレノ部民ガ世話ニナッタト聞イタ。優シイ娘、シカモ賢イ、トテモイイ」

「いや、まったく! 自慢の義妹ですよ!」

 なんで牛輔兄が威張ってるんですか。

「匈奴に嫁に出スツモリハナイカ? トテモ大事ニスル、キット賢い子を産ム」

「なっ」

 まって、私まだ7歳!?

「おお、大変残念ですが、義妹は漢の宮廷に出すことになっているんです」

 でかした義兄様!

「そ、そうそう。聖上にお仕えする身なので、残念じゃが」

「皇帝じゃダメカ。ワカッタ、トリアエズ飲もう!」

 せーーーーふ。せーふです。
 危うく7歳で、相手も知らないまま嫁に出されるところでしたよ。
 牛輔義兄様は、ご褒美に肩でも揉んであげましょう。

 ですが、なんか勝手に宮仕えルートが決められつつあるような気がします。
 そもそも後漢の宮廷とか死亡フラグのバーゲンセールじゃないですかね……?
 自分の未来に不安をおぼえながら、お父様たちの雑談を聞き流していたのですが……

103 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:24 ID:+sec4koS0
「……あれ、なんで女の子がいるんだ?」

「きゃっ!?」

 びっくりした! だ、だれですか?
 天幕のなかに潜り込んできたのは、男の子でした。
 毛皮の服を着ています。匈奴の子でしょうか?
 大人の匈奴よりずいぶん小柄です。小5か小6くらいに見えますね……
 って、この子弓矢持ってるじゃないですか!!

「え……えっと、いたらダメですか?」

「いや、ダメじゃないけど。戦争に行くのに小さい子がいるのはどうかなって」

 外見は匈奴っぽいですが、流ちょうに漢語を話す子ですね。

「失礼ですが、あなたも小さいのでは?」

 ちょっと反論してみたり。

「豹はもうオトナだ。弓も引けるし、馬も乗れる……
 あ、そうだ。イタチを見なかったか?」

「え? ヒョウとイタチがいるんですか!? どこに……」

「いや、こっちに逃げてきたから……あっ、いた!」

 いた、と言った時には、その子はとっくに弓矢を構え終わっていて。
 テントの裏から何かが駆けだしたと思った瞬間、男の子の矢が、ふわふわの何かを貫いていました。
 なに、これ……死んだ? 死んだよね!?
 えっと……と、とりあえず褒めておこう!!

「わぁー、すごーい」

 思いっきり棒読みになってしまいましたぁ!?

「見ろ、いいイタチだ。暖かい帽子になる」

 ふわふわの何かはイタチでした。男の子の放った矢に貫かれ、どくどくと血を流しながら絶命しています。

「どうだ、弓もうまいしオトナだろう」

「そうですね、さすがです」

 なるほど、狩猟民族だからそういう価値観なんですね。狩りができるのが大人だと。

「戦争に行くのに、女の子ひとりだと危ないぞ。親は?」

「あそこで飲んでいるのが父上ですね」

 私はそう言って、天幕をちらりとめくります。

「あれは漢の将軍……あ、董太守の娘?」

「はい」

「……なるほど」

 何がなるほどなんでしょうか。

「そっか、年の割に落ち着いてて賢そうだと思った。
 豹はリュウヒョウという。オフラの子だ」

「なるほど」

 匈奴の副皇帝の息子さんでしたか。そういえば子供にしては身なりがいいですね。

「お父上と違って、名前の響きが漢風ですね?」

「おう、文字を勉強したからな!」

 文字を勉強すると名前が変わるんですか?
 うーん、漢文化に適応しようとしているってことなんですかね?

「そっか、あの董太守の娘か……」

 リュウヒョウ君はそういって、私のことをじろじろと見ています。私、なにかしましたっけ?

「そうだ、このイタチをあげよう」

 リュウヒョウ君は刺さった矢を引っこ抜いて、獲物のイタチを差し出してきます!
 っていうか死体ー!?

「ま、まだ血が滴ってますし!? 使い方もわからないので要らないです!!」

「え、血がダメ? 血抜きするよ……?」

 そういう問題ではなく!

「ちょ、ちょっとナマナマしいので……」

「そっか……」

 リュウヒョウ君、シュンとしてしまいました。
 って、これ私悪くないですよね!?
 血まみれのイタチとか本当に要らないです!!!

104 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:51 ID:+sec4koS0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その日はそのままお休みになり、翌日から、匈奴のみなさんと一緒に行軍することになりました。
 その途上で気づいたことがあります。

「よく見ると、当家の騎兵も、匈奴のみなさんとあまり変わらない見た目ですね?」

 毛皮とかつけてますし。

「ああ、それは主公を慕う“羌族”の騎兵です」

 そう教えてくれたのは李校尉でした。
 羌族というのはここよりもっと西の方に住んでいる遊牧民で、傭兵みたいなこともしているのだそうです。

「主公は西域での戦いに長く従事しておられたのですが、そのなかで羌族や匈奴を心服させて部下にしておられるのです。なんと素晴らしいお方でしょうか」

 そうなんですか。董卓パパって魔王って認識だったんですが、異民族から結構人望があるんですね。
 匈奴の王様とも仲良しでしたし。
 揺れとお尻の痛みに耐えながらすすんでいくと、正面に海が見えてきました。

「おお、お嬢様、河水ですぞ!」

「え、河……? 本当だ、黄色い!?」

 海かと思うくらい大きな河、黄河にはじめてつきました。
 ……何も感じませんけどね。巫女として。
 黄河のほとりについてしばらく、於夫羅さんたちが近づいてきました。

「董太守! 匈奴ハ河を渡らず、コノママ邯鄲マデイク!」

「ああ、ワシらは河を渡って一度洛陽に行くのでな。また戦場で会おう」

 匈奴さんたちとも一度お別れのようですね。

「太守の娘ー!」

 そう思っていたら声をかけられました。先日のリュウヒョウ君ですね。

「あ、はい。なんでしょう」

「えっと、ナマは嫌そうだったから、帽子にした。暖かいぞ」

 そうして彼が差し出してくれたのは、いかにも暖かそうな毛皮の帽子です。
 もこもこの尻尾がぷらーんと垂れ下がっていて可愛いですね!

「あ、くださるんですか、ありがとうございます!」

 春が近づいてきたとはいえ、まだまだ寒いですからね。素直に嬉しいです。

「おお、受け取ったか!!」

「ありがとうございます、豹さん。
 あ、私、太守の娘じゃなくて、ちゃんと“青”って名前があります」

「青、青か! いい名前だ!!」

 贈り物を受け取っただけで、こんなに喜んでもらえるなんて、こっちまで嬉しくなります。
 ニコニコの顔がかわいいですねー。きっと女の子にモテモテなんでしょう。

「ありがとうございます。豹ってのもカッコイイと思いますよ?」

「そ、そうか……また迎えにくる!」(中黒傍点)

 豹君はそういって走り去っていきます。
 ……ん、ちょっとまった。

「ちょっと、いま何て言っ……」

「お嬢様! 船が出まっせ! 急ぎまへんと!」

 ああもう、郭さんちょっと待ってくださいよ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 結局豹君はつかまらずじまいで、黄河を渡る船に乗り込むことになってしまいました。
 ま、まあ気のせいですよね? そもそもまだ二回しか会ってないし! 好かれるようなこともしてないし!

「いやぁ、あのあとも青ちゃんを嫁に欲しいってうるさくてのう」

 お父様は黙っててください!
 気のせいに決まってますから!!

105 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:03:24 ID:+sec4koS0
スレ4話を小説化してみました。
モノローグをかなり追加しています。青ちゃんの内心にかなり踏み込んでいるので、今後の展開的にまだ明かしたくないところ、意図と違うところなどありましたら指摘くださいませ。

106 :名無しさん:2021/02/19(金) 23:24:15 ID:JwfMBrRe0
>私はいま、馬車に乗って、漢王朝の都、洛陽へ向かっています。
ちょっと読点が繋がってるのが気になるかな

              みやこ
私は今馬車に乗って、 洛陽へ向かっています。 

とかのほうがすっきりするかも

107 :名無しさん:2021/02/20(土) 01:02:09 ID:ZxQDv8RP0
指摘ありがとうございます。たしかに読みにくいので調整してみますね。

108 :名無しさん:2021/02/20(土) 02:40:15 ID:iWbaTjMW0
ご指摘の部分以外も会話の流れがとっちらかっていたので、こんな感じになおしました。

――――――――――――――――――――――
 お父様の前ではじめて読んだ、書物の一節そのままの風景が広がっています。
 私の記憶にある土って、茶色いものでしたけど。真っ黄色ですよ。

 中国の地図ってなんとなく覚えてますか?
 黄河って、中流のあたりで、北の方にぐねぐねって蛇行してますよね。
 なんで蛇行してるのかっていうと、このあたりに「黄土高原」っていう障害物があるからなんです。
 この黄土高原の黄色い土が流れ込んでいるから、黄河は黄色いのだそうで。
 スケールの大きな話ですねえ。さすが中国です。

 さて。私はいま、漢王朝の都“洛陽”へ向かう馬車に揺られています。
 まわりはお父様の兵隊が固めているので、とっても安全です。
 ちなみに洛陽は、安邑県から南東に進み、黄河を渡った南側にあるんですよ。

109 :名無しさん:2021/02/20(土) 20:54:10 ID:oO4d6F7x0
ああ、すっきりして分かりやすいですね。
いいと思います。

110 :名無しさん:2021/02/21(日) 11:10:35 ID:YeKRmTd30
小説乙
修正乙ですよ

111 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:45:37 ID:V01IL8Wh0
河伯の巫女6話

 まるで海のように広大な黄河を渡り、私たちの馬車は洛陽に到着しました。
 都の中に入ると、多くの人が通りを歩き、商人が呼び込みの声を上げています。

「馬車がくるぞー! 道をあけろー!」
「董の旗? どこの董家だ?」
「たぶん、河東郡の董太守の馬車じゃないか」

 通りの人混みが割れて、馬車が通れそうなスペースが空きました。

「はぁ、さすがに都は人が多いですね」

 品川駅の1/10くらいですかね?

「むむ……青ちゃんは全く動じておらんな。
 ワシは初めて都に来た時、都城の壮麗さ、人の多さに呆然としたものじゃが……」

「我が義妹は大物ですねえ、義父上」

「牛輔よ。ワシは董旻とともに袁隗老師のもとへ参り、今後の相談をしてくる。
 荷馬車と青ちゃんは……旻?」

「そうですなあ。陛下への献上品や、お歴々への進物を積んでおりますので、宮殿の門番に預けておきましょう。なぁに、知り合いです」

「かしこまりました、義父上、叔父上。荷馬車と青は僕が責任を持って」

 董卓パパと董旻おじさん、牛輔兄さんが段取りして、そういうことになりました。
 馬車も荷馬車も、さっそく門の内側に引き込まれます。話が早いですね。

「ほうほう、河東ではそんなことが」

「ボクとしても最近の洛陽のことが聞きたいのですが……そうだ、酒がありました」

 門番さんと話し込んでいた牛輔義兄さん、積み荷から酒の甕を持ちだしていったんですが……えっ、飲むの? うちの男性陣は飲まないと死ぬんですか?
 失礼がないように気を張っていたのが馬鹿らしくなってきました。こうなったら、馬車でゴロゴロさせてもらいます。
 っていうか長旅の疲れでとても眠いです。揺れない床がこんなに気持ちよいとは。
 義兄さんと門番さんも詰め所に引っ込んでいきました。いいや、もう寝よう……

「兵隊よ。董氏からの献上品の馬車はどこか」

「董氏の馬車……あれじゃないですか?」

「ふむ、董の旗があるな。董皇太后の仰せの品はこれに違いなし。運び込め」

 ふあぁ……せっかく気持ちよく寝ていたのに、外が騒がしいですね。
 董皇太后? 誰でしょうか……
 って、馬車が動き始めましたよ!
 外をのぞいてみたら知らない人ばかりだし! 義兄上! 義兄上はどこ!?

―――――――――――――――――――――――

 どこかに引かれていく馬車のなかで、あわあわと慌てていると。
 周囲の景色がゴージャスになっていきます。
 これって絶対宮殿の中ですよね、しかもかなり中心に近そうですよ?

 ……あれ、もしかしてこれって、宮殿に忍び込んだことになっちゃうのでは?
 牛輔義兄さん、はやく帰ってきて!

 そうやってこそこそと周囲を伺っていると、馬車が止まったのですが。
 んんん?
 宮殿のものすごく広い庭の一角に、妙な場所が……
 なんか、出店のようなものが並んでいるんです。

「かんざしー、かんざしはいらんかねー。
 櫛や紅もあるよー」

「こちらは絹の帯がございますよー!」

 ええっと、めちゃくちゃ賑やかに物売りをしているのですが……
 宮殿ってそういう場所でしたっけ?
 もっと厳かで……ものものしくて……
 ありえない光景に私が混乱していると、なんか派手なオッサンと子供がやってきました。お供をぞろぞろ連れていますね。

「ふははは。どうだ、朕の作った市場は」

「あ、はい、父帝陛下の見込み通り、とてもにぎわってると思います……」

「ははー、皇帝陛下、万歳、万歳、万々歳」

「ああ、よいよい。商売を続けろ」

 ええええ? この派手なオッサンが皇帝!?
 市場の商人も、女官たちも、そろってオッサンに土下座してましたが。オッサンのお墨付きが出たので物の売り買いに戻っていきます。

「これは百銭!! こっちは二百銭でいいよ!」

「高いわよ! まけてよ!」

 さっき見た洛陽の市場と変わらない雰囲気です。
 オッサンはめっちゃドヤ顔してます。
 子供のほうは、なんか引いてませんか? 関西のオバチャン軍団にロックオンされた少年みたいになってますけど。

112 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:46:07 ID:V01IL8Wh0

「……弁よ、女官どもが騒いでいるからといって、びびってどうする……商売とは騒がしいものなのだ」

 それにしても声でかいですね、このオッサン。
 ちょっと離れた場所にいるのに、よく聞こえます。
 あ、あの子の名前は弁っていうんですね。

「あ、はい、すみません陛下。
  びびらないようにいたします」

「ううむ……よし、銭をやるから買い物してこい」

「え?!あ、は、は、はい!?」

 あ、これ記憶にあります!
 子供にはじめてお買い物させるテレビ番組だ!
 弁くん、どうしたらいいかわらないみたいで、めっちゃキョドってますが……

「陛下、前線から使者が参りました」 

「む、そうか、では聞こう」

 あ、皇帝さん帰っちゃった。
 弁くんは、そのあとも困った顔で市場をうろうろしていたのですが……

「はぁ……疲れた」

 なんでこっちに来るんですかー!?

「あれ? このお店は初めて見るな。
 ねぇ、何を売ってるの?」

 居ません居ません、留守ですよー?

「ねえ、馬車の奥にいる人ー?」

 なんでバレてるのーーーー!?
 ええい、こうなったらやむを得ません!

「あ、あの、その……殺さないでくださいっ!?」

「誰が殺すのさ! 怖いこと言わないでよ!」

 あれ、もしかしてセーフですか?

「ええっと、董の旗?
 ということは、協のところの子?
 ああ……だ、大丈夫だよ殺さないよ……僕は」

 やっぱりアウトじゃないですかー!

「あ、あなた様以外に誰が殺すのですか」

「な、ないよないよ、大丈夫!
 母さんは毒殺したりしないから!」

 やけに具体的ですね???

「その、協様という方は存じ上げないのですが、
 董家と関係があるのでしょうか?」

「何言ってんの。
 弟はお婆様が手元に置かれてるじゃないか。
 董家で面倒をみてくれているんでしょ?」

「そうだったんですか、失礼しました」

 うちって、皇帝の息子さんを預かっていたんですね。知りませんでした。

「それはさておき、僕は、何か珍しいものを買わないといけないんだ。
 陛下の命令だからね。何か売って?」

「陛下のご命令ですか」

 でも、ここにあるのって全部贈り物ですよね。
 ええっと、何か売ってもいいものは……

「あ、その帽子珍しいじゃない。
 いくら? 1金で足りる?」

 そういって弁くんが指さしたのは、豹くんがくれたイタチの帽子です。 
 むぐぐ、これはこれで気に入ってるのですが……
 それにしてもむちゃくちゃな値段つけますね。1金って、たしか銭1万枚ですよ。
【ここに銭1万枚の具体的な貨幣価値を追加】

「すみません、これは売り物ではなくて……」

「いいじゃん、売ってよ」

 むかっ。

「ダメです!!!!」

「ひっ?!!……ご、ごめんなさい……」

113 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:46:39 ID:V01IL8Wh0

 ……あ、ああーーっ!?
 ひょっとして、王子様を怒鳴りつけちゃった!?

 だ、だってしょうがなかったんです!
 前世で、おじいちゃんにもらった房飾りを、意地悪な男子にとられたときの流れとそっくりで!
 ひ、人を呼ばれたらどうしよう、死刑!?

 よく見たら弁くんパニクってますね!
 正気に戻る前に、何か替わりのものを……
 ん? これは……と、とりあえずこれでいいや!

「あ、あのう、よろしかったらこれ……数独です」

 巫女おばあさんの家で完成させた、9×9の数独、巻物に書き写しておいたんです。
 巫女おばあさんの家では壁に飾られてたし、とりあえず珍しい飾り物ってことでどうでしょう?

「あ、うん。これは変な図画だね? じゃあお金」

 うわぁ。
 銅銭が大量に連なった束をもらっちゃいました。
 床に置いたら「ゴトリ」って音がしましたよ。
 あきらかにもらいすぎな気がしますが、とりあえずもらったものは受け取りましょう。怒鳴りつけた件を蒸し返されたらマズいですからね。

「なんで、宮殿のなかに市場があるんだろう……」

「あれ、知らないの?」

 ついつぶやいてしまった私の独り言に、弁くんはエッヘンと胸を張って答えてくれました。

「陛下が偉大だからだよ?」

 アッハイ。
 しかしこの王子様、なんか弱気だったり強気になったり極端ですね。

「陛下はね、政治を立て直すためには銭が大事だと思っておられるんだよ。だから銭のことを学ぶために市場を建ててくれたんだ」

 なるほど。

「さすが陛下というべき壮大な計画ですね」

「朝廷の財政は厳しいからね、高官や大臣に任命するときに銭をとったりして、宮廷の修繕費とか今回の反乱の軍事費とかにあててるんだよ」

 ほうほう。

「あなた様もお詳しいですね?」

「陛下から学んでるからね!」

 そういって弁くんは、またエッヘンと胸を張ってくれました。
 ……んん? あれ、おかしいな。

「でも、そもそも朝廷は税収を集めていますよね。
 本来の税収はどこへ??」

「陛下は、夷狄戎蛮対策にお金がかかるんだって言ってたよ」

 夷狄戎蛮……ようするに異民族ですよね。
 でも、そんなに異民族って攻めてきてますっけ?
 むしろ匈奴とは仲いいですよね。

「あ、しまった。陛下に、買い物できましたって報告しないと。じゃあね? おチビちゃん」

 弁皇子は、巻物を抱いて去っていきました。
 それにしてもおチビちゃんって!
 ……おチビちゃんか。たしかに。

―――――――――――――――――――――――

114 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:47:02 ID:V01IL8Wh0
「牛輔ぉぉぉ!!!!!」

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 そのあとお父様が、うちの馬車が宮中に運び込まれてしまったことに気づき、取り戻してくれました。私ごと。
 役目を放り出して酒盛りしていた牛輔義兄様が、お父様に絞られています。
 同情心はまったく湧いてきませんね。

「これこれ、卓君。
 せっかく穏便に済ませておるのだ」

「袁老師! そ、そうでしたな……
 青ちゃん、無事だったかい?」

「ハイ、ナニモナカッタデス」

 陛下と皇子様に会ったとか言ったら、絶対に穏便に済まないよね……お口チャックです。
 そして、お父様が恐縮してる相手が、袁隗さん。
 穏便に私を回収するために、いろいろ手を尽くしてくださったのだそうです。
 顔中しわだらけで、口調はおだやかなのに、妙な威圧感を放っています。
 この人が漢王朝の総理大臣かあ。

「では、卓君には中朗将の任命があるからな。
  ちゃんと銭を陛下に収めるように」

「賊の討伐のための任命なのに、官職を売買するようなことはよろしくないとは思いますが……」

「これは聖上の方針でな」

「かしこまりました、袁老師」

 任命するときに銭をとるって話は、弁皇子から聞いてましたけど……
 え、何? パパからもカネとるの?
 反乱軍討伐を命令しておいてカネとるんですか?

「大丈夫じゃ、今回は能力を評価しての抜擢じゃから、安くなっておる」

「ありがとうございます……」

 そういう問題なの!?
 皇帝にお金がないのはわかりますけど!
 ぜったい変ですよね!?

「あとは、宦官にも礼金が必要じゃな」

 ええええええ?

「手持ちがあまりないのですが……」

「少し貸しておいてやろう」

「……ありがとうございます」

 だめだ、なにがなんだかわかりません……
 頭がクラクラしてきました……
 
―――――――――――――――――――――――

 洛陽での用事がすんだので、わたしは董家の部隊といっしょに、洛陽の都を離れます。

「おのれ宦官どもめ……
 黄巾賊の討伐が終わったら、見ておれ」

「なんで討伐にいく父上が、皇帝陛下にも宦官にも、お金を払わないといけないのですか……それも、借金までして」

 一晩考えましたが、まったく納得できません。

「大丈夫さ、小青。軍団長に着任すれば軍資金が豊富に手に入るから、借金なんかすぐ返せるよ」

「なるほど、それなら安心……んんん???」

「いや、牛輔。軍資金に手をつけては兵が飢える。
 せめて戦利品でまかなえたらいいんじゃが」

 ……

「何か、ものすごく変ですよね!?」

 なんで、討伐に使う軍資金や、敵から奪った戦利品を、軍団長がチョロまかすことが前提になっているんですか!

「青ちゃん、悲しいことだが。戦争をすればするほど、前線の将軍と、それと結託している宦官にカネが流れ込む仕組みになっておってな……」

「僕らの故郷の涼州なんて酷いものさ。脈絡もなく異民族にケンカをふっかけては、無意味な遠征を繰り返すんだ。
 そんな将軍が入れ替わり立ち替わり着任して、戦争ばっかりしているせいで、涼州はボロボロになりつつある……」

 うへえ。

「このままでは涼州は滅ぶ。全て宦官のせいじゃ」

 えっとつまり……
 将軍と宦官のカネ稼ぎのために、無駄な遠征を繰り返してるせいで財政がボロボロで。
 そのボロボロの財政を立て直すために、皇帝が直接ワイロをとる。
 任命された将軍とか役人は、払ったワイロを回収しなきゃいけないわけで……
 そのツケって……全部民衆や下っ端の兵隊にいってるのでは?

 ……ダメだこの国。誰かがなんとかしないと……

115 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:47:33 ID:V01IL8Wh0
スレ5話目を小説化してみました。

116 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:00:35 ID:k+OHsqFn0
河伯の巫女7話

 勝ってくるぞと勇ましく。
 黄巾討伐の将軍に任命された董卓パパが、はるか東の冀州へ出陣して四ヶ月がたちました。
 私ですか? もちろん我が家、安邑県のお城にいますよ。かよわい娘ですから。
 そしてお父様はといえば……

「皇甫嵩のクソボケえええええええええ!!!!」

 私の目の前。安邑県のお城で荒れまくってます。
 え、なんで董卓パパがここにいるのかって?
 ……二ヶ月でクビになったからです。将軍を。

「父上。謹慎中ですので静かになさってください。
 せっかく袁瑰様の手配で、おとがめなしになったのですから。暴れてるとか宦官に聞かれたら」

 前倒しで一族皆殺しとか嫌ですからね?

「うぐ……そうじゃな青ちゃん。
 ……しかし、青ちゃんは腹は立たないのか」

「農民殺して功績誇ってもしょうがないって、仰ってたのは父上です。むしろ、あんなことしなくて済んでよかったです」(中黒傍点)

「まったくじゃ。10万も農民を殺して死体を積み上げて、アイツは何を考えているのか……」

 ほんと、なんであんなことになったのですかね……
 ついこのあいだまで翻弄されていた、戦場での出来事に、私は思いをはせていました……

―――――――――――――――――――――――

 都の北東にある、冀州。鉅鹿郡の広宗県というところ。ここに黄巾党の本拠地があります。
 ここを攻めていた将軍さんが解任されたので、かわりの将軍として董卓パパが赴任したわけです。
 ここにはお父様の私兵と、もともと展開していた数万の漢王朝正規軍。そして都へ行く途中で会った、匈奴のみなさんもいます。
 この軍勢で、籠城している黄巾党の主力部隊を包囲しているわけですね。

「ヤッパリ城攻メじゃないか……匈奴に何をしろと」

 そう頭を抱えているのは、匈奴の副皇帝、右賢王の於夫羅さんです。ほんと、何をしろと。

「地形と部隊配置の調査が終わりました」

「李校尉、ご苦労。どれどれ……ううむ、盧植将軍の包囲は完璧ではないか。弄るところが無いのう」

 李校尉が持ってきた布陣図を見て、お父様が感心しています。

「主公。皆さん雲梯やら井楼を一生懸命作っとる。丁度ええんで、このままにしときますぜ?」

「城攻めの準備も着々と進んでおるじゃないか……ワシらがすることは何もないぞ??」

 雲梯とか井楼というのは、たしかゲームに出てきた攻城兵器でしたね。郭校尉の報告も朗報のようです。なぜ盧植将軍を解任したんですかね。

「うーん、ウマで城壁上れるかな?」 

 何言ってんですかこの子。トンチキなことを言い出したのは於夫羅さんの子、私にイタチの帽子をくれた匈奴の劉豹くんです。

「やめてください。死んでしまいますよ」

「心配してくれるんだ!」

「いや、知ってる人ですし」

 軍議なんてちんぷんかんぷんな私たち子供衆が、くだらない話をしているあいだに、お父様は戦場の把握を済ませたようでした。

「ふむ、敵は張角率いる黄巾の本隊。盧植将軍が上手く追い込んだおかげで、広宗の城には不相応なほどの大軍が籠ってしまっておる。
 準備をせずに攻めては被害が出るばかりじゃな。
 むしろ兵糧攻めにしつつ、じっくり城攻めの準備と訓練をし、敵の士気が下がった時機を見計らって止めをさすことにしよう」

 ふむふむ。

「お父様、前任者さんは、攻めなかったからクビになった……という建前でしたよね」

 実際には、戦場の視察に来た宦官に、ワイロを払わなかったからだそうですけど。

「大丈夫じゃ青ちゃん。そこは袁隗様に朝廷内で説明してくれるように頼んである。“城攻めは時間がかかります”とな。
 とにかく今回は、妖言して人を惑わす張角が悪いのであって、集まっているのはもともと宦官にいじめられて苦み、騙された農民たちじゃ。
 そんなのを無理に攻めて殺すより、できるだけ降伏させたい」

「なるほど」

 立派な方針だと思います。これなら、董卓パパが魔王化することもないでしょう!

「董将軍、俺たちドウスル。城攻めスルカ?」

「いや、右賢王殿には、補給遮断をお願いしたい。
 北にある下曲陽県に、黄巾の別働隊が展開しておる。こやつらが、敵城へ物資を運び込めないようにして欲しいのじゃ」

「襲撃任務はトクイだ。マカセロ!!」

 騎兵の常道ですね! パパは名将なのでは?

117 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:01:49 ID:k+OHsqFn0

「だが、その前に、盧植将軍の元部下を集めよ。
 宴会で懇親を深め、連携を強めるとしようか」

「拝命! 宴会大好きです!!」

 李のオッチャンが大喜びで駆けていきました。
 また飲むのか!!

「小青、わかってないね」

 また宴会かとげんなりしていたら、牛輔義兄様にツッコまれました。

「いいかい、戦争でいちばん大事なのは、人心の統一なんだ。懇親を深めて、全軍が一体となって動けるようにならないと、戦いには勝てない。
 戦争はただ武器を振るうだけじゃ駄目なんだよ。心をまとめて、人を見ないとね」

 なんかいい話っぽいことを言ってますけど、ついこのあいだ酒飲んで大失敗したこと、私は忘れてませんからね?

―――――――――――――――――――――――

「「ワハハハハハ!」」

 というわけでパパ上は、軍の幹部を集めて本当に宴会をはじめてしまいました。
 私は当然参加しません。7歳ですので。

「青、宴会出ないのか?」

「幼女に何を言うのですか」

 匈奴の豹君も宴会に出ない組のようです。まあ、いまあのテントの中でワーワーやってるのは、部隊長や将軍クラスの偉い人ばかりですしね。

「ああ、匈奴のお坊ちゃん。
 小さいとはいえ、あまり他家の男性が女性に口を利くのはよろしくないのでは」

 今回は前の宴会とは違って、李校尉が私の護衛についてくれています。そのせいでお酒が飲めない李のオッチャン、ちょっと可哀想かもしれません。

「匈奴は気にしないぞ」

「漢人は気にします! 婚約者でもないのに」

「えー」

「いいですよ李校尉。どうせヒマですし……」

 そんな感じで、宴会が終わるまでぼーっと雑談している私たちです。
 しかし、疑問があるんですが。なんでパパは、私を戦場に連れてきたんでしょうかね?
 まだ7才なのですが。
 まあ、あのパパが意味のないことをするとは思えないので、何かあるんだと思いますが……
 まあ、本人もいないのに考えてもしかたがありません。せっかく軍隊に同行しているのですし、兵隊の様子でも見てみましょうか。

 漢王朝の軍隊には、いろんな兵隊がいますね。
 あちらで揃いの胴鎧と矛を持っているのは、漢王朝の正規軍でしょう。皇帝から装備品が支給されるのだと聞きました。
 いま近くを歩いている兵隊は、服も武器もバラバラですね。たぶん正規兵ではないのでしょう。
 黄巾討伐の軍隊には、自前で武器と兵隊をそろえて参加している私兵集団がたくさんいると聞いています。義勇兵、というのだそうです。
 正規兵とくらべると、かなりみすぼらしい見た目ですけれど、なかにはそこそこ立派な装備をつけた人たちもいるようですね。

「……ったく、盧植先生をクビにしたと思ったら、お偉いさんは着任早々宴会かよ。
 マジメに戦争する気あるんかね??」

「まぁまぁ、玄徳兄。
 呼ばれなかったからって腐らない」

 は?
 あそこでダベってる、立派な装備の兵隊さん。
 いま「ゲントク」って言いました??

「おお? そんなこと言ったって雲長だって、サケ飲みたいだろぉー?
 見ろよ、益徳なんかさっきから悶えてるぜ?」

「ガアアアアアッ!!
 酒の匂いがッ!!! 酒ガアアアアッ!!!」

 わわわわ、ゲントクとウンチョウ!
 劉備玄徳と関羽雲長じゃないですかぁ!!
 ということは、あそこでおかしな感じで悶えてる筋肉ダルマは張飛!?
 あれ、でも張飛って翼徳じゃなかったっけ。改名したんでしょうか?

 あ、やばい! どどど、どうしよう!?
 董卓の娘だってバレたら殺され……
 あ、まだ大丈夫か。

「五月蠅い連中ですな。お嬢様、黙らせてきます」

「待って!?」

 お願いだから李校尉はちょっと待ってください!
 ええっと……考えなきゃ……
 三国志の勝ち組は曹操孟徳ですよね。
 でも、劉備さんだって原作主人公!
 皆殺しの運命を回避するために、仲良くして損は無いはずです!!
 となれば、私にできることは……そうだ!

118 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:02:46 ID:k+OHsqFn0

「李校尉。あの人たちの言うのも、もっともです。
 兵隊さんたちは夏の暑さに耐えているのに、
 偉い人だけ宴会では、やる気がなくなります。
 お酒と肉をもってきてあげてください」

「む、そこまでしてやらずとも……」

「青! 持ってきたぞー!」

「速いですな!?」

 でかした! 豹くん!

―――――――――――――――――――――――

「えっ、我らに酒肉を?」

「父からの心遣いです」 

 私、ここ数ヶ月、男の人たちのなかに混じって生活していて、よくわかったことがあります。
 お酒と肉が嫌いな軍人さんはいません!!
 というわけで、豹くんが持ってきてくれたお酒と肉を、さっそく推定劉備玄徳さんのところに運びましたよ。兵隊さんが。
 贈り物で好感度を上げよう作戦ですね!

 三国志の劉備って、小柄で上品なイメージがあったんですけど、この推定劉備さんはちょっとイメージが違いますね。
 年齢はハタチくらいかなあ? 背は高いし、体格はがっしりしてます。百戦錬磨の兵隊さんって印象ですよ。あと耳たぶが大きいのが目立ちますねえ。福耳ってやつですね!
 ヒゲはとっても薄いです。チョビヒゲな感じ。

「痛み入る……っていうか益徳、もう飲んだのか」

「うめぇー」

 黒くて長い、立派なヒゲを生やした、推定関羽雲長さんがお礼を言ってくれます。なるほど、これが「美髯公」というあだ名の由来になったヒゲですか。つやつやですね。
 筋肉ダルマな推定張飛さんとは会話が成り立ちそうにないので、飲んでいてもらいましょう。

「えっと、すみません。お名前をうかがっても?」

「俺は幽州琢郡琢県の劉玄徳。
 中山靖王劉勝の後裔だ」

 やっぱり劉備じゃないですかー!
 中山靖王劉勝……そういえばそうでした。劉備って漢王朝の血筋を引いてるんでしたよね。
 家庭教師の先生に教わりましたが、中山靖王の劉勝さんという人は300年くらい前の皇族で、たしか皇帝の息子だったはずです。

「ところで、そちらは?」

「私は、董卓将軍の娘で、董青と申します」

「そうか、こんな小さい娘さんに気遣いしていただき、大変申し訳ない。だが、これは飲めないな」

「ななな、なぜでしょう?」

 ええええ!? もう嫌われた!?
 万能の好感度アップアイテムなのに!
 っていうかもう張飛さん飲んでますけどいいの?
 劉備さんは、なんだか芝居がかった手振りで語り始めました。

「見てくれ、この陣には何万もの兵がいる。たまたま董将軍の娘にお会いしたからといって、彼らの前で俺だけ酒を飲むわけにはいかないだろう」

「あぁん? お嬢様の振る舞いにグダグダと義勇兵ふ「えっと、その」

 李校尉、ステイ! ステイ!
 っていうか、もう張飛さん全部飲んで食べ終わりましたけど……

「益徳、お前なぁ……せっかく玄徳兄が徳を見せてるというのに」

「済まない、雲兄。吐けばいいか」

「結構です!?」

 なんなのこの人たちぃ!?
 と、ともかく! 好感度アップのためには、劉備さんにも飲んでもらわないと!

「りゅうb……劉玄徳様のおっしゃるとおりです。
 父に伝えます」

「え、マジ!?」

 危なかったぁ……思わず劉備玄徳って言いそうになってしまいました。
 さっきの挨拶では劉玄徳としか聞いてないですからね。下の名前で呼んだら怪しまれてしまいます。
 とにかくお父様におねだりしませんと!

―――――――――――――――――――――――

119 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:03:20 ID:k+OHsqFn0

 善は急げ。さっそく董卓パパに相談です。
 一般の兵隊さんたちが、将軍ばっかり宴会をしていることにムカついている話をしたら、董卓パパは真剣に話を聞いてくれました。
 やっぱりうちのパパは優しいと思いませんか?

「青ちゃん、よく知らせてくれた。
 兵たちには悪いことをしたのう。
 しかし、城を包囲してる兵まで酔っ払ったらまずいので、肉を配ることにしよう。それでよいか?」

「あ、はい、お父様。
 劉玄徳。劉玄徳をよろしくお願いいたします」

「うむ?? いや、良いことを進言してくれたから構わんのじゃがな」

 なんか怪しい選挙演説みたいになってしまいましたが、とりあえずうまくいったみたいです。
 パパと原作主人公が仲良しになれば、皆殺しの未来が一歩遠のくに違いないですからね!

「うおおおおおおお!」
「肉だ! うめえ!!」
「董将軍、万歳! 万歳!」

 うんうん、兵隊さんも劉備さんたちも肉を食べてますね。受け取り、確認しましたよ!
 ちなみに董卓パパは、着任早々兵たちに肉を配ったということで、とても人気が出たそうですが……
 私としては、原作主人公の劉備さんと、董卓パパの好感度を稼げたことが大事です!
 作戦成功、ですね!

120 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:04:24 ID:k+OHsqFn0
スレ6話目の前半を小説化しました。
文字数が5000に到達したので2話に切ってます。

121 :名無しさん:2021/03/01(月) 14:11:08 ID:DHHe4dkb0
スレ版から描写をいろいろ追加しているので、ご意見もらえたら嬉しいです。

122 :名無しさん:2021/03/01(月) 20:59:12 ID:jvTY9fRH0
乙です

肉を喜ぶ兵達の台詞の前に、兵達が配られた肉を受け取ってから食べ始めるまでの
描写があった方が良いかと思います

123 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:13:43 ID:QDUw18C70


青ちゃんが中山靖王劉勝に詳しくてチョット違和感?
皇帝の親戚みたいなこと言ってたなーくらいの方が良い気がする

124 :神奈いです ★:2021/03/01(月) 21:21:32 ID:admin
こっちで学んだ知識だと思う。ただ、えらいマニアックな所教えたね。

125 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:23:02 ID:XNav6n6Q0
乙ー

>私ですか? もちろん我が家、安邑県のお城にいますよ。かよわい娘ですから。
城=都市だから屋敷のほうがいいかな。

> しかし、疑問があるんですが。なんでパパは、私を戦場に連れてきたんでしょうかね?
> まだ7才なのですが。


http://kanaides.sakura.ne.jp/test/read.cgi/kanabbs/1597316873/3852
http://kanaides.sakura.ne.jp/test/read.cgi/kanabbs/1597316873/3858
青ちゃんの志願では?

126 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:25:59 ID:FY8x2ihc0
>>122
ありがとうございます
肉を配るシーンは描写するとくどくなると思って入れませんでした。
ただ自然に読めないといけないと思うので、修正してみます。

>>123-124
こっちで家庭教師の先生に皇室の歴史を教わったというイメージです。
種付け大魔神なので印象に残っていたとか、劉勝の末裔を自称する詐欺師が多いから気をつけるよう教わってたとか、覚えていた理由にディテールつけたほうがいいかな。
あとは戦国時代の自称源氏と絡める切り口もあるかな。


127 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:26:40 ID:FY8x2ihc0
>>125
志願したのは洛陽行きまでで、戦場行きはパパの采配なんですよ。

128 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:31:08 ID:QDUw18C70
>>126
あー、子沢山で有名だからそっちのエピソードから引っ張ってきた方が自然な感じですね

129 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:35:51 ID:4EWkrbZ40
今後家系に詳しくなるなら続ければいいし
初心者三国志ユーザーでライトな読者目線でいき続けるなら
受け答えの方を修正すればいいんでないかなー

130 :神奈いです ★:2021/03/02(火) 17:41:16 ID:admin
すみません、いったん終わったところまで全部あげてもらえませんでしょうか。
設定調整含めて見直します。

131 :名無しさん:2021/03/02(火) 17:52:24 ID:nxkEQceY0
今夜あげておきますね

132 :名無しさん:2021/03/02(火) 18:28:46 ID:nxkEQceY0
ディスコにあげなおしましたー

133 :名無しさん:2021/03/11(木) 19:39:48 ID:JcAs7E4h0
仕事が詰まっているのでスレ6話後半の小説化は週末か週明けになりまする

134 :名無しさん:2021/03/30(火) 13:30:41 ID:T3EeMlgl0
6話後半は粥つくるところまで進んでおります

135 :名無しさん:2021/03/30(火) 18:33:47 ID:T3EeMlgl0
河伯の巫女8話

 兵隊に肉を配るという進言が劉備さんの手柄になったので、パパに、劉玄徳さんに会って欲しいとお願いしてみました。

「董将軍、盧植先生も仰ってたんですがね。
 いま大いに雲梯や井楼を作ってますが、兵はこいつを使う訓練をしておりません。
 少なくとも1−2か月は訓練して、使いこなせるようにしないと、本番で失敗すると思いますぜ?」

「おお、全くその通りだ。良い進言をしてくれた」

 パパ上は玄徳さんの助言をほめて、褒美を渡したそうです。仲良くなってくれてよかったぁ。
 そんなわけで、城攻めのための訓練の日々がはじまったのです。
 城を包囲している兵隊の一部を、兵器を使って城壁に切り込む部隊として抜擢しまして。ひたすら兵器をうまく使えるよう特訓するわけです。
 私も訓練の様子を見させてもらったんですが……途中でバテちゃう兵隊さんがとても多いんですよ。
 隊長さんたちは元気いっぱいに先頭に立っているのになあ。なんでだろ。

「それは当然さ。官軍の兵隊というのは、徴兵されてきた農民だからね。僕たちのように、日々馬に乗ったり、戦いの訓練をしているわけじゃないんだから、気力も体力も比較にならないよ」

 力こぶを見せつけながら、牛輔義兄さんが説明してくれます。
 うーん、たしかにそうかもしれないなあ。
 でも何か腑に落ちないんですよね? 農民だって毎日、重いクワを振り回して朝から晩まで働いてるじゃないですか。

「兵士ども、控えよ。お嬢様のご視察である」

「お、お嬢様!? なぜこんなところに!」

 あわてて敬礼してくれたのは、董家の私兵部隊の小隊長さん。
 兵営での兵士の暮らしぶりを見たいと、李隊長にお願いしたら、ここに連れてこられました。
 まあ身内ですからね。みな私が雇い主の娘だと知っているので、正規軍や義勇兵の兵営に行くより安全なのだそうです。

「みなさん、おつかれさまです。朝ご飯中にすみませんね。ご飯は足りていますか?」

「はっ! 毎日朝と夕に、たっぷりと粥を食しております。主公の素晴らしい徳で、我らは兵営で飢えたことがございません!」

 直立不動で挨拶をする小隊長さんの足下には、食べかけの大きなお椀が置かれています。
 なるほど。量は本当にたっぷりですね。
 かまどの上には巨大な鍋がかかっていて、暖かいおかゆが湯気を立てています。

「このおかゆを、私にもひとさじください」

「お嬢様。これは兵卒が食べるものです。お嬢様のような貴人が口に入れるものではありませんぞ」

「構いません、李校尉。隊長さん、お願いします」

 隊長さんはあわててテントに走り、新品のスプーンを持ってきてくれました。
 ふむ、おかゆにしては粒が小さいですね。
 これは米や麦ではありませんね。アワとか、キビとかいうやつでしょう。
 お味のほうは……あむっ。
 うわぁ……薄い。かぎりなく薄い塩味だけ。

「李校尉。暑いなかで猛特訓をしているのに、これでは力が出ませんよ」

「左様ですか? そう思いまして、猛訓練する部隊には腹一杯喰わせておりますよ。こんなに恵まれた兵卒は、漢朝広しといえどここにしか無いかと」

「足りないのは量じゃないんですよねえ……
 中華粥なら、せめて塩と、出汁と、脂。
 あとニラとかニンニクもほしいですよね……」

 うーん、結構お金がかかりそうですね。
 まあいいでしょう。ないものは、あるところから持ってきましょう!

――――――――――――――――――――――

「青ちゃん!? なんか食事から脂身が消えておるんじゃが?」

「父上。少しやせないと健康に悪いですよ」

「うぐっ」

 丁度いいので、幹部の食事から脂身を取りあげることにしました。
 たしか董卓って、丸々太ってたせいで、遺体がろうそくみたいに燃え続けたっていうじゃないですか。今のパパは堅太りって感じで筋肉アピール強いですけど、そんな人間ローソクな豚魔王になったら困りますからね。節制してもらいます。
 ついでに豚の骨も、割って出汁を取りましょう。
 塩と、ニンニク、ネギ、ニラなど精のつく野菜は近くの県で買ってこさせます。

136 :名無しさん:2021/03/30(火) 18:34:20 ID:T3EeMlgl0
 本当は全軍に配りたいんですが、材料と予算が足りません。なので猛訓練している、攻城兵器の切り込み部隊に配ってもらうことにしました。
 董家私兵の料理番さんに、まとめて豚骨スープを作ってもらいます。それを郭校尉にお願いして、切り込み部隊のお鍋に配給する体制を整えてもらいます。
 穀物と野菜を入れて粥にするのは、兵隊さん各自でやってもらいましょう。
 指示を出すばっかりで、全然手伝えないのが申し訳ないです。
 空っぽのお鍋も持ち上がらないくらい貧弱なので……
 私がもうちょっと大きければなあ。

「それ、かかれ!!」

「「「おおーっ!!」」」

 そんなわけで食事を改善してみたら、効果てきめん。切り込み部隊の動きが明らかに良くなりました。
 やっぱり塩が足りてなかったんですね。

「おら、走れ!」

「特別食は我らがもらう!!」

 で、切り込み部隊は良いご飯が食べられると噂になりまして。
 義勇兵のみなさんが志願して参加してくれるようになったのだそうです。
 玄徳さんチームの動きの良さが目立ちますねえ。
 訓練が終わると、その玄徳さんたちが挨拶に来てくれました。

「やぁ、董将軍のお嬢さんじゃないか。董将軍は素晴らしいな、訓練も行き届いてるし、いつでも攻撃に出れるぜ!」

「城壁を観察するに、敵兵は明らかにやる気が落ちてきている。匈奴が敵城への補給を完全に封じているからでしょう。そろそろ攻め時だと思いますぞ」

「おお。私にはわかりませんが、さすが三国志随一の名将軍」

 素直に感心してしまいました。城の兵士なんて米粒サイズにしか見えないのに、よくわかるものですね。

「三国がどこかは知りませぬが。名将と呼んでいただけるとは光栄な」

 長いヒゲをしごきながら嬉しそうにしている雲長さん……あっ、しまった。

「あ、すみません。三国とかいうのは忘れてください」

 なにが三国だって話ですよ。まだ魏も呉も蜀も、姿も形もないのに。
 私がひとり焦っていると、李校尉が血相を変えて駆け寄ってきました。

「お嬢様、大変です!! すぐに本陣へお戻りください!!!」

――――――――――――――――――――――

 董将軍の側近らしい武将が、董将軍のお嬢様を抱えて行った。
 何かトラブルがあったらしいが、いち義勇兵に過ぎないオレたちが考えてもしょうがないことだ。
 それよりも。

「なあ、雲長よ。あの子、オレの名を、聞く前から知ってたな?」

「え? ああ、そういえば。どこかで聞いたんじゃないか?」

「ちげえよ。玄徳じゃない。劉備だって知ってやがった」

「備」というのは、諱だ。
 諱は軽々しく呼ぶもんじゃない。だからオレを呼ぶなら劉玄徳だし、こいつを呼ぶなら関雲長ってのが普通だ。
 主君とか親とかでないかぎり諱で呼ぶことはないから、“そのへんで聞いた”なら、オレの諱が「備」だって知ってるはずがない。

「つまり、どういうことだ、兄者」

 雲長のやつが、いぶかしげな顔で睨んできやがる。

「雲長。つまり、だよ」

 人差し指をフリフリと振って、オレはこの、頭が切れるわりにうっかりな気がある義弟に教えてやるのだ。

「董卓将軍は、それだけオレに注目しているってことだ。
  なんせ娘にオレの名前を教えているくらいだからな」

「はあ」

「くくく。この劉備、運が向いてきやがった」

「……それなら最初に宴会に呼ぶと思うのだがな?」

「………え、演出だろ演出」

 そうだそうだ、そうに決まってるぜ。
 娘を使って劇的な出会いを演出するなんて、董将軍は粋なことをするもんだ!
 ……そうだよな?

――――――――――――――――――――――

「董将軍。そなたがクビになったということで。後任は俺になる」

「えええ……」

 なんか「二か月間なにもせずに拱手傍観していた」という罪で、パパがクビになりました。
 後任の将軍は、このいかにも高慢で神経質そうな、皇甫嵩という人だそうで。
 どういうことですか!? パパはちゃんと宦官にワイロを払いましたよね?

「皇帝陛下の勅命か。や、やむを得ん。
 では作戦や状況の引継ぎを。宴会の準備をしてあるので……」

「不要だ!!
 そのようなことをしているからクビになるのがわからんのか!」

137 :名無しさん:2021/03/30(火) 18:36:31 ID:T3EeMlgl0

 ええ……
 宴会はともかく引き継ぎは必要ですよね?
 前世の父が、前任者が引き継ぎせずに逃げたって怒ってたのを覚えています。
 なんか皇甫嵩将軍の副官っぽい人もため息ついてますね。お察しします。

「あ、はい。じゃあ状況はこの地図にまとめております。後は頼みますぞ……」

「匈奴も呼び戻せ。騎兵も歩兵も総攻撃だ」

「ははっ。かしこまりました!!」

 パパなんか居ないかのように副官さんに指示を出してます。
 ……地図、見なくていいんですか?

「皇甫将軍。匈奴騎兵に城攻めをさせるのはどうかと思うが」

「何を言う、董仲穎。せっかく匈奴に来てもらってるのに、手柄を立てさせなくてどうする。ぜひ先陣を切ってもらおう。
 ……孟徳、なにをぼさっとしている!」

「はっ! 曹孟徳、準備にかかります!!」

 曹操だぁぁぁぁぁぁ!!

 曹孟徳って間違いないですよね! この苦労してそうな副官さんが曹操か!
 曹操さんはダッシュで天幕から駆けだしていきました!

 ……あっ! しまった!
 曹操と言えば三国志最大の勝ち組!
 めちゃめちゃ怖いけど、だからこそ仲良くなれば、未来が明るいじゃないですか!
 千載一遇のチャンス! せめて挨拶くらいはしておかないと!

「お嬢様、どこへ行きますんや」

「郭校尉、いえ、ちょっとあの副官さんに挨拶を……」

「いけません。主公はこの軍の将軍ではなくなったのです。ただちに主公とともに洛陽へ戻らねばなりません」

「そんなぁ〜!!」

――――――――――――――――――――――

 ……と、いうことがあったのが2ヶ月前でした。
 大雑把にまとめると。

 なんか、城攻めの準備をじっくりしてたのを朝廷が気に入らなかったらしく。
 汝南戦線で大手柄を立てた皇甫嵩将軍が曹操さんを連れて乗り込んできて、パパはクビ。軍隊を全部奪われたんです……
 そして、じっくり準備した攻城兵器と切り込み部隊を使って皇甫嵩将軍は大勝利。

 黄巾賊10万を惨殺して、
 死体が丘のように積みあがったとか……

 なんてことしてるの!?
 何度でも言います!
 あんなことしなくて済んでよかったです!
 そんなもの見なくて済んでよかったです!!!

「皇甫嵩のヤツ!! あやつめ、宦官の孫の曹操と一緒に居やがった!!!
 曹操を通じて宦官を動かして、功績を横取りしたに違いない!!!!」

 ただ、あれ以来パパが何かあるたびにこの調子で。
 魂がちょっとダークサイドに寄っちゃってる感じなのです。
 気持ちはすごく分かります……あれはひどすぎます。
 パパが万全の準備を整えて、あとは攻撃するだけだったのに、いきなり来た後釜に、整えた準備を全部横取りされたんですから。

 ですが、原作主人公の曹操さんとパパの仲が悪化するのはまずい……
 っていうか曹操さんって宦官の孫だったんですね。
 ……あれ? でも宦官ってあそこをちょんぎってるのに、なんで孫が? ま、まあそれは後に置いておきましょう。とにかく曹操さんの弁護をしないと。

「あ、あの、孟徳さんはすごい活躍だったそうですし、皇甫将軍のわがままにウンザリしているような雰囲気でした。たぶん、悪いことはしていないのではないでしょうか」

「な……」

 私が曹操さんの弁護をすると、真っ赤だったパパの顔がサーッと青くなっていきます……

「……では誰が悪いというのだ……
 青ちゃん、朱儁将軍の話を聞いたか。
 朱儁将軍もワシと同じように城攻めの準備をして、
 同じように讒言されたのに、
 おとがめなしで大勝利だぞ、朱儁将軍は!!」

 誰が悪いのか。
 パパを首にする命令をした、皇帝が悪いのではないでしょうか……

「いや、その、そういう命令がでたのは……」

「……そうじゃな。宦官じゃ。
 宦官どもが聖上をだましてワシを陥れたんじゃ。
 おのれ、宦官ども……」

 いやぁぁぁぁぁ!! パパがどんどん黒くなっていきますぅ!!

138 :名無しさん:2021/03/30(火) 18:44:24 ID:T3EeMlgl0
スレ6話後半の小説化を行いました。お待たせしましたー。
いま気になった部分を微調整しているので、おわったらディスコにテキストあげておきます。

139 :名無しさん:2021/04/30(金) 13:16:40 ID:/aE73Xvs0
そうそう昨日追い込みウララ育成したんですよ
スピードSスタミナCパワーB根性B賢さDなんですが、連対率めちゃ高いです。
問題はスピードが速すぎて、追い込みなのに6番手くらいにつけてしまうので固有が発動しない……
チームレースのモブもうちょっと強くして欲しいです。

140 :名無しさん:2021/04/30(金) 13:16:50 ID:/aE73Xvs0
激しく誤爆

141 :神奈いです ★:2021/05/23(日) 22:07:07 ID:admin
投稿初めてます

142 :名無しさん:2021/05/24(月) 13:12:26 ID:RZl/sOh60
わーい

143 :神奈いです ★:2021/05/26(水) 16:23:26 ID:admin
〜三公〜
司徒 : 総理大臣
太尉 : 軍事大臣
司空 : 法務大臣

〜九卿〜(国務大臣)

太常:神祇大臣
光禄勲:官房長官
衛尉:皇宮警察長
太僕:交通大臣
廷尉:検察長官
大鴻臚:外務大臣
宗正:宮内大臣
大司農:農産業大臣
少府:林水産大臣
執金吾:親衛師団長

144 :名無しさん:2021/05/26(水) 18:44:42 ID:LSur+io50
某異世界転移小説の影響で周代の三公六官とごっちゃになってしまう

145 :名無しさん:2021/06/10(木) 19:32:24 ID:Y5+k8pHo0
ひさびさのスレ投下だー
下書きしていいのでしょうかね?

146 :神奈いです ★:2021/06/10(木) 19:36:24 ID:admin
>>145
あー、いや、自分でやる。アイデア出しのために投下してる。

147 :名無しさん:2021/06/10(木) 19:39:16 ID:Y5+k8pHo0
らじゃー!

148 :名無しさん:2021/08/15(日) 06:31:04 ID:7XaA4aKu0
登場人物の戦略をまとめてみよう

■皇帝(霊帝)■
●大目標
 皇帝権力を増大し、皇位継承を安定させて王朝を安定させる

●小目標
1・皇帝予算(蔵)の強化
2・皇帝固有の軍事力の獲得
3・皇太子への経済教育

●小目標実現の手段
A・売官による銭の蓄積
B・速戦による反乱鎮圧予算圧縮
C・貯めた銭による軍の編成と維持
D・豪族と宦官を競わせて利用する
E・皇太子のために市場を作り買い物をさせる

●戦略の個別評価
・小目標1は正しい。
 手段ABDによって小目標1を達成しようとしているが、
 ABDを実行することで民が困窮し反乱が起きるため、小目標1は成功しない。

・小目標2は正しい。
 手段CDにより小目標2を達成しようとしているが、
 維持費を支払うためにCを実行しつづけることで民が困窮し反乱が起きる。
 反乱鎮圧のために銭が減り、小目標2の維持費を支払えなくなるためしない。

・小目標3は正しい。
 手段Eでは金銭感覚は身につかないため、小目標3は達成されない。

【総評】
 目標設定は正しいが、達成のための手段が間違っている。

149 :名無しさん:2021/08/15(日) 15:16:26 ID:7XaA4aKu0
登場人物の戦略をまとめてみよう

■董青■
●大目標
「平和な世界で」「家族と仲良く」「幸せな人生を送る」

●小目標
「平和な世界で」
1・農民ひとりあたり農地の狭さを解消する
2・戸籍の強化(流民≒奴隷の減少)
3・政治改革
4・固有財源の強化

「家族と仲良く」
5・父の魔王ゲージを上げない
6・宦官皆殺しイベントを発生させない
7・政治に影響力を持ち続けつつも粛清されない
8・固有武力の維持

「幸せな人生を送る」
9・ハートがキュンとくる伴侶を見つける

●小目標実現の手段
A・河伯教団の強化と拡大
B・開拓ノウハウの蓄積
C・商品開発と販路開拓
D・銀行業務による信用創造
E・皇子を拉致して洗脳
F・宮廷内部へのコネクション構築
G・匈奴とのコネクション維持
H・政戦のブレーン獲得

●戦略の個別評価
・小目標1は正しい。
 小目標34および、手段ABCDEによって小目標1を達成しようとしている。
 現状、開拓規模の拡大が越えるべき障害となっている。

・小目標2は正しい。
 手段ACにより小目標2を達成しようとしている。
 また、小目標1と小目標2は相互に支援しあう。
 現状、豪族がすでに抱え込んだ奴隷の良民化が課題となっている。

・小目標3は正しい。
 手段Eにより小目標3を達成しようとしている。
 弁が皇帝になった後も政治を腐敗させないための手段が不足している。
 カクからは皇后になれと言われている。

・小目標4は正しい。
 手段ABCDGにより達成しようとしている。課題はまだ見えていない。

・小目標5は正しい。
 手段EFHにより症状の進行を抑え、目標3の達成により最終解決しようとしている。

・小目標6、7は正しい。
 達成する手段は検討されていない。

・小目標8は正しい。
 手段AGにより達成しようとしている。

・小目標9は正しい。
 達成する手段は検討されていない。

【総評】
 大規模な予算を獲得して農地創出速度を加速しましょう。
 流民の吸収が落ち着いたら豪族の奴隷を良民に戻す手段を考えましょう。
 次期皇帝の良政を維持し、強くなった青が危険視されて粛清されない方法を考えましょう。(カク「皇后から逃げるな」)
 宦官皆殺しイベントを発生させない方法が未検討です。考えましょう。
 恋愛クソザコナメクジをなんとかしましょう。

150 :名無しさん:2021/09/20(月) 14:35:26 ID:IZx4y3T30
>>149アップデート 第五章開始時点
■董青■
●大目標
「平和な世界で」「家族と仲良く」「幸せな人生を送る」

●小目標
「平和な世界で」
1・農民ひとりあたり農地の狭さを解消する
2・戸籍の強化(流民≒奴隷の減少)
3・政治改革
4・固有財源の強化

「家族と仲良く」
5・父の魔王ゲージを上げない
6・宦官皆殺しイベントを発生させない
7・政治に影響力を持ち続けつつも粛清されない
8・固有武力の維持
9・名士達を穏健化させる

「幸せな人生を送る」
10・ハートがキュンとくる伴侶を見つける →達成
11・劉豹君に拉致されない
12・弁皇子の後宮に入れられない

●小目標実現の手段
A・河伯教団の強化と拡大
B・江南での開拓と移住推進
C・商品開発と販路開拓
D・銀行業務による信用創造
E・皇子を拉致して洗脳
F・宮廷内部へのコネクション構築
G・匈奴とのコネクション維持
H・政戦のブレーン獲得
I・政権を取って名士にポストを配る

●戦略の個別評価
・小目標1は正しい。
 小目標34および、手段ABCDEによって小目標1は順調に推移している。
 現状を維持すれば目標は達成される見込みだが、
 達成の障害は小目標10。

・小目標2は正しい。
 手段ABCにより小目標2は順調に推移している。
 現状、豪族がすでに抱え込んだ奴隷の良民化が課題となっている。
 荊南の区氏の奴隷は解放したが……

・小目標3は正しい。
 手段Eにより小目標3を達成しようとしている。
 弁が皇帝になった後も政治を腐敗させないためには皇后になるのが近道だが、
 小目標10と相反するため選択できない。
 達成の手段を新しく設定する必要がある。

・小目標4は正しい。
 手段ABCDGにより達成しようとしている。
 デフレが襲ってきたがEにより乗り切った。課題はまだ見えていない。

・小目標5は正しい。
 手段EFHにより症状の進行を抑え、目標3の達成により最終解決しようとしている。
 目標3は長期間の目標達成維持に障害が生まれているが、
 目標3が崩壊するころには董卓は寿命で死んでいるので問題なし。

・小目標6は正しい。
 達成する手段は検討されていない。

・小目標7は正しい。
 弁の皇后になるルートが選択できなくなったので、別の手段を検討する必要がある。

・小目標8では、弁が皇帝になった場合、大目標「家族と仲良く」が達成できない。
 手段AGにより小目標8を達成しようとしていたが、
 劉豹が青を拉致しようとしているため手段Gが活用しにくくなった。

・小目標9はカクの提案により設定された。
 手段Iにより穏健化させる方策が提案されているが、
 手段ABにより豪族を敵に回してるのでポストだけでは穏健化しないと思われる。
 別の手段を検討する必要がある。

・小目標10は達成された(徐晃)。

・小目標11は正しい。
 まず青は、豹が拉致を検討していることを知らないので、知る必要がある。
 拉致回避を達成する手段としてAが活用可能だが、
 匈奴の本気の拉致を防ぐには力不足である。
 小目標達成のための別の手段を検討する必要がある。

・小目標12は正しい。
 達成する手段は検討されていない。

151 :名無しさん:2021/09/20(月) 14:35:32 ID:IZx4y3T30
>>150

【総評】
 青は皇后にならないので、皇后にならずに弁の良政を維持する方法を考えましょう。

 弁君にむりやり後宮に入れられずにすむ方法を考えましょう。

 豹君に拉致されず、それを理由に匈奴が敵に回ることがなくなる方法を考えましょう。

 宦官皆殺しイベントを発生させない方法が未検討です。考えましょう。

 区氏以外の豪族の奴隷を良民に戻す手段を考えましょう。
 袁紹の宦官皆殺しイベントを防ぐ方法を考えましょう。
 →つまり名士を敵に回すつもりマンマンである
   ↓
 このように名士豪族を全力で敵に回していますが、
 敵に回したままでは漢王朝が安定せず三大大目標が達成できないので、
 名士豪族を穏健化させる方法を検討しましょう。

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