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酒ない支援スレ VER3
184 :
酒ない
◆fMFJeA/W0Y
:2019/07/18(木) 12:36:24 ID:A9V6AAUb
そして、ホワイトボードマーカーで、稲穂と井戸の絵をトントンと叩く。
「日本酒の原料はたった2つ。水と米だ。こいつを2ヶ月くらい色々すると、日本酒ができあがる」
「米と水だけで、こんなもんができるべか……」
「あれぇ……?」
感心するうわばみたちの後ろで、リタの妹ルーティが不思議そうな声をあげた。
「ねえ、トージお兄ちゃん」
「なんだい、ルーティちゃん?」
「お酒って、甘いものでつくるんだよね?」
「うん、そうだよ。酵母っていう生き物が、甘い物から作るんだ」
「お米も水も、甘くないよね?」
「あれ? そういやそうだな……」
ルーティの素朴な疑問に、ロッシが反応する。
「ルーティちゃん。良いところに気づいたね。そう、米は甘くないから、そのままじゃ酒にならないんだ」
「えへへー」
「だから、まず甘くない米を甘くしなきゃね! 日本酒造りでは、コウジカビっていう生き物を使って、米を甘くするんだ。つまり、こうだね!」
―――――――――――――――――――――――――――
「稲穂」┬(コウジカビ)→ 甘い米 ―(酵母)→「酒樽」
「井戸」┘
―――――――――――――――――――――――――――
トージは先ほど書いた図の一部を消して、このように書き足していく。
「なんか、複雑になったべな……」
「そんなに難しくはないんだけどね。そうだな……」
そう言いながらトージが首をひねる。
彼の脳裏には、村の農民たちの暮らしぶりが流れていた。酒造りを彼らが直感的に理解するには……
「……そうだ。日本酒づくりは、土と水で、羊の乳を作る仕事だと思えばいいよ」
「羊の乳だか?」
「そう。羊の乳が日本酒だと思ってみて。いい乳を絞るには、羊にたくさんエサを食べさせるだろう?」
「んだ。たくさん草を食べさせねぇと、乳が出なくて親父にひっぱたかれるだよ」
うわばみのひとりの自虐ジョークに、会議室が笑いに包まれる。
「さて、君は父さんに叱られたくないので、羊のために草を用意したい。でも君が任された土地は土がむきだしで、草が生えてない。どうする?」
「そんなら冬まで待つしかねぇべな。冬になりゃ雨が降るから、ほっとけば草が生えてくるべさ。生えてこねえなら、そのへんで草の種でも拾ってくるべよ」
「そう。つまり、そういうことなんだよ」
トージは、あらためてホワイトボードに、絵と文字混じりの記述を追加していく。
―――――――――――――――――――――――――――
※日本酒造り
「稲穂」┬(コウジカビ)→ 甘い米 ―(酵母)→「酒樽」
「井戸」┘
※羊の乳搾り
「土地」┬(牧草の種)―→ 牧草 ――(羊)―→「羊の乳」
「雨水」┘
―――――――――――――――――――――――――――
「羊が勝手に乳を作るように、日本酒は、酵母って生き物が勝手に作る。だからみんなには、羊の面倒を見るのと同じように、酵母の面倒を見てほしいんだ。エサをあげたり、小屋を掃除したりしてね」
トージはボードの右半分を叩きながらそう言うと、次に左半分を叩き始める。
「羊に草が必要なように、酵母には甘い物が必要だ。だから牧草地で草を生やすように、米にカビを生やして甘くして欲しいんだ」
「なるほど、そういうことならわかりやすいです」
「んだな、獣の面倒見るなら、オラたちにもできんべ」
トージの説明を聞いて、リタがほっと胸をなでおろす。
うわばみブラザーズも、さきほどまでの不安げな表情は薄れつつあった。
「ここで話したことは酒造りの基本だから、しっかり覚えておいてくれ。まずは昼飯にしよう。食休みしたら、午後から日本酒づくりのスタートだ!」
拳を振り上げながらそう宣言したトージの顔は、ついに酒造りを始められるという充実感に満ちあふれている。
異世界での日本酒造りが、いま、始まろうとしていた。
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