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董卓の娘相談スレ

1 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 00:14:55 ID:admin


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                   /i:/!  /    -= _ √i:i:リ〃j ノ ,j:i:{⌒ いろいろ相談したり、小説化したりするスレです
                     / "  、 丶       /i:>"、_ .イi:i:i:|
                      \ 、    _    / {i:i:7i:i:i:i:iリ
         、              丶 ー "  _ -    ∨i:i:i:i:i/
      、ト \、             /ト -=       ィ/i:i:i:i:i/ 7
         丶>― 、        _ 斗 7i:i:i:i:/!    //i:i:i:i:ア.ィ/,
        _ ノ ⌒ 丶\  _ -=    ,:i:i:i:i/.∧  ///i:i:i/:::::イ 丶
      r " <7 ̄ 、\ X       |:i:i:イ /f/ // ,i:i/::::/     ∨
      / - _ `ヽ /⌒>\、     /|:ア::! { //  ,ィiア::::/  /    ∨
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26 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 12:53:02 ID:admin
曹操名古屋弁の可能性がでてきた。

27 :名無しさん:2021/02/07(日) 12:53:59 ID:EFvkRMfj0
そうすると関羽は秋田弁とか?

28 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:00:31 ID:zcp6EDTV0
リーさんの表記が一部で「李」になってるのは混乱の元かな?
知らない人もいるし

29 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:01:43 ID:lwLall0M0
>>28
そこ悩みどころなんですよね。
李カクと郭シだってことをなるべく伏せたくてカタカナにしてるんですけど。

30 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:03:23 ID:zcp6EDTV0
いっそカクさんもクォさんにしてしばらく隠すとか?

31 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:04:54 ID:EFvkRMfj0
リーさんとカクさんでいいんじゃないかな
スケさんカクさんみたいで

32 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 13:07:54 ID:admin
>>29
李:リーさん、リー隊長、リーのおっちゃん
郭:カクさん、カク隊長、カクのおっちゃん






33 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 13:09:27 ID:admin
正確にはルビをつかって

リー リーたいちょう  リー
李、李校尉、    李のオッちゃん

カク カクたいちょう   カク
郭、郭校尉、     郭のおっちゃん



なお、校尉というのは正規軍の大佐レベルですが、こいつら董卓の私兵なので自称です。



34 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:09:31 ID:lwLall0M0
らじゃ。李、郭って書いてるところもカタカナにしておきます

35 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:09:39 ID:MP4JbFu60
リー将軍か、これで南方の軍閥だったらハマった(ネタ

36 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:10:04 ID:lwLall0M0
あ、漢字ルビですね、了解です

37 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:14:05 ID:yb0ANw0p0
涼州は寒そうだし北海道弁とか

38 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:16:40 ID:lwLall0M0
節子、それ標準語や

39 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:29:35 ID:9roKw/7N0
方言に凝りすぎると字幕付きになるぞw

40 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:29:42 ID:6swvlTg30
アイヌ語にしたらお話と別の意味で話題になりそう

孫権は沖縄かな?

41 :名無しさん:2021/02/07(日) 13:47:22 ID:yb0ANw0p0
あっぺ!あっぺ!

42 :名無しさん:2021/02/07(日) 14:20:56 ID:MP4JbFu60
雑談スレで誘導されたのでこっちにも
タイトルだけど「河伯の巫女」より「黄河の巫女」とか「黄河の娘」や姫巫女の方がインパクト強くて分かりやすい気がする
「河伯」がなんとなく中華の河の神様というのを知ってる人はちくちょくいるだろうけどイコールで黄河にはすぐ結びつかないだろうし

43 :名無しさん:2021/02/07(日) 14:30:16 ID:waMgrpve0
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんみゃあ

44 :名無しさん:2021/02/07(日) 15:54:58 ID:lwLall0M0
>>9つづき 河伯の巫女2話

 巫女おばあさんの屋敷で一泊した私たちは、馬車に乗ってお城に戻ります。
 中国ってスケールが大きいですよね。ちょっとした外出が二日がかりです。

 お父様が統治している河東郡は、漢王朝の都、洛陽のすぐ北西にあります。
 このあたりは一面に麦の畑が広がっていて、とても豊かなんだそうです。
 馬車の窓をあけて、麦踏みを終えた畑を眺めていると、騒ぎが聞こえてきました。

「いい馬じゃないか。それもよこせ」

「おねがいします、この馬は大事な馬で、単于に差し上げるものなんです!」

 武器を持った兵隊っぽい人たちが、ボロを着て馬を連れた人たちに詰め寄ってるみたいですね。

「知るかボケ! ゴミにも等しい匈奴のクセに逆らってんじゃねぇ!
 さっさとよこせ!!!」

「お願いデス! お願いデス!」

 なんだか雰囲気が不穏になってきましたよ??

「李さん、あれ……」

「お嬢様、ご心配なく。官兵が匈奴を躾けているだけですので……」

「あン?? しかしあいつら、どこの兵や??」

 なんでふたりとも平然としてるの??
 ていうか、兵隊っぽい人たちが、ボロの人たちを思いきり殴りはじめましたけど?

「ぎゃあ!」

「うし、二三匹殺せばおとなしくなるよなー?」

 殺すとか言い出しましたよこの人たち!

「や、やめてください! 乱暴はダメです!!」

「「お嬢様ーーーー!?」」

 お、思わず飛び出してきてしまいました!
 
「あ? なんだこのクソガキ……」

「恐れ多くも皇帝陛下の勅命により、御馬をあつめているのだ!!
 邪魔をすれば子供といえど……」

 いかにもチンピラっぽい兵隊さんが私に詰め寄ってきます。失敗したかも!?

「ちょ、ちょっとまて、身なりがいい。……どこのどなたか!」

 ですが兵隊さんを制止するように、装備が立派な人が出てきます。
 この人は隊長さんですかね?

「董太守の娘御や」

「ところで、いま「クソガキ」とかいったか? ドサンピン」

 私を追って、李さんと郭さんが、抜刀してすっ飛んできました!
 ごめんなさい、天命なので許してください!

「……太守の!? なんでこのようなところに……
 あ、いや。失礼いたしました。
 こちら県令の部隊で、命令により馬を集めていたところなのですが、
 匈奴のクズどもが言うことを聞かずに。お見苦しいところを。
 お、おい!謝れ!!!」

「「た、大変失礼いたしました!!」」

 太守というのはお父様のことですね。
 この人たちは県令さんの兵隊らしいです。
 県というと、わたしの昔の記憶だと、とても大きいように感じるのですが、
 漢王朝では県というのは小さいんです。
 お父様は河東郡の太守で、前世で言うと県知事みたいなものですね。
 県令は、郡の一部を統治するお役目で、前世でいう市長さんみたいなものです。
 県知事の娘って市長さんの部下より偉いんでしょうか?
 よくわかりませんけど隊長さん頭下げてるし、偉いみたいですね。

「ふむ? 命令やて……??」

「それよりさっきウチのお嬢様に無礼はたらいた兵こっちによこせ。殺す」

 やーめーてくーだーさーいー!?

「あ、あのー、李さんいいですから。私怒ってないですから……
 それより兵隊さん、匈奴の皆さんに酷いことはしないでください」

「へ?」「えっ?」

 ……なんで兵隊さんどころか、匈奴のみなさんまで驚いてるんですか?

「……お嬢様のお願いなんだが、聞こえたか?」

「あ、っはい!? では失礼します!?」

45 :名無しさん:2021/02/07(日) 15:55:18 ID:lwLall0M0
>>44

 李さんがすごんで、県令の兵隊さんたちを追い払ってしまいました。
 さすがですね。怖い顔でこのお二人を超える人はお姉様しかいませんから。
 なにはともあれ、乱暴な兵隊さんが帰ってくれてなによりです。
 安心していたら、さっきまでいじめられていた匈奴の人たちが、私の前で地面に膝をついています。

「あ、あのう、ありがと。ござます。漢の偉い人、なぜ匈奴助けます?」

 なんでと言われましても。

「目の前で人が殺されそうだったら止めるのが当然です。
 同じ人間じゃないですか」

「「「えっ!?」」」

 匈奴のみなさんとリーさんカクさんがハモってます。
 えっ、って、こっちが「えっ」ですよ。

「あ、ありがと。えらい人……」

 匈奴のみなさんがボロボロ泣き出しましたよ。
 もしかして人殺しもスルーするのが当たり前だったりします?
 私まだ7歳ですし、お屋敷からほとんど出たこともない箱入り娘ですからね。
 漢王朝の常識ってやつを勉強しなくてはいけないようです。

「えっと……李よ、これは……」

「なんと素晴らしいお方であろうか! おお、全くお嬢様のおっしゃるとおりよ!]

「せ、せやな……」

 カクさん、何か言いたいことがあるなら言っていいんですよ?
 むしろ言ってください。そして教えて?

「……それよりもだな、匈奴よ。
 やつらはなぜ馬をあつめているのか? 勅命とか言っていたか?」

「えとえと、漢の皇帝、ウマあつめる。命令。だから匈奴もウマだせといわれた」

「おかしな話やな、勅命なら郡太守に降りてこないはずがないんやけど。
 ワイらは聞いとらへんぞ」

「は? まさか「勅命を偽っている」のか?」

「とりあえず、太守に報告せなアカンな」

 なんか、李さんと郭さん、怖い顔で相談していますね。
 なにかまずいことでも起きたんでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ちょっと待て、李。情報量が多い」

「つまり、お嬢様は神です!」

「待って!?」

 李さんの報告を受けているお父様が混乱されています。
 申し訳ありませんお父様、変なのが憑いたばっかりに。

「ふむ。まぁ、そういうことであれば、やむをえまい。
 では普通に嫁ぐのは私だけとしよう」

「素晴らしい!義妹に神のご加護があるとは。
 われら牛一族にも運が向いてくるというものよ!!」

 こちらはお姉様と、お姉様の結婚相手である牛輔さん。
 お父様の同郷の武将さんです。
 

46 :名無しさん:2021/02/07(日) 15:55:42 ID:lwLall0M0
>>45

「えっと、青ちゃんは特に変わりはないか? 体調は?」

「はい、お父様、体調は特に問題ないです。
 ただ、神がついてるとか言われても困りますけど。その……」

「どうした? 何か気になることがあるかね?」

「匈奴の人たちが可哀そうなんですが、ウマをとりあげなきゃいけませんか?」

「ふむ、その話か……」

 場の空気がすぅっと冷えます。

「……あの県令のバカ者が。
 河東郡では南匈奴とうまくやらんといかんことすら理解できんのか」

「主公。今回の県令の動きは本気でまずい。
 偽勅を南匈奴に発してる可能性がある」

「……県令め……十常侍の血縁だからと思い上がっているな。宦官どもめ!!!!」

 そう言ったお父様の目は、いつもの優しい目ではなくて、とっても怖くて。
 私は一歩も動けませんでした。漏れそう。
 やっぱりお父様は董卓でしたぁ!!


 それからしばらくの時が流れました。
 県令はほどなくクビになり、ウマは無事に匈奴さんたちの元に戻ったそうです。
 そうなるまでの間に李さんと郭さんが県令の屋敷に殴りこんだり、いろいろあったようで、李さんが自慢げに話してくれました。

 県令は十常侍の血縁なので、身体だけは無事な状態で洛陽に送り返されたとか。
 十常侍って、黄巾の乱の原因になった、汚職ばかりする皇帝の側近ですよね!?
 お父様は十常侍が心底嫌いみたいで、十常侍の話が出ると、すごく怖いです!!

 まあ、7歳の小娘には関係のないことです。
 まだ戦乱も起きてませんし、勉強をいろいろしていいと言われましたので、いまは家庭教師のみなさんの授業を受けながら、市内を見て回って見聞を広めています。
 なんといっても私は漢王朝の常識ゼロの箱入り娘ですから。
 一族全員皆殺しを回避して、生き延びるためには、知識も常識も足りてません。

 高度な知識みたいなやつは、お父様がつけてくれた家庭教師からいくらでも教われますけど、世間の常識ってやつは、外の世界を見聞しないと身につきません。
 だから私は、ときどきこうして馬車で市内を見て回っています。
 正直、出なくていいなら何年でも部屋に籠もっていられるタイプですが……
  普通の人が何を食べているかとか、どんな服を着ているかとか、どんな不満があるかとか、知っておいたほうが得ですからね。

 もちろん私は太守の娘ですから、ありのままの庶民の暮らしというのはなかなか見ることが出来ません。みんな恐縮しちゃいますから。
 だから案外、町中の落書きなんかがいい情報源になってくれたりするんです。
 落書きは恐縮したりしませんからね。

「御者さん、すこし止めてください」

 ちょうど民家の壁に落書きを発見しました。
 落書きと言っても、21世紀のウェーイな人たちが書き殴った落書きとは違って、知識人の書く落書きですからね。そもそも知識人じゃないと漢字書けませんから。
 意外と名文だったり、クスっと笑えるユーモアがあったりするんです。
 さてさて、この落書きはどんなのかなー?

 天 歳 黄 蒼
 下 在 天 天
 大 甲 當 已 
 吉 子 立 死  

 蒼天已に死す。黄天當に立つべし。
 歳は甲子に在りて、天下大吉ならん。

 ……黄巾党のスローガンじゃないですかぁぁぁぁ!!
 ん? 年は甲子に在りて?

「御者さん、御者さん」

「なんでございましょうか、お嬢様」

「……今年って何の年でしたっけ」

「今年ですか。元号は光和の七年。干支はひとめぐりして甲子にございます」

 甲子の年……今年から、黄巾の乱……?
 ぱたり。

「お嬢様!? お嬢様が卒倒なされた! 急ぎ屋敷に戻ります!」

 遠のく意識の中、私が愛する平和な日々が、はやくも終わってしまったことに、深く深く絶望していたのでした。

47 :名無しさん:2021/02/07(日) 15:56:44 ID:lwLall0M0
第一回のラストまで書いてみました。カクさん大阪弁バージョンです。

48 :名無しさん:2021/02/07(日) 16:02:29 ID:EFvkRMfj0
乙ー

あー、そりゃそうだよな
落書って言えば知識人がやることだもんな

49 :名無しさん:2021/02/07(日) 16:09:51 ID:Vn5m977d0


50 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 16:10:07 ID:admin
>>46
御者は年号知らないと思うので、「子年ですよね?」ぐらいでいいかなと。

51 :名無しさん:2021/02/07(日) 16:11:40 ID:lwLall0M0
なるほど、修正しておきまーす

52 :名無しさん:2021/02/07(日) 16:19:35 ID:lwLall0M0
ところで史実だと子年3月から黄巾の乱スタートなので、
1話時点の現在は184年の1〜2月ってことでいいですよね?

53 :名無しさん:2021/02/07(日) 16:26:06 ID:lwLall0M0
華北は冬小麦地帯であることを確認。2話目冒頭の描写に関わるので

54 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 16:33:04 ID:admin
>>52

はーい。とても寒そう。

55 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 16:35:04 ID:admin
>>2848
光武帝が一度リセットしたから

56 :神奈いです ★:2021/02/07(日) 18:47:42 ID:admin
あ、旧暦春1月だからそれほどでもないか。

57 :名無しさん:2021/02/07(日) 19:10:23 ID:EFvkRMfj0
今の暦は後漢四分暦で、冬至の二か月後が正月なので、2月中旬から下旬かな。

58 :名無しさん:2021/02/08(月) 04:48:51 ID:acrF0e7h0
河伯の巫女3話

 董卓パパ、つまり河東郡太守は、安邑県のお城に政庁を構えています。

 なかなか立派な城壁を持つ大きなお城で、人口も多いです。
 なんでも昔の魏の国の首都だったそうで……あれ、魏の首都って業β(ギョウ)だったのでは?
 と聞いたら業β(ギョウ)が魏の首都になったことはないそうです。あれ?
 まあ、なんか変な感じはしますが置いておきましょう。
 私はその、安邑県のお城で、お父様に直談判をしているところなのですから。

「で、その、太平道の人たちなのですが、大反乱するので、
 このままでは大勢の人が死にます。何とかしませんか?」

「えっ、そうなの……小青はどこでそれを?」

「えっ……とその、神のお告げです」

 前世でマンガで読みました、なんて言えるわけないですしおすし。
 私は河伯の巫女だそうなので、こうしたほうが通りはいい……んじゃないかなあ?

「たしかにあやつらは怪しげな術で人を集めたりと、気になってはいたが……
 太平道は基本的には、人の病を治すなど、
 良いことをしていると牛輔が言っていたぞ?」

「……なんでここで牛輔義兄様が?」

「あやつ、太平道に入信したそうだ」

 義兄上……またいきなり、なんてモノにハマって……!
 私は牛輔兄とはあまり話したことがないのですが、
 周囲からは、ちょっと迷信深いところがあるけど立派な人だと聞いています。

 ちょっと???

 ええっと、今は義兄上のハッピーさに構っている場合じゃありませんね。

「その……太平道はお札を燃やした灰を溶かした水で病が治ると言っておりますが、
 これは誠でしょうか?」

「ないな、ああいう道士やらなんかが傷や病を癒やすなどありえん。
 戦場で試したからな」(中黒傍点)

 え、えっと、なんか不穏な言葉が聞こえましたが。
 精神ダメージを食らいそうなのでスルーしますとりあえず。
 
「というわけでウソをついているので、
 あちこちで信者を集めて武装蜂起するのです。とっちめましょう」

「小青……証拠がないだろう?
 神のお告げで逮捕したら、ワシも妖賊の同類ではないか」

「むむむ……証拠……ないですね。
 こういう流言なら見つけましたが。蜂起の合い言葉のようですよ」

 一応、さっき見つけた落書きの写しをお父様に見せてはみますが。

「それも、太平道の連中が書いたという証拠がないじゃないか」

 ええ。まったくそのとおりですね。
 あー、またやらかしましたかねえ?
 たしかに何の証拠もないんですよね。
 外から見たら、ただの電波発言にしか聞こえない気がしてきました。

「ふむ……」

 お父様は一声はさんで居住まいを正します。
 これはお説教ですかね?
 7歳の小娘が政治に口出しするのはまずいですよねやっぱり。

「ところで小青」

「は、はひ」

「太平道が病人をだましているとしたら、青ちゃんはどうすべきだと思うかね?」

 え、お説教じゃないんですか?

「え、その、灰を溶かした水とか飲んだら病気が悪化しますから、
 ちゃんと看病してあげるべきではないでしょうか」

「よし、そうしよう。李校尉!!」

「はっ! 主公!!」

 うわ! いたの李さん!?

「河伯の巫女が真に病人を癒すそうだ。手配せよ」

「え゛っ」

 あの、パパ上様?
 わたくし7歳の小娘なのですが。医学のいの字も知らないんですが???

59 :名無しさん:2021/02/08(月) 04:49:20 ID:acrF0e7h0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「聞け聞け! 病人ども! 符水では病は直らんぞ!!
 河伯の巫女が薬を配って進ぜよう!」

 李のおっちゃん、私と兵隊を連れ出して、町のなかにテントを張ったと思ったら、
 でっかい声で人を集め始めましたよ。

「え、なんだ……?」
「なんだこれ、薬がもらえるのか?」

 なんか、タダで薬を配ると言ったとたん、
 ボロボロの格好をしたガリガリの病人だとか、
 いかにも具合の悪そうな人がワラワラとやってきましたよ。
 ……っていうか、臭いんですけど!?

「あのー、李校尉。みな栄養が足りていないのでは?
 まず食事を出して、服を洗濯して身体を拭いたほうがいい気がします」

「尊命!!」

 どうみても薬以前の問題ですよね。風邪で食欲がないとき、お母さんに「食べなきゃ治らないよ!」って叱られましたもん。

 李校尉が指示を出すと、兵隊さんたちがてきぱきとお湯を沸かし、体を洗わせ、服を洗濯していきます。
 あっちでは、おかゆの配給が始まりました。
 うわぁ、洗濯の水がドロドロ……コーヒーかな?
 これなら牛乳を拭いた雑巾のほうがよっぽど清潔じゃないでしょうか。

 兵隊さんばかりに任せておくのも申し訳ないので、私も手伝おうとしたんですが、何をしようとしても止められてしまいます。
 ……ごめんなさい、本音を言うと、止められてちょとホッとしてしまいました。
 あのバッチイ洗濯物には触りたくないです……

 そうして李校尉と、入浴洗濯ご飯のデイサービス配給を続けることしばらく。
 利用者のみなさんから喜びの声が届くようになりました。

「おお!? なんか巫女からいただいた薬を飲んだら、とてもすっきりしたぞ!」
「俺もだ! 背中のかゆみが綺麗に消えたぞ!」
「俺は力が湧いてきた! 巫女様の噂は本当だったんだ!」

 ※個人の感想です。
 ええっと……薬ってナンノコトデスカ?
 風呂と洗濯とおかゆの配給しかしてないですよね?
 普通にご飯食べて綺麗にしたのが効いただけに見えますけども。

 評判は評判を呼ぶというやつでして、どんどん人が集まってきます。
 何十人という人を治療……治療? していたらですね。
 なんか来ました。

「大賢良師張角の教えを誹謗する巫女とやらはここかー!!」
「「ここかー!!」」

 うわぁ、めっちゃ黄色い布つけてるんですけど……
 間違いないですね。黄巾党の人たちです。
 えっと、本人たちは太平道って呼んでるんでしたっけ?
 困っていたら、李さんが前に出てきてくれました。

「何だ貴様ら、巫女のなさることに文句でもあるのか!!」

「符水が効かぬなどと世迷言を申しておると聞いた!!
 太平道に従えば、どんな病人も立ちどころに回復するというのに何を言うか!!」
「そうだ!」「「そうだ!!」」

「何を言ってるんだ! 俺たちは実際に治ったぞ!」
「そうだ! そちらの符水は効かなかったぞ!」

「アキャーーー!!そんなことはありえん!」
「信心が足らん! 邪心があるのだ!! きちんと懺悔して祈れば治る!!!」

「うるせえ、えせ術士ども!」
「俺のかーちゃんを治してからでかい口を叩きやがれ!」

 え、えっと……
 太平道の人たちに、うちのサービスを受けた人たちが反論しはじめましたよ?

「お嬢様。お隠れください。危険です。」

 ですよねー! 私もそう思ってたところですよ李さん!
 ただ、逃げる前にちょっとだけ言っておきたいですよね。

「えっと、一言だけ。
 そのー、懺悔とか、信仰とか関係なく治すのが本当なんじゃないでしょうか?
 それって治す力なんてなくて、治らなかった人を見捨ててるだけでは??」

 そう最後っ屁を言ってみたのですが。
 その瞬間、私、空気の重さが変わった音を確かに聞きました。

「ムキーーー!!!」
「「邪心!! 邪心!! 邪心!! 邪心!! 邪心!!」」
「「「 ぶ っ 殺 せ !!! 」」」

60 :名無しさん:2021/02/08(月) 04:50:41 ID:acrF0e7h0
 急に、太平道の皆さんが襲い掛かってきたんです!
 李さんの兵隊と、治った病人さんたちが立ち向かって、大暴動になってしまい……
 あわわわわ、ごめんなさい!? これ絶対私のせいですよね!?

「お嬢様は逃げてくださいッ!!」

 はいっ!! ごめんなさぁい!!!!

 私はさっさと逃げ帰ったので、そのあとのことは伝え聞いただけなのですが。
 大乱闘は李さんの兵隊だけじゃ収拾できなくて。
 ついに河東郡の正規軍が出動して、ようやく鎮圧されたそうです……

 あのときの李さんの兵隊って、正規軍じゃなくて、ただの私兵だったそうです。
 初めて知りました……って、そんなことはどうでもいいですね!
 本当にごめんなさい!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「父上ごめんなさい、私のせいで大ごとに……」

 もう平謝りですよ。私のせいで大暴動を起こして、軍隊まで出動させるとか……
 河伯さんとやらが本当にいるなら、止めてくれても良いと思います!

「主公! 今回の暴動で、太平道のやつらが武装しとる証拠をつかみましたで!」

「よし、よくやった郭校尉」

 はい?

「本当に苦民を救うだけの教団なら、武装などするわけがありませんからな」

「まったくだ。では、さっそく上奏して討伐命令をもらおう……」

 ……んんー?

「えっと……どこからパパの策略だったのですか」

「いや、すまん小青。
 たしかにキナ臭いから、郭校尉を潜入させて調べさせてはいたんだ。
 だがなかなかシッポを出さなくてだな……」

 うわぁ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 そんなわけでパパは、都に報告書を送ったのですが……

「宦官どもめええええええっ?!!!」

 なぜか握りつぶされてしまったようなのです。
 なんでダメなの? ちゃんと報告してますよね? パパだし。
 もしかしてこの国ってやばいんじゃないですか?
 あとで聞いたんですが、ほかにも似たような報告書がたくさんあったんですよ?
 全部握りつぶされたそうです。まじか。

 そして2月。けっきょく別のルートから、洛陽の都での反乱計画が発覚しまして。
 漢全土で36万の信者が武装蜂起、黄巾の乱が起きてしまいました。
 中黄太乙、中黄太乙ってやかましいわ。

 なお、河東郡での蜂起は、今回の調査がうまくいったので、パパが先回りして潰すことができたそうです。
 私の周りだけはちょっと平和ですが、乱世が始まってしまいました……

61 :名無しさん:2021/02/08(月) 04:53:11 ID:acrF0e7h0
スレ3話目を小説化しました。
4話目は明日か明後日あたり目処にがんばります!

62 :名無しさん:2021/02/08(月) 04:54:08 ID:acrF0e7h0
スレ2話目のまちがい。

63 :神奈いです ★:2021/02/08(月) 05:42:34 ID:admin
ありがとうございます。

読んでる人居たら文字版にもコメントください。

64 :神奈いです ★:2021/02/08(月) 05:44:00 ID:admin
あまり手直ししてると作業がとまるので、
しばらく、話を進めるほうに専念しますが、
文字化も進められる方で進めてください。よろしくお願いいたします。

65 :神奈いです ★:2021/02/08(月) 05:45:06 ID:admin
文字だとAAと違うので、口調とかで区別しないといけないので、
そちらの案も募集します。


66 :名無しさん:2021/02/08(月) 06:38:25 ID:XFXgtAxp0
小説化乙です
読みやすくていい感じです
登場人物が多すぎるから口調とかは難しいですね、偶にしか出てこないやつに変語尾付けたら印象に残るかな位しか思いつきません

67 :名無しさん:2021/02/08(月) 08:41:45 ID:Jt9uO3eJ0
お腹が出てるとか上腕筋や胸板が分厚いとか頭髪を心配してるとか眉間の皺が消えないとか
本人の行動や生活態度や性格由来の行動や特徴をいくつかキャラに紐付けして機会があるたびにしつこく繰り返すのがいいと思いますよ

68 :神奈いです ★:2021/02/08(月) 09:28:34 ID:admin
牛さん心配症だから若ハゲしてそう
(偏見)

69 :名無しさん:2021/02/08(月) 22:26:28 ID:C/O6ZuIO0
女性って点でかなりハードル高いようにおもえるけど
神さま付きで押し切るのかな。
前世の専門知識がどの程度まであるのかも。

70 :名無しさん:2021/02/08(月) 22:26:35 ID:C/O6ZuIO0
女性って点でかなりハードル高いようにおもえるけど
神さま付きで押し切るのかな。
前世の専門知識がどの程度まであるのかも。

71 :名無しさん:2021/02/08(月) 22:31:44 ID:EaHYEbPG0
デイサービス利用者に笑ったw
この表現上手いなぁw

72 :名無しさん:2021/02/08(月) 22:34:52 ID:acrF0e7h0
ありがとうございます!
AAがないぶん、間をつなぐ描写を楽しく読んでもらわないといけないので、
いろいろひねってます。

73 :名無しさん:2021/02/09(火) 15:10:34 ID:rF8JSvwG0
河伯の巫女4話

「あまり信じたくはなかったのだが、
 青ちゃんに何かが憑いてるのは事実のようだな」

「え、えっとその、ごめんなさい」

「受け答えも七歳には思えん」

 お父様がため息をついています。

「青ちゃん、病気治したり、死人を生き返らせたりできたりする?」

 無茶いわんでください。パパ上。

「ごめんなさい、ちょっと先がわかるだけで……
 私個人は読み書きができるぐらいです」

「その時点で神霊憑きには充分だけどね」

 ほんと、憑いているのが黄河の神様とかならよかったんですが。
 実態は、ただの未来のインドア系引きこもり女ですからね。
 チート? ありませんよ何言ってるんですか。

「ところで青ちゃん、この先はどうなるのだろうかな?」

「うっ……」

 一族皆殺しになります、と言うべきなんでしょうか?
 でも言っちゃったら「予言になって成就」しちゃうのでは……!?
 なんとかそれを避ける方法を考えて、そっちを予言するとか、なんとか……

「ま、まあ、いい……あまり予言ばかりされては気疲れしてしまうからな」

 私が黙り込んでいると、お父様はあきらめてくれたようです。ほっとしました。
 正直、これは迷っています。ずっと迷っています。
 一族皆殺しを避けるにはどうすればいいんでしょうか?
 でも、都合よく歴史を変える方法とか思いつかないですし。
 それにこのパパが独裁者になるのは、あまり想像が……ちょっとつくけど! つくけどそれは多分違うから!!

「失礼、義父殿。招集だぞ」

 そう言って荒々しく入ってきたのは、お姉様の旦那さん、牛輔さんです。
 蜂起の前に黄巾党からは抜けてもらったので、おとがめはありませんでした。
 間一髪でした、セーフ!
 牛輔義兄さんはお手紙を持ってきたようで、手渡されたお父様が読んでいます。
 
「ほうほう、盧植殿が宦官にワイロを払わなかったので前線をクビになったと。
 で、ワシがその後任として黄巾党を攻めろと……」

 ……はい???

「何それ???? 都にはバカしかいねーの?!」

 義兄さん、もっと言ってやってください。

「牛輔……あまり言うな。都には皇帝陛下……聖上がおられるのだ。
 宦官どもが聖上をだましているせいで、政治が混乱しているのだ……」

「だからってメチャクチャすぎんでしょう!?
 何、俺たちって宦官のおもちゃなワケ??」

 えーっと……

「ところで、宦官って何者なんでしたっけ? なんでそんな権力を?」

「ん、小青か。聞いたであろう。
 聖上の近くで嘘ばかりついて私利私欲に走り、政治を壟断しておるのだ。」

「はい、聞きました。
  いやその、なんでそんな人たちが皇帝の近くにいるのでしょうか?」

「陛下とか聖上と呼びなさい、青ちゃん。
 ええっとだね。もともとは皇帝の身の回りのお世話や後宮……
 お嫁さんたちの世話をするための人間でな。
 悪さをしないように、その、えっと」

「ちょん切ってあるんだ」

 言いよどむお父様の前で、牛輔義兄様が、股間の前でチョキをチョキンチョキンとしています。そういえばマンガで読んだ気がしますね……ところでお下品ですよ義兄様。

「宦官は、皇帝陛下の身の回りのお世話をする者たちだから、
 必要ではあるのだが、だんだんと政治に口出しするようになってだな」

「口出しさせなければいいのでは?」

「まったくそのとおりだ」

 ですよね。なんで口出しさせてるんだろう……

「まぁ、昔はな? 忠義心があって、功績をあげた宦官もいたんだがな??
 今はもう本当の悪しか居らん」

74 :名無しさん:2021/02/09(火) 15:12:49 ID:rF8JSvwG0
「うむ。正義の士の言葉は皇帝に届かず、
 さらに”党錮の禁”という事件をおこし、名士や賢者を追放しおった。
 あちこちの高位高官に自分たちの親戚を派遣して
 好き勝手に民を収奪して私腹を肥やしておるのが宦官という連中なのだ」

 うーん……ちょっと、邪悪とか正義とか言われると、
 「本当は違うのでは?」とか思ってしまう私です。
 都合の悪い相手に「悪」のレッテルを貼るのって、歴史物のお約束ですよね。
 うーんでも、たしかに三国志ではそんな感じだった気がするなあ?

「黄巾党についてもだな。
 調べれば、宦官に収奪された貧しい民を、張角たちが騙して戦わせているものだ。
 本来宦官などいなければ、反乱はもっと小さかったかもしれん」

 なるほどー。

「うーん、でもそこまで悪いのがわかってるなら、
 ちゃんとしかるべきところに訴えてクビにしてもらうとか」

「そうなんだけどよ。上奏しても握りつぶされるんじゃ、陛下に届かないぜ?
 直接、文を届ける方法でもあればなぁ??」

「いや、牛輔。伝手はあるんだ。
 袁隗老師……
 朝廷の筆頭大臣である”司徒“の袁隗老師なら、あるいは」

「なるほど! 袁家といえば、大漢きっての名門中の名門!
 そういえば義父上は、昔、洛陽で袁隗様に仕えておられたのでしたな?」

「ああ、まだ若いワシに政治や学問、心構えなどいろいろ教えていただいた……
 ワシのもっとも尊敬する名士だ」

「それならば!!」

 司徒……筆頭大臣ということは、総理大臣みたいなものでしょうか。
 そんな立派な人が総理大臣なのに、
 宦官たちが野放しになっている時点で、期待できないのではないですかね……

「よし、さっそく宦官の悪を告発する上奏文を書こう!!
 黄巾党と戦うよりも、まず諸悪の根源を叩くべし!!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 董卓、上奏して曰く。

 臣伏惟 天下所以 有逆不止者, 各由 黄門常侍張讓等 侮慢天常,
 操擅王命,父子兄弟 並據州郡,一書出門,便獲千金,京畿諸郡數百萬
 膏腴美田 皆屬讓等, 至使怨氣上蒸,妖賊蜂起。臣前奉詔討黄巾賊,將士饑乏,
 不肯渡河, 皆言欲詣京師先誅閹豎以除民害,從台閣求乞資直。臣隨慰撫。
 臣聞揚湯止沸,不如滅火去薪,潰癰雖痛,勝於養肉,及溺呼船,悔之無及

「臣が伏して思いまするに、天下に絶えず叛逆が起こるのは、
 みなみな黄門常侍張譲らが天道を侮って王命に操作を勝手に加え、
 父子兄弟がみな州郡に居すわり、
 ひとたび手紙を出せばたちまち千金を手に入れるという有様で、
 近畿諸郡の肥沃な美田数百万頃が
 みな張譲らの手に落ちているからなのでございます。
 こうして人々の怨恨が募り、妖賊が蜂起するに至ったのであります。

 臣が詔勅を奉じて黄巾賊を討伐せんとしておりますが、
 将兵は飢えに苦しんで川を渡ることを承知せず、
 みな口々に、京師に参詣してまず宦官どもを誅殺し、
 民衆の害毒を取り除いて内閣へ資金を請求したい、
 と申しておりました。臣は兵をなだめているものです。

 湯を持ち上げて沸騰を止めるのは薪を抜いて火を消すほどのことでなく、
 腫れ物を潰すのは痛くとも肉が病み続けるよりはましだ、
 と臣は聞いております。
 溺れてから船を呼び、後悔しても間に合わないのでございます。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 お父様は鬼気迫る表情で上奏文を書き上げて、都へと送らせました。
 さてさて、いったいどうなるのでしょうか。


――――――――――――――――――――――――――――――――

「あーにじゃーーー!!」

 お父様が上奏文を都に送ってからしばらく。
 突然、都で仕官していた董旻おじさんがやってきました。

「兄者。上奏文は却下された……がな?
 悪い話じゃない、上洛して何進大将軍に会ってくれ」

「ふむ!」

 何進???
 何進って、あの、何進……ですか……?
 ……ぱたり。

「お嬢様がまた倒れられたぞー!」

 ど、どんどん……役者が……そろっていきますぅ!

75 :名無しさん:2021/02/09(火) 15:19:28 ID:rF8JSvwG0
スレ3話の小説化してみました。
これで約3000文字。
上奏文は読み飛ばす読者も多いと思うので、
もうちょっと入れる要素あったら入れてもいいかもですね。

76 :名無しさん:2021/02/09(火) 19:16:01 ID:oAe7rnop0
小説乙です
パパ上の皇帝の呼称が皇帝陛下から聖上と言い直しているのに皇帝と皇帝陛下とぶれているのが気になった

77 :名無しさん:2021/02/09(火) 19:37:30 ID:rF8JSvwG0
ありがとうございます!
あー、なるほど。ここはあとでいですさんに方針決めてもらいましょう

78 :神奈いです ★:2021/02/09(火) 19:50:22 ID:admin
           おかみ
最初に皇帝陛下、聖上にして、


   おかみ
あとは聖上に統一しましょう。

これは董卓が皇帝を尊崇しているということを示します。

79 :名無しさん:2021/02/09(火) 19:53:55 ID:rF8JSvwG0
修正しましたー。

80 :神奈いです ★:2021/02/09(火) 20:02:26 ID:admin
ファイルをディスコードかGoogleドライブにあげられませんか。

81 :名無しさん:2021/02/09(火) 20:06:00 ID:rF8JSvwG0
いけますよ。1話ごとに別テキストでよいですか?

82 :名無しさん:2021/02/09(火) 20:09:11 ID:rF8JSvwG0
ディスコにあげました。

83 :神奈いです ★:2021/02/09(火) 20:12:31 ID:admin
ありがとうございます。また修正・追加があったら

#董青ちゃん伝
にお願いします。

84 :名無しさん:2021/02/09(火) 20:17:23 ID:rF8JSvwG0
りょかいです。
simplenoteってアプリで気がついたときに編集、修正しているので、わりと頻繁に細部が変わってます。
何か作業するときは最新のファイルを要求してくだされ。

85 :神奈いです ★:2021/02/09(火) 20:22:23 ID:admin
了解です、本格的に手を入れるときはまたお願いします。

86 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:12:50 ID:clDpwx6ci
最初の一回だけで良いからちょこちょこルビが欲しいなぁってなる箇所が結構あるかなぁ
あと文字に起こされた関西弁を読むとなんかくすぐったくなるけどこれはもう関西人の体質やからしゃあないな……

87 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:16:36 ID:euObh9MH0
ルビについてはスレと同様ルビ振りする予定ですが、
なろう構文のルビ振りはテキストベースだと可読性を損なうので、
あとでまとめて振るつもりで書いてます。

関西弁の文字起こしは大阪弁ジェネレータを参考に自然になるように修正してるのですが、
ネイティブではないので自然に感じるよう指摘もらえるとありがたいです。

88 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:21:04 ID:clDpwx6ci
ルビありがてぇ
関西弁は同じ市内でも結構変わるからこれが正解や!
とまでは出来ないかもしれませんが、それっぽくなるようちょっと後で書いてみます

89 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:33:42 ID:SR/dhqvDi
「ふむ? 命令やて……??」

「命令やと……?」の方がそれっぽいかなと
 ふむ?も「ああ?」とかのがガラの悪い大阪のおっさん感は出るかな


「おかしな話やな、勅命なら郡太守に降りてこないはずがないんやけど。
 ワイらは聞いとらへんぞ」

「おかしな話やな、勅命なら郡太守に降りてこんはずがないんやが。
 ワイらは聞いとらんぞ」

こんな感じかなぁ
他もちょくちょく語尾とか気になる部分はあるけど
そこ削ると見分けを付けるためって目的が果たせなくなるしそこは我慢か

90 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:37:21 ID:euObh9MH0
ラジャー!
手元で修正しました

91 :名無しさん:2021/02/10(水) 11:51:19 ID:SR/dhqvDi
偉そうに指摘して申し訳ない、ありがとうございます

92 :名無しさん:2021/02/10(水) 22:27:54 ID:IpS+eV040
久しぶりに来たらいですさん復帰してますやん!
青ちゃんの字の木鈴って十二国記を思い出すな

93 :神奈いです ★:2021/02/14(日) 21:10:46 ID:admin
董卓: ワシ、老人口調。じゃ、のう。
牛輔: ボク、若者口調、丁寧。
李カク: オレ、小生(対目上)、乱暴口調、軍隊口調(対目上)
郭シ:  ワイ、小官(対目上)、関西弁(関中なまり)

青ちゃん: 私、丁寧口調。です、ます。


94 :名無しさん:2021/02/15(月) 03:14:03 ID:9vpasCIx0
関西弁武将この先増える予定あるんやろか
おるんやったらまた関西弁の中でも差別化はからなアカンかも知れんな

95 :名無しさん:2021/02/15(月) 03:35:21 ID:/h/VonNp0
了解です。
こないだの地震以降ネットの調子がよくなく、修正はすこし時間開けて行う予定です

96 :名無しさん:2021/02/15(月) 12:57:52 ID:efZSOJsP0
ネット環境回復の兆し
口調修正作業はじめますねー。

97 :名無しさん:2021/02/16(火) 09:17:52 ID:CmMYxTVn0
今回もなろうに投稿する予定だっけ?

98 :神奈いです ★:2021/02/16(火) 13:16:00 ID:admin
>>97
> 今回もなろうに投稿する予定だっけ?

どこがいいですかね?おすすめあります?

99 :名無しさん:2021/02/16(火) 13:24:02 ID:CmMYxTVn0
なんやかんやでなろうと笛以外は開拓してないなぁ……
カクヨムはどうなんだろ、UI改善した?

100 :名無しさん:2021/02/16(火) 13:28:12 ID:8Svr4FMZi
なろうは今結構長いこと「もう遅い」系がランキング上位独占してますね
ポツポツ環境変わりそうな空気して来てますが

ただ今ランキング上位にいる「もう遅い」系って
一昔前からあった居なくなって初めて有り難みがわかる系とちょっと毛色が違うんですよね

あくまで主人公に非がない状態だからスカッとしたのに
今ランキング上位にいるのは会社から依頼退職打診されたから情報漏洩させまくってやった
みたいな感じで主人公に好感持ちにくい奴が多い

101 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:00:31 ID:+sec4koS0
河伯の巫女5話

「ああ、天は黒く、地は黄色。宇宙はとっても無限大ですねえ。
 黄土高原ってほんとうに黄色いんだ」

 お父様の前ではじめて読んだ、書物の一節そのままの風景が広がっています。
 私の記憶にある土って、基本的に茶色いものでしたけど。

 私はいま、馬車に乗って、漢王朝の都、洛陽へ向かっています。
 まわりはお父様の兵隊が固めているので、とっても安全です。
 ちなみに洛陽は、お父様のお城がある安邑県から南東に進み、黄河を渡った南側にあります。

 中国の地図ってなんとなく覚えてますか?
 黄河って、中流のあたりで、北の方にぐねぐねって蛇行してますよね。
 なんで蛇行してるのかっていうと、このあたりに「黄土高原」っていう障害物があるからなんです。
 この黄土高原の黄色い土が流れ込んでいるから、黄河は黄色いのだそうで。
 スケールの大きな話ですねえ。さすが中国です。
 
「青ちゃん、青ちゃん、なんともないかね?」

 馬車に揺られながらぼけーっと大地を眺めていたら、隣に座っている董卓パパが、心配して声をかけてくれました。

「ええ、まあ、とっても揺れますけど……
 遠くを見ていれば酔わないはず……うっぷ」

 そうなんです。この馬車めっちゃ揺れるんですよ。
 地面のデコボコを正確にお尻に伝えてくれる超敏感設計です。
 ゴムタイヤなんかないですし、当たり前といえば当たり前なんでしょうけど……正直ちょっときついです。

「むう、無理せずに安邑に残っていればよかったと思うんじゃが」

「いいえ、父上、これは大事なことなのです。ぜひお供を」

 だって皆殺しにされたくないですから。

 マンガのうろおぼえなんですけど、お父様が会いに行く「何進」って人が重要人物なんですよ。
 たしかこの何進さんが宦官を殺そうとして逆に殺され、ブチ切れた何進の部下が宦官を皆殺しにして、
 それでなんやかんやあって董卓お父様が漢の政権を握ることになるんです。
 政権を握ったお父様は暴虐非道のかぎりを尽くし、皇帝を殺害する大罪を犯し。
 最終的に暗殺されて、一族もそろって皆殺しにされるわけですね。

 なので、何進さんに会いに行くこの旅は重要イベントのはず……!
 正直どうやって殺されないようにすればいいか、作戦みたいのは全然思いつかないのですが。
 なにか思いついた時に、近くにお父様がいなくて手遅れっていうのは嫌じゃないですか。
 だから私もおねだりして、ついていくことにしたのです。

「まあ、予言だというならやむを得んが……
 洛陽の都で巫女とか予言とか言うでないぞ?
 うるさい儒者に見つかったら、何を言われるか分からん」

「はい、お父様。心得ています」

 後漢王朝というのは、初代皇帝が予言を利用して皇帝になったこともあって、国が管理していない予言にうるさいんだそうです。
 予言って国で管理するものだったのかぁ。たまげたなあ。
 まあそんなわけで、巫女とか神憑きとかいうのも外聞がよろしくないのだそうです。
 田舎では、巫女さんが大手を振っておまじないとかやりまくってますけどね!
 面倒なことになりそうなので、都では静かにしていようと思っています。

「主公、お話し中、えろうすんまへん。お客さんのようですわ」

 郭隊長が馬車に馬を寄せてきて、そう言いました。
 郭さんが指さす遠く先には、うっすらと土煙が上がっています。騎馬の群れ、でしょうか?

「おお、南匈奴の部隊じゃな。ではここらで休憩としよう」

 お父様はすぐに郭隊長に命令を出して、全軍を一時停止させるようです。
 兵隊さんたちが野営の準備を進めていると、立派な服装の騎馬武者が、お供を引き連れて近づいてきました。

102 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:01 ID:+sec4koS0
「オオ、董タイシュ! ワレラガ盟友!!」

「おお、右賢王殿下。こたびの出馬、援軍ありがたし」

 さっそくお父様と直接挨拶をしています。偉い人のようですね。

「ん、青は聞いていないのかい?
 南匈奴は異民族だけど、皇帝陛下に忠誠を誓っているからね。
 反乱討伐に援軍を出してくれることになったんだよ。
 あの方は匈奴では、単于の次に偉いんだ」

 たしか単于というのは匈奴の皇帝でしたね。つまり副皇帝ですか。大物じゃないですか。
 牛輔義兄様によると、あの方のお名前は「於夫羅」というそうです。
 そういえば三国志ゲーにそんな武将がいたでしょうか?

「それでは右賢王殿下。話はあとにして、まずは歓迎を」

「オオ、ソレイイネ!」

 於夫羅さんが匈奴の騎馬部隊のほうに帰って行き、お父様の兵隊さんたちがテントを張って煮炊きをしはじめました。
 ……あれ? いま兵隊さんたちが運んでいるの、お酒が入った甕じゃありませんでした?
 いま行軍中ですよね??

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「「ワハハハハ!」」

 宴会がはじまってしまいました……信じられません……

「農民ノ反乱ナゾ、ワガ騎兵ナラバ、イチゲキゾ!! 敵ノ大将ガ相手トキイタ!」

 宴会場では、両軍の将兵が飲むや喰うやの大騒ぎ。
 私は、お父様の言いつけで天幕の裏手に隠れているのですが。
 布地一枚隔てた向こう側で、於夫羅さんが景気のいいことを言っています。

「……え、張角ってたしか籠城してたと思うんじゃが……」

「エ……?
 マテ、マサカ城攻メニ匈奴ヲ使ワナイヨナ?」

「あ、いや、さすがに都もそこまで馬鹿ではないと思うが……」

「……宦官どもは、それすらわからないかもしれませんね……」

 於夫羅さんと、お父様と牛輔義兄様が引いているのが天幕越しでも伝わってきます。
 っていうか、騎兵は攻城戦が苦手だなんて常識ですよね?
 ゲームでも、はしごとか破城槌とか攻城櫓で攻めるんですよ?

「ま、まあ、飲みなされ。話題を変えよう……」

 私もそれが良いと思います。

「ソウダナ……エット、ソウイエバ、董タイシュの娘ハ神童ト聞イタゾ」

 あれ、こんどは私の話題ですか?

「いや、お恥ずかしい。少し字が読めるだけで、噂ばかり先行してですな」

「オレノ部民ガ世話ニナッタト聞イタ。優シイ娘、シカモ賢イ、トテモイイ」

「いや、まったく! 自慢の義妹ですよ!」

 なんで牛輔兄が威張ってるんですか。

「匈奴に嫁に出スツモリハナイカ? トテモ大事ニスル、キット賢い子を産ム」

「なっ」

 まって、私まだ7歳!?

「おお、大変残念ですが、義妹は漢の宮廷に出すことになっているんです」

 でかした義兄様!

「そ、そうそう。聖上にお仕えする身なので、残念じゃが」

「皇帝じゃダメカ。ワカッタ、トリアエズ飲もう!」

 せーーーーふ。せーふです。
 危うく7歳で、相手も知らないまま嫁に出されるところでしたよ。
 牛輔義兄様は、ご褒美に肩でも揉んであげましょう。

 ですが、なんか勝手に宮仕えルートが決められつつあるような気がします。
 そもそも後漢の宮廷とか死亡フラグのバーゲンセールじゃないですかね……?
 自分の未来に不安をおぼえながら、お父様たちの雑談を聞き流していたのですが……

103 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:24 ID:+sec4koS0
「……あれ、なんで女の子がいるんだ?」

「きゃっ!?」

 びっくりした! だ、だれですか?
 天幕のなかに潜り込んできたのは、男の子でした。
 毛皮の服を着ています。匈奴の子でしょうか?
 大人の匈奴よりずいぶん小柄です。小5か小6くらいに見えますね……
 って、この子弓矢持ってるじゃないですか!!

「え……えっと、いたらダメですか?」

「いや、ダメじゃないけど。戦争に行くのに小さい子がいるのはどうかなって」

 外見は匈奴っぽいですが、流ちょうに漢語を話す子ですね。

「失礼ですが、あなたも小さいのでは?」

 ちょっと反論してみたり。

「豹はもうオトナだ。弓も引けるし、馬も乗れる……
 あ、そうだ。イタチを見なかったか?」

「え? ヒョウとイタチがいるんですか!? どこに……」

「いや、こっちに逃げてきたから……あっ、いた!」

 いた、と言った時には、その子はとっくに弓矢を構え終わっていて。
 テントの裏から何かが駆けだしたと思った瞬間、男の子の矢が、ふわふわの何かを貫いていました。
 なに、これ……死んだ? 死んだよね!?
 えっと……と、とりあえず褒めておこう!!

「わぁー、すごーい」

 思いっきり棒読みになってしまいましたぁ!?

「見ろ、いいイタチだ。暖かい帽子になる」

 ふわふわの何かはイタチでした。男の子の放った矢に貫かれ、どくどくと血を流しながら絶命しています。

「どうだ、弓もうまいしオトナだろう」

「そうですね、さすがです」

 なるほど、狩猟民族だからそういう価値観なんですね。狩りができるのが大人だと。

「戦争に行くのに、女の子ひとりだと危ないぞ。親は?」

「あそこで飲んでいるのが父上ですね」

 私はそう言って、天幕をちらりとめくります。

「あれは漢の将軍……あ、董太守の娘?」

「はい」

「……なるほど」

 何がなるほどなんでしょうか。

「そっか、年の割に落ち着いてて賢そうだと思った。
 豹はリュウヒョウという。オフラの子だ」

「なるほど」

 匈奴の副皇帝の息子さんでしたか。そういえば子供にしては身なりがいいですね。

「お父上と違って、名前の響きが漢風ですね?」

「おう、文字を勉強したからな!」

 文字を勉強すると名前が変わるんですか?
 うーん、漢文化に適応しようとしているってことなんですかね?

「そっか、あの董太守の娘か……」

 リュウヒョウ君はそういって、私のことをじろじろと見ています。私、なにかしましたっけ?

「そうだ、このイタチをあげよう」

 リュウヒョウ君は刺さった矢を引っこ抜いて、獲物のイタチを差し出してきます!
 っていうか死体ー!?

「ま、まだ血が滴ってますし!? 使い方もわからないので要らないです!!」

「え、血がダメ? 血抜きするよ……?」

 そういう問題ではなく!

「ちょ、ちょっとナマナマしいので……」

「そっか……」

 リュウヒョウ君、シュンとしてしまいました。
 って、これ私悪くないですよね!?
 血まみれのイタチとか本当に要らないです!!!

104 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:01:51 ID:+sec4koS0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その日はそのままお休みになり、翌日から、匈奴のみなさんと一緒に行軍することになりました。
 その途上で気づいたことがあります。

「よく見ると、当家の騎兵も、匈奴のみなさんとあまり変わらない見た目ですね?」

 毛皮とかつけてますし。

「ああ、それは主公を慕う“羌族”の騎兵です」

 そう教えてくれたのは李校尉でした。
 羌族というのはここよりもっと西の方に住んでいる遊牧民で、傭兵みたいなこともしているのだそうです。

「主公は西域での戦いに長く従事しておられたのですが、そのなかで羌族や匈奴を心服させて部下にしておられるのです。なんと素晴らしいお方でしょうか」

 そうなんですか。董卓パパって魔王って認識だったんですが、異民族から結構人望があるんですね。
 匈奴の王様とも仲良しでしたし。
 揺れとお尻の痛みに耐えながらすすんでいくと、正面に海が見えてきました。

「おお、お嬢様、河水ですぞ!」

「え、河……? 本当だ、黄色い!?」

 海かと思うくらい大きな河、黄河にはじめてつきました。
 ……何も感じませんけどね。巫女として。
 黄河のほとりについてしばらく、於夫羅さんたちが近づいてきました。

「董太守! 匈奴ハ河を渡らず、コノママ邯鄲マデイク!」

「ああ、ワシらは河を渡って一度洛陽に行くのでな。また戦場で会おう」

 匈奴さんたちとも一度お別れのようですね。

「太守の娘ー!」

 そう思っていたら声をかけられました。先日のリュウヒョウ君ですね。

「あ、はい。なんでしょう」

「えっと、ナマは嫌そうだったから、帽子にした。暖かいぞ」

 そうして彼が差し出してくれたのは、いかにも暖かそうな毛皮の帽子です。
 もこもこの尻尾がぷらーんと垂れ下がっていて可愛いですね!

「あ、くださるんですか、ありがとうございます!」

 春が近づいてきたとはいえ、まだまだ寒いですからね。素直に嬉しいです。

「おお、受け取ったか!!」

「ありがとうございます、豹さん。
 あ、私、太守の娘じゃなくて、ちゃんと“青”って名前があります」

「青、青か! いい名前だ!!」

 贈り物を受け取っただけで、こんなに喜んでもらえるなんて、こっちまで嬉しくなります。
 ニコニコの顔がかわいいですねー。きっと女の子にモテモテなんでしょう。

「ありがとうございます。豹ってのもカッコイイと思いますよ?」

「そ、そうか……また迎えにくる!」(中黒傍点)

 豹君はそういって走り去っていきます。
 ……ん、ちょっとまった。

「ちょっと、いま何て言っ……」

「お嬢様! 船が出まっせ! 急ぎまへんと!」

 ああもう、郭さんちょっと待ってくださいよ!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 結局豹君はつかまらずじまいで、黄河を渡る船に乗り込むことになってしまいました。
 ま、まあ気のせいですよね? そもそもまだ二回しか会ってないし! 好かれるようなこともしてないし!

「いやぁ、あのあとも青ちゃんを嫁に欲しいってうるさくてのう」

 お父様は黙っててください!
 気のせいに決まってますから!!

105 :名無しさん:2021/02/17(水) 18:03:24 ID:+sec4koS0
スレ4話を小説化してみました。
モノローグをかなり追加しています。青ちゃんの内心にかなり踏み込んでいるので、今後の展開的にまだ明かしたくないところ、意図と違うところなどありましたら指摘くださいませ。

106 :名無しさん:2021/02/19(金) 23:24:15 ID:JwfMBrRe0
>私はいま、馬車に乗って、漢王朝の都、洛陽へ向かっています。
ちょっと読点が繋がってるのが気になるかな

              みやこ
私は今馬車に乗って、 洛陽へ向かっています。 

とかのほうがすっきりするかも

107 :名無しさん:2021/02/20(土) 01:02:09 ID:ZxQDv8RP0
指摘ありがとうございます。たしかに読みにくいので調整してみますね。

108 :名無しさん:2021/02/20(土) 02:40:15 ID:iWbaTjMW0
ご指摘の部分以外も会話の流れがとっちらかっていたので、こんな感じになおしました。

――――――――――――――――――――――
 お父様の前ではじめて読んだ、書物の一節そのままの風景が広がっています。
 私の記憶にある土って、茶色いものでしたけど。真っ黄色ですよ。

 中国の地図ってなんとなく覚えてますか?
 黄河って、中流のあたりで、北の方にぐねぐねって蛇行してますよね。
 なんで蛇行してるのかっていうと、このあたりに「黄土高原」っていう障害物があるからなんです。
 この黄土高原の黄色い土が流れ込んでいるから、黄河は黄色いのだそうで。
 スケールの大きな話ですねえ。さすが中国です。

 さて。私はいま、漢王朝の都“洛陽”へ向かう馬車に揺られています。
 まわりはお父様の兵隊が固めているので、とっても安全です。
 ちなみに洛陽は、安邑県から南東に進み、黄河を渡った南側にあるんですよ。

109 :名無しさん:2021/02/20(土) 20:54:10 ID:oO4d6F7x0
ああ、すっきりして分かりやすいですね。
いいと思います。

110 :名無しさん:2021/02/21(日) 11:10:35 ID:YeKRmTd30
小説乙
修正乙ですよ

111 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:45:37 ID:V01IL8Wh0
河伯の巫女6話

 まるで海のように広大な黄河を渡り、私たちの馬車は洛陽に到着しました。
 都の中に入ると、多くの人が通りを歩き、商人が呼び込みの声を上げています。

「馬車がくるぞー! 道をあけろー!」
「董の旗? どこの董家だ?」
「たぶん、河東郡の董太守の馬車じゃないか」

 通りの人混みが割れて、馬車が通れそうなスペースが空きました。

「はぁ、さすがに都は人が多いですね」

 品川駅の1/10くらいですかね?

「むむ……青ちゃんは全く動じておらんな。
 ワシは初めて都に来た時、都城の壮麗さ、人の多さに呆然としたものじゃが……」

「我が義妹は大物ですねえ、義父上」

「牛輔よ。ワシは董旻とともに袁隗老師のもとへ参り、今後の相談をしてくる。
 荷馬車と青ちゃんは……旻?」

「そうですなあ。陛下への献上品や、お歴々への進物を積んでおりますので、宮殿の門番に預けておきましょう。なぁに、知り合いです」

「かしこまりました、義父上、叔父上。荷馬車と青は僕が責任を持って」

 董卓パパと董旻おじさん、牛輔兄さんが段取りして、そういうことになりました。
 馬車も荷馬車も、さっそく門の内側に引き込まれます。話が早いですね。

「ほうほう、河東ではそんなことが」

「ボクとしても最近の洛陽のことが聞きたいのですが……そうだ、酒がありました」

 門番さんと話し込んでいた牛輔義兄さん、積み荷から酒の甕を持ちだしていったんですが……えっ、飲むの? うちの男性陣は飲まないと死ぬんですか?
 失礼がないように気を張っていたのが馬鹿らしくなってきました。こうなったら、馬車でゴロゴロさせてもらいます。
 っていうか長旅の疲れでとても眠いです。揺れない床がこんなに気持ちよいとは。
 義兄さんと門番さんも詰め所に引っ込んでいきました。いいや、もう寝よう……

「兵隊よ。董氏からの献上品の馬車はどこか」

「董氏の馬車……あれじゃないですか?」

「ふむ、董の旗があるな。董皇太后の仰せの品はこれに違いなし。運び込め」

 ふあぁ……せっかく気持ちよく寝ていたのに、外が騒がしいですね。
 董皇太后? 誰でしょうか……
 って、馬車が動き始めましたよ!
 外をのぞいてみたら知らない人ばかりだし! 義兄上! 義兄上はどこ!?

―――――――――――――――――――――――

 どこかに引かれていく馬車のなかで、あわあわと慌てていると。
 周囲の景色がゴージャスになっていきます。
 これって絶対宮殿の中ですよね、しかもかなり中心に近そうですよ?

 ……あれ、もしかしてこれって、宮殿に忍び込んだことになっちゃうのでは?
 牛輔義兄さん、はやく帰ってきて!

 そうやってこそこそと周囲を伺っていると、馬車が止まったのですが。
 んんん?
 宮殿のものすごく広い庭の一角に、妙な場所が……
 なんか、出店のようなものが並んでいるんです。

「かんざしー、かんざしはいらんかねー。
 櫛や紅もあるよー」

「こちらは絹の帯がございますよー!」

 ええっと、めちゃくちゃ賑やかに物売りをしているのですが……
 宮殿ってそういう場所でしたっけ?
 もっと厳かで……ものものしくて……
 ありえない光景に私が混乱していると、なんか派手なオッサンと子供がやってきました。お供をぞろぞろ連れていますね。

「ふははは。どうだ、朕の作った市場は」

「あ、はい、父帝陛下の見込み通り、とてもにぎわってると思います……」

「ははー、皇帝陛下、万歳、万歳、万々歳」

「ああ、よいよい。商売を続けろ」

 ええええ? この派手なオッサンが皇帝!?
 市場の商人も、女官たちも、そろってオッサンに土下座してましたが。オッサンのお墨付きが出たので物の売り買いに戻っていきます。

「これは百銭!! こっちは二百銭でいいよ!」

「高いわよ! まけてよ!」

 さっき見た洛陽の市場と変わらない雰囲気です。
 オッサンはめっちゃドヤ顔してます。
 子供のほうは、なんか引いてませんか? 関西のオバチャン軍団にロックオンされた少年みたいになってますけど。

112 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:46:07 ID:V01IL8Wh0

「……弁よ、女官どもが騒いでいるからといって、びびってどうする……商売とは騒がしいものなのだ」

 それにしても声でかいですね、このオッサン。
 ちょっと離れた場所にいるのに、よく聞こえます。
 あ、あの子の名前は弁っていうんですね。

「あ、はい、すみません陛下。
  びびらないようにいたします」

「ううむ……よし、銭をやるから買い物してこい」

「え?!あ、は、は、はい!?」

 あ、これ記憶にあります!
 子供にはじめてお買い物させるテレビ番組だ!
 弁くん、どうしたらいいかわらないみたいで、めっちゃキョドってますが……

「陛下、前線から使者が参りました」 

「む、そうか、では聞こう」

 あ、皇帝さん帰っちゃった。
 弁くんは、そのあとも困った顔で市場をうろうろしていたのですが……

「はぁ……疲れた」

 なんでこっちに来るんですかー!?

「あれ? このお店は初めて見るな。
 ねぇ、何を売ってるの?」

 居ません居ません、留守ですよー?

「ねえ、馬車の奥にいる人ー?」

 なんでバレてるのーーーー!?
 ええい、こうなったらやむを得ません!

「あ、あの、その……殺さないでくださいっ!?」

「誰が殺すのさ! 怖いこと言わないでよ!」

 あれ、もしかしてセーフですか?

「ええっと、董の旗?
 ということは、協のところの子?
 ああ……だ、大丈夫だよ殺さないよ……僕は」

 やっぱりアウトじゃないですかー!

「あ、あなた様以外に誰が殺すのですか」

「な、ないよないよ、大丈夫!
 母さんは毒殺したりしないから!」

 やけに具体的ですね???

「その、協様という方は存じ上げないのですが、
 董家と関係があるのでしょうか?」

「何言ってんの。
 弟はお婆様が手元に置かれてるじゃないか。
 董家で面倒をみてくれているんでしょ?」

「そうだったんですか、失礼しました」

 うちって、皇帝の息子さんを預かっていたんですね。知りませんでした。

「それはさておき、僕は、何か珍しいものを買わないといけないんだ。
 陛下の命令だからね。何か売って?」

「陛下のご命令ですか」

 でも、ここにあるのって全部贈り物ですよね。
 ええっと、何か売ってもいいものは……

「あ、その帽子珍しいじゃない。
 いくら? 1金で足りる?」

 そういって弁くんが指さしたのは、豹くんがくれたイタチの帽子です。 
 むぐぐ、これはこれで気に入ってるのですが……
 それにしてもむちゃくちゃな値段つけますね。1金って、たしか銭1万枚ですよ。
【ここに銭1万枚の具体的な貨幣価値を追加】

「すみません、これは売り物ではなくて……」

「いいじゃん、売ってよ」

 むかっ。

「ダメです!!!!」

「ひっ?!!……ご、ごめんなさい……」

113 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:46:39 ID:V01IL8Wh0

 ……あ、ああーーっ!?
 ひょっとして、王子様を怒鳴りつけちゃった!?

 だ、だってしょうがなかったんです!
 前世で、おじいちゃんにもらった房飾りを、意地悪な男子にとられたときの流れとそっくりで!
 ひ、人を呼ばれたらどうしよう、死刑!?

 よく見たら弁くんパニクってますね!
 正気に戻る前に、何か替わりのものを……
 ん? これは……と、とりあえずこれでいいや!

「あ、あのう、よろしかったらこれ……数独です」

 巫女おばあさんの家で完成させた、9×9の数独、巻物に書き写しておいたんです。
 巫女おばあさんの家では壁に飾られてたし、とりあえず珍しい飾り物ってことでどうでしょう?

「あ、うん。これは変な図画だね? じゃあお金」

 うわぁ。
 銅銭が大量に連なった束をもらっちゃいました。
 床に置いたら「ゴトリ」って音がしましたよ。
 あきらかにもらいすぎな気がしますが、とりあえずもらったものは受け取りましょう。怒鳴りつけた件を蒸し返されたらマズいですからね。

「なんで、宮殿のなかに市場があるんだろう……」

「あれ、知らないの?」

 ついつぶやいてしまった私の独り言に、弁くんはエッヘンと胸を張って答えてくれました。

「陛下が偉大だからだよ?」

 アッハイ。
 しかしこの王子様、なんか弱気だったり強気になったり極端ですね。

「陛下はね、政治を立て直すためには銭が大事だと思っておられるんだよ。だから銭のことを学ぶために市場を建ててくれたんだ」

 なるほど。

「さすが陛下というべき壮大な計画ですね」

「朝廷の財政は厳しいからね、高官や大臣に任命するときに銭をとったりして、宮廷の修繕費とか今回の反乱の軍事費とかにあててるんだよ」

 ほうほう。

「あなた様もお詳しいですね?」

「陛下から学んでるからね!」

 そういって弁くんは、またエッヘンと胸を張ってくれました。
 ……んん? あれ、おかしいな。

「でも、そもそも朝廷は税収を集めていますよね。
 本来の税収はどこへ??」

「陛下は、夷狄戎蛮対策にお金がかかるんだって言ってたよ」

 夷狄戎蛮……ようするに異民族ですよね。
 でも、そんなに異民族って攻めてきてますっけ?
 むしろ匈奴とは仲いいですよね。

「あ、しまった。陛下に、買い物できましたって報告しないと。じゃあね? おチビちゃん」

 弁皇子は、巻物を抱いて去っていきました。
 それにしてもおチビちゃんって!
 ……おチビちゃんか。たしかに。

―――――――――――――――――――――――

114 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:47:02 ID:V01IL8Wh0
「牛輔ぉぉぉ!!!!!」

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 そのあとお父様が、うちの馬車が宮中に運び込まれてしまったことに気づき、取り戻してくれました。私ごと。
 役目を放り出して酒盛りしていた牛輔義兄様が、お父様に絞られています。
 同情心はまったく湧いてきませんね。

「これこれ、卓君。
 せっかく穏便に済ませておるのだ」

「袁老師! そ、そうでしたな……
 青ちゃん、無事だったかい?」

「ハイ、ナニモナカッタデス」

 陛下と皇子様に会ったとか言ったら、絶対に穏便に済まないよね……お口チャックです。
 そして、お父様が恐縮してる相手が、袁隗さん。
 穏便に私を回収するために、いろいろ手を尽くしてくださったのだそうです。
 顔中しわだらけで、口調はおだやかなのに、妙な威圧感を放っています。
 この人が漢王朝の総理大臣かあ。

「では、卓君には中朗将の任命があるからな。
  ちゃんと銭を陛下に収めるように」

「賊の討伐のための任命なのに、官職を売買するようなことはよろしくないとは思いますが……」

「これは聖上の方針でな」

「かしこまりました、袁老師」

 任命するときに銭をとるって話は、弁皇子から聞いてましたけど……
 え、何? パパからもカネとるの?
 反乱軍討伐を命令しておいてカネとるんですか?

「大丈夫じゃ、今回は能力を評価しての抜擢じゃから、安くなっておる」

「ありがとうございます……」

 そういう問題なの!?
 皇帝にお金がないのはわかりますけど!
 ぜったい変ですよね!?

「あとは、宦官にも礼金が必要じゃな」

 ええええええ?

「手持ちがあまりないのですが……」

「少し貸しておいてやろう」

「……ありがとうございます」

 だめだ、なにがなんだかわかりません……
 頭がクラクラしてきました……
 
―――――――――――――――――――――――

 洛陽での用事がすんだので、わたしは董家の部隊といっしょに、洛陽の都を離れます。

「おのれ宦官どもめ……
 黄巾賊の討伐が終わったら、見ておれ」

「なんで討伐にいく父上が、皇帝陛下にも宦官にも、お金を払わないといけないのですか……それも、借金までして」

 一晩考えましたが、まったく納得できません。

「大丈夫さ、小青。軍団長に着任すれば軍資金が豊富に手に入るから、借金なんかすぐ返せるよ」

「なるほど、それなら安心……んんん???」

「いや、牛輔。軍資金に手をつけては兵が飢える。
 せめて戦利品でまかなえたらいいんじゃが」

 ……

「何か、ものすごく変ですよね!?」

 なんで、討伐に使う軍資金や、敵から奪った戦利品を、軍団長がチョロまかすことが前提になっているんですか!

「青ちゃん、悲しいことだが。戦争をすればするほど、前線の将軍と、それと結託している宦官にカネが流れ込む仕組みになっておってな……」

「僕らの故郷の涼州なんて酷いものさ。脈絡もなく異民族にケンカをふっかけては、無意味な遠征を繰り返すんだ。
 そんな将軍が入れ替わり立ち替わり着任して、戦争ばっかりしているせいで、涼州はボロボロになりつつある……」

 うへえ。

「このままでは涼州は滅ぶ。全て宦官のせいじゃ」

 えっとつまり……
 将軍と宦官のカネ稼ぎのために、無駄な遠征を繰り返してるせいで財政がボロボロで。
 そのボロボロの財政を立て直すために、皇帝が直接ワイロをとる。
 任命された将軍とか役人は、払ったワイロを回収しなきゃいけないわけで……
 そのツケって……全部民衆や下っ端の兵隊にいってるのでは?

 ……ダメだこの国。誰かがなんとかしないと……

115 :名無しさん:2021/02/23(火) 22:47:33 ID:V01IL8Wh0
スレ5話目を小説化してみました。

116 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:00:35 ID:k+OHsqFn0
河伯の巫女7話

 勝ってくるぞと勇ましく。
 黄巾討伐の将軍に任命された董卓パパが、はるか東の冀州へ出陣して四ヶ月がたちました。
 私ですか? もちろん我が家、安邑県のお城にいますよ。かよわい娘ですから。
 そしてお父様はといえば……

「皇甫嵩のクソボケえええええええええ!!!!」

 私の目の前。安邑県のお城で荒れまくってます。
 え、なんで董卓パパがここにいるのかって?
 ……二ヶ月でクビになったからです。将軍を。

「父上。謹慎中ですので静かになさってください。
 せっかく袁瑰様の手配で、おとがめなしになったのですから。暴れてるとか宦官に聞かれたら」

 前倒しで一族皆殺しとか嫌ですからね?

「うぐ……そうじゃな青ちゃん。
 ……しかし、青ちゃんは腹は立たないのか」

「農民殺して功績誇ってもしょうがないって、仰ってたのは父上です。むしろ、あんなことしなくて済んでよかったです」(中黒傍点)

「まったくじゃ。10万も農民を殺して死体を積み上げて、アイツは何を考えているのか……」

 ほんと、なんであんなことになったのですかね……
 ついこのあいだまで翻弄されていた、戦場での出来事に、私は思いをはせていました……

―――――――――――――――――――――――

 都の北東にある、冀州。鉅鹿郡の広宗県というところ。ここに黄巾党の本拠地があります。
 ここを攻めていた将軍さんが解任されたので、かわりの将軍として董卓パパが赴任したわけです。
 ここにはお父様の私兵と、もともと展開していた数万の漢王朝正規軍。そして都へ行く途中で会った、匈奴のみなさんもいます。
 この軍勢で、籠城している黄巾党の主力部隊を包囲しているわけですね。

「ヤッパリ城攻メじゃないか……匈奴に何をしろと」

 そう頭を抱えているのは、匈奴の副皇帝、右賢王の於夫羅さんです。ほんと、何をしろと。

「地形と部隊配置の調査が終わりました」

「李校尉、ご苦労。どれどれ……ううむ、盧植将軍の包囲は完璧ではないか。弄るところが無いのう」

 李校尉が持ってきた布陣図を見て、お父様が感心しています。

「主公。皆さん雲梯やら井楼を一生懸命作っとる。丁度ええんで、このままにしときますぜ?」

「城攻めの準備も着々と進んでおるじゃないか……ワシらがすることは何もないぞ??」

 雲梯とか井楼というのは、たしかゲームに出てきた攻城兵器でしたね。郭校尉の報告も朗報のようです。なぜ盧植将軍を解任したんですかね。

「うーん、ウマで城壁上れるかな?」 

 何言ってんですかこの子。トンチキなことを言い出したのは於夫羅さんの子、私にイタチの帽子をくれた匈奴の劉豹くんです。

「やめてください。死んでしまいますよ」

「心配してくれるんだ!」

「いや、知ってる人ですし」

 軍議なんてちんぷんかんぷんな私たち子供衆が、くだらない話をしているあいだに、お父様は戦場の把握を済ませたようでした。

「ふむ、敵は張角率いる黄巾の本隊。盧植将軍が上手く追い込んだおかげで、広宗の城には不相応なほどの大軍が籠ってしまっておる。
 準備をせずに攻めては被害が出るばかりじゃな。
 むしろ兵糧攻めにしつつ、じっくり城攻めの準備と訓練をし、敵の士気が下がった時機を見計らって止めをさすことにしよう」

 ふむふむ。

「お父様、前任者さんは、攻めなかったからクビになった……という建前でしたよね」

 実際には、戦場の視察に来た宦官に、ワイロを払わなかったからだそうですけど。

「大丈夫じゃ青ちゃん。そこは袁隗様に朝廷内で説明してくれるように頼んである。“城攻めは時間がかかります”とな。
 とにかく今回は、妖言して人を惑わす張角が悪いのであって、集まっているのはもともと宦官にいじめられて苦み、騙された農民たちじゃ。
 そんなのを無理に攻めて殺すより、できるだけ降伏させたい」

「なるほど」

 立派な方針だと思います。これなら、董卓パパが魔王化することもないでしょう!

「董将軍、俺たちドウスル。城攻めスルカ?」

「いや、右賢王殿には、補給遮断をお願いしたい。
 北にある下曲陽県に、黄巾の別働隊が展開しておる。こやつらが、敵城へ物資を運び込めないようにして欲しいのじゃ」

「襲撃任務はトクイだ。マカセロ!!」

 騎兵の常道ですね! パパは名将なのでは?

117 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:01:49 ID:k+OHsqFn0

「だが、その前に、盧植将軍の元部下を集めよ。
 宴会で懇親を深め、連携を強めるとしようか」

「拝命! 宴会大好きです!!」

 李のオッチャンが大喜びで駆けていきました。
 また飲むのか!!

「小青、わかってないね」

 また宴会かとげんなりしていたら、牛輔義兄様にツッコまれました。

「いいかい、戦争でいちばん大事なのは、人心の統一なんだ。懇親を深めて、全軍が一体となって動けるようにならないと、戦いには勝てない。
 戦争はただ武器を振るうだけじゃ駄目なんだよ。心をまとめて、人を見ないとね」

 なんかいい話っぽいことを言ってますけど、ついこのあいだ酒飲んで大失敗したこと、私は忘れてませんからね?

―――――――――――――――――――――――

「「ワハハハハハ!」」

 というわけでパパ上は、軍の幹部を集めて本当に宴会をはじめてしまいました。
 私は当然参加しません。7歳ですので。

「青、宴会出ないのか?」

「幼女に何を言うのですか」

 匈奴の豹君も宴会に出ない組のようです。まあ、いまあのテントの中でワーワーやってるのは、部隊長や将軍クラスの偉い人ばかりですしね。

「ああ、匈奴のお坊ちゃん。
 小さいとはいえ、あまり他家の男性が女性に口を利くのはよろしくないのでは」

 今回は前の宴会とは違って、李校尉が私の護衛についてくれています。そのせいでお酒が飲めない李のオッチャン、ちょっと可哀想かもしれません。

「匈奴は気にしないぞ」

「漢人は気にします! 婚約者でもないのに」

「えー」

「いいですよ李校尉。どうせヒマですし……」

 そんな感じで、宴会が終わるまでぼーっと雑談している私たちです。
 しかし、疑問があるんですが。なんでパパは、私を戦場に連れてきたんでしょうかね?
 まだ7才なのですが。
 まあ、あのパパが意味のないことをするとは思えないので、何かあるんだと思いますが……
 まあ、本人もいないのに考えてもしかたがありません。せっかく軍隊に同行しているのですし、兵隊の様子でも見てみましょうか。

 漢王朝の軍隊には、いろんな兵隊がいますね。
 あちらで揃いの胴鎧と矛を持っているのは、漢王朝の正規軍でしょう。皇帝から装備品が支給されるのだと聞きました。
 いま近くを歩いている兵隊は、服も武器もバラバラですね。たぶん正規兵ではないのでしょう。
 黄巾討伐の軍隊には、自前で武器と兵隊をそろえて参加している私兵集団がたくさんいると聞いています。義勇兵、というのだそうです。
 正規兵とくらべると、かなりみすぼらしい見た目ですけれど、なかにはそこそこ立派な装備をつけた人たちもいるようですね。

「……ったく、盧植先生をクビにしたと思ったら、お偉いさんは着任早々宴会かよ。
 マジメに戦争する気あるんかね??」

「まぁまぁ、玄徳兄。
 呼ばれなかったからって腐らない」

 は?
 あそこでダベってる、立派な装備の兵隊さん。
 いま「ゲントク」って言いました??

「おお? そんなこと言ったって雲長だって、サケ飲みたいだろぉー?
 見ろよ、益徳なんかさっきから悶えてるぜ?」

「ガアアアアアッ!!
 酒の匂いがッ!!! 酒ガアアアアッ!!!」

 わわわわ、ゲントクとウンチョウ!
 劉備玄徳と関羽雲長じゃないですかぁ!!
 ということは、あそこでおかしな感じで悶えてる筋肉ダルマは張飛!?
 あれ、でも張飛って翼徳じゃなかったっけ。改名したんでしょうか?

 あ、やばい! どどど、どうしよう!?
 董卓の娘だってバレたら殺され……
 あ、まだ大丈夫か。

「五月蠅い連中ですな。お嬢様、黙らせてきます」

「待って!?」

 お願いだから李校尉はちょっと待ってください!
 ええっと……考えなきゃ……
 三国志の勝ち組は曹操孟徳ですよね。
 でも、劉備さんだって原作主人公!
 皆殺しの運命を回避するために、仲良くして損は無いはずです!!
 となれば、私にできることは……そうだ!

118 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:02:46 ID:k+OHsqFn0

「李校尉。あの人たちの言うのも、もっともです。
 兵隊さんたちは夏の暑さに耐えているのに、
 偉い人だけ宴会では、やる気がなくなります。
 お酒と肉をもってきてあげてください」

「む、そこまでしてやらずとも……」

「青! 持ってきたぞー!」

「速いですな!?」

 でかした! 豹くん!

―――――――――――――――――――――――

「えっ、我らに酒肉を?」

「父からの心遣いです」 

 私、ここ数ヶ月、男の人たちのなかに混じって生活していて、よくわかったことがあります。
 お酒と肉が嫌いな軍人さんはいません!!
 というわけで、豹くんが持ってきてくれたお酒と肉を、さっそく推定劉備玄徳さんのところに運びましたよ。兵隊さんが。
 贈り物で好感度を上げよう作戦ですね!

 三国志の劉備って、小柄で上品なイメージがあったんですけど、この推定劉備さんはちょっとイメージが違いますね。
 年齢はハタチくらいかなあ? 背は高いし、体格はがっしりしてます。百戦錬磨の兵隊さんって印象ですよ。あと耳たぶが大きいのが目立ちますねえ。福耳ってやつですね!
 ヒゲはとっても薄いです。チョビヒゲな感じ。

「痛み入る……っていうか益徳、もう飲んだのか」

「うめぇー」

 黒くて長い、立派なヒゲを生やした、推定関羽雲長さんがお礼を言ってくれます。なるほど、これが「美髯公」というあだ名の由来になったヒゲですか。つやつやですね。
 筋肉ダルマな推定張飛さんとは会話が成り立ちそうにないので、飲んでいてもらいましょう。

「えっと、すみません。お名前をうかがっても?」

「俺は幽州琢郡琢県の劉玄徳。
 中山靖王劉勝の後裔だ」

 やっぱり劉備じゃないですかー!
 中山靖王劉勝……そういえばそうでした。劉備って漢王朝の血筋を引いてるんでしたよね。
 家庭教師の先生に教わりましたが、中山靖王の劉勝さんという人は300年くらい前の皇族で、たしか皇帝の息子だったはずです。

「ところで、そちらは?」

「私は、董卓将軍の娘で、董青と申します」

「そうか、こんな小さい娘さんに気遣いしていただき、大変申し訳ない。だが、これは飲めないな」

「ななな、なぜでしょう?」

 ええええ!? もう嫌われた!?
 万能の好感度アップアイテムなのに!
 っていうかもう張飛さん飲んでますけどいいの?
 劉備さんは、なんだか芝居がかった手振りで語り始めました。

「見てくれ、この陣には何万もの兵がいる。たまたま董将軍の娘にお会いしたからといって、彼らの前で俺だけ酒を飲むわけにはいかないだろう」

「あぁん? お嬢様の振る舞いにグダグダと義勇兵ふ「えっと、その」

 李校尉、ステイ! ステイ!
 っていうか、もう張飛さん全部飲んで食べ終わりましたけど……

「益徳、お前なぁ……せっかく玄徳兄が徳を見せてるというのに」

「済まない、雲兄。吐けばいいか」

「結構です!?」

 なんなのこの人たちぃ!?
 と、ともかく! 好感度アップのためには、劉備さんにも飲んでもらわないと!

「りゅうb……劉玄徳様のおっしゃるとおりです。
 父に伝えます」

「え、マジ!?」

 危なかったぁ……思わず劉備玄徳って言いそうになってしまいました。
 さっきの挨拶では劉玄徳としか聞いてないですからね。下の名前で呼んだら怪しまれてしまいます。
 とにかくお父様におねだりしませんと!

―――――――――――――――――――――――

119 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:03:20 ID:k+OHsqFn0

 善は急げ。さっそく董卓パパに相談です。
 一般の兵隊さんたちが、将軍ばっかり宴会をしていることにムカついている話をしたら、董卓パパは真剣に話を聞いてくれました。
 やっぱりうちのパパは優しいと思いませんか?

「青ちゃん、よく知らせてくれた。
 兵たちには悪いことをしたのう。
 しかし、城を包囲してる兵まで酔っ払ったらまずいので、肉を配ることにしよう。それでよいか?」

「あ、はい、お父様。
 劉玄徳。劉玄徳をよろしくお願いいたします」

「うむ?? いや、良いことを進言してくれたから構わんのじゃがな」

 なんか怪しい選挙演説みたいになってしまいましたが、とりあえずうまくいったみたいです。
 パパと原作主人公が仲良しになれば、皆殺しの未来が一歩遠のくに違いないですからね!

「うおおおおおおお!」
「肉だ! うめえ!!」
「董将軍、万歳! 万歳!」

 うんうん、兵隊さんも劉備さんたちも肉を食べてますね。受け取り、確認しましたよ!
 ちなみに董卓パパは、着任早々兵たちに肉を配ったということで、とても人気が出たそうですが……
 私としては、原作主人公の劉備さんと、董卓パパの好感度を稼げたことが大事です!
 作戦成功、ですね!

120 :名無しさん:2021/03/01(月) 05:04:24 ID:k+OHsqFn0
スレ6話目の前半を小説化しました。
文字数が5000に到達したので2話に切ってます。

121 :名無しさん:2021/03/01(月) 14:11:08 ID:DHHe4dkb0
スレ版から描写をいろいろ追加しているので、ご意見もらえたら嬉しいです。

122 :名無しさん:2021/03/01(月) 20:59:12 ID:jvTY9fRH0
乙です

肉を喜ぶ兵達の台詞の前に、兵達が配られた肉を受け取ってから食べ始めるまでの
描写があった方が良いかと思います

123 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:13:43 ID:QDUw18C70


青ちゃんが中山靖王劉勝に詳しくてチョット違和感?
皇帝の親戚みたいなこと言ってたなーくらいの方が良い気がする

124 :神奈いです ★:2021/03/01(月) 21:21:32 ID:admin
こっちで学んだ知識だと思う。ただ、えらいマニアックな所教えたね。

125 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:23:02 ID:XNav6n6Q0
乙ー

>私ですか? もちろん我が家、安邑県のお城にいますよ。かよわい娘ですから。
城=都市だから屋敷のほうがいいかな。

> しかし、疑問があるんですが。なんでパパは、私を戦場に連れてきたんでしょうかね?
> まだ7才なのですが。


http://kanaides.sakura.ne.jp/test/read.cgi/kanabbs/1597316873/3852
http://kanaides.sakura.ne.jp/test/read.cgi/kanabbs/1597316873/3858
青ちゃんの志願では?

126 :名無しさん:2021/03/01(月) 21:25:59 ID:FY8x2ihc0
>>122
ありがとうございます
肉を配るシーンは描写するとくどくなると思って入れませんでした。
ただ自然に読めないといけないと思うので、修正してみます。

>>123-124
こっちで家庭教師の先生に皇室の歴史を教わったというイメージです。
種付け大魔神なので印象に残っていたとか、劉勝の末裔を自称する詐欺師が多いから気をつけるよう教わってたとか、覚えていた理由にディテールつけたほうがいいかな。
あとは戦国時代の自称源氏と絡める切り口もあるかな。


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