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酒ない支援スレ VER3

44 :酒ない ◆fMFJeA/W0Y :2019/03/17(日) 16:02:58 ID:EY9E8WKG

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■酒ができない“理由”の推測

【必須要素の不足】
・糖分が足りなくて発酵が発生しない
・糖分の種類が違うため、酵母のエサにならない
・アルコールを生成する“酵母”がいない

【環境的要因】
・酵母がアルコールを生成する条件が特殊
・何らかの理由で酵母の活動が阻害されている
・この世界では酵母が生存できず、死んでしまう
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「この世界に酒がない理由として、こんなことが考えられる。
 まず“アルコール発酵”が起きるための前提条件が足りないケース。
 次に、この世界では何らかの理由でアルコール発酵が起きないというケース。
 このなかのどれが正解かを調べるために、いろんな条件で実験をしたんだ」

 トージは高校の講義のようなノリで説明を続けるが、いくら説明しても、生物学の基礎知識が身についていないリタとロッシに理解できるはずがない。
 ロッシは早々に眠たげな表情になっていたが、リタはトージの説明を聞き漏らすまいと、真剣に説明に食らいついていた。

「まずAの瓶は、この村で集めた材料だけで作ったものだ。
 僕の故郷ならこれだけでも酒になるんだけど、結果は見事に失敗。
 つまりこの世界では、酒は自然に出来ない、という疑いが強まったわけだね」

 トージは空っぽになったBの瓶を手に取る。

「次はBの瓶。この瓶に入れた糖蜜は、僕の地元の砂糖で作った。
 僕の故郷では、砂糖を発酵させてアルコールにするお酒がたくさんある。
 だから“糖分が足りない”場合や、
 “糖分の種類が僕の地元と違う”のが酒ができない原因なら、
 この瓶は問題なく酒になるはずだ。でも、Bの瓶は腐ってしまった」

「ええ。結局ちゃんとお酒になったのは、CとDの瓶だけでしたね」

「そのとおり! CとDの瓶は、僕の蔵でもこの家でも、酒になってくれたね。
 そしてABの瓶とCDの瓶の違いはひとつ。
 CとDの瓶には、僕が地元から連れてきた“酵母”が入っている」

 トージは瓶をテーブルに置き、レーズンをつまむ。

「僕の故郷では、酵母という生き物は、空気中のどこにでもいる。
 そして甘いものにくっつくと、甘いものを食べて増殖する。
 蜂蜜もそうだし、花の蜜や樹液でもいい。このレーズンもそうだ。
 だから僕の故郷なら……レーズンの皮にこびりついていた酵母が、AとBの瓶で糖分を食べて、酒を吐き出すはずなんだ」

 トージはレーズンを口に放り込むと、リタとロッシのほうに身を乗り出した。

「でもAとBの瓶は酒にならず、CとDは酒になった……つまり。
 おそらくこの国には、酵母がない。
 酵母がいないから、酒がなかったんだ」

「なるほど、と、いうことは……?」

「この国には酵母がいないせいで酒がなかったけど、
 CとDの瓶が酒になったことでわかるように、僕が酵母を連れてきた。
 つまり! 僕はこの国でも、この国の作物を使って、
 これからもずっと酒を造ることができるんだ!!」

 トージの表情が、満面の笑顔に変わる。

「なるほどねー、トージさんはそれを知りたくて、このめんどくさそうな実験をやってたのかよ」

「僕にとっては生きるか死ぬかの大問題なのさ。
 なんてったってウチは、先祖代々酒造り一筋だからね」

「先祖代々酒造り、か……そうだな。先祖から受け継いだ仕事を続けるって、素晴らしいことだと思うぜ」

 ここまでの説明を眠そうに聞いていたのが嘘のようにキリッとした顔で、ロッシがトージの言葉にうなずいた。

「おめでとうございます、トージさん。お祝いをしなければいけませんね」

「お祝いか! ありがとう! それならこいつを仕上げちゃわないとね!」

 トージの手には、実験の結果、見事に酒になった、4本の瓶が握られていた。

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 今回トージが仕込んだ酒「クワス」には何種類ものレシピがありますが、仕込みに糖分を足す場合、蜂蜜を添加するのが一般的です。
 今回トージが蜂蜜ではなくカラメルを使ったのは、

1.地球産酵母の混入を防ぐために糖分を加熱殺菌したかった
2.異世界産の蜂蜜が、地球の蜂蜜とは異なる物質である可能性を疑った

 という2つの理由があります。

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