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神奈いですの雑談スレ11

369 :神奈いです ★:2025/01/30(木) 08:54:53 ID:admin
カンカンカン……
木を伐り音が響きわたる。

あちこちで木を伐り、それが荷馬に引かれて運び込まれた。
太い部分はまず木の板を取るためにのこぎりで引く。
そしてその残りや細い部分、木の枝、手ごろな大きさに切って炭焼き穴に放り込まれていく。

「さぁ、村人諸君、森を討伐するんだ!」
それらの作業の陣頭指揮を執っているのは迷宮伯嫡子、若君のオウドだ。
愛馬にまたがって鞭で次々に作業の指示をする。
隣に徒歩でついてきている若い書記官のルークが側から声をかけた。

「よろしいのですか若君?この森は迷宮伯閣下から禁猟区に設定されていますよね?」
「はっはっは、ボクがいいと言ってるんだから良いんだ!さぁどんどん加工してしまおう!」
「禁猟区は狩りの獲物の保護や、太くて高く売れる木材などいざというときの貯蓄でもあるのはご存じですよね?」
「うん」
「勝手に非常時の貯蓄を使ってしまって迷宮伯閣下に怒られませんか?」
「えー、か、母さんが……いや、いい!お、怒られたらボクが全責任を取る!」

オウドは苛烈な母の性格を思い出して一瞬震えたが、すぐに抑え込んで宣言した。
「でしたら私からは何も申し上げません」

 ― ― ― ― ― 

「ああ、違う違う。これはこうする」
「こうか?」

オウドが作業場の方に向かうと、市参事会から派遣された職人である矢作師や弓職人が村人に弓矢の作り方を教えている。
これも食器と引き換えにオウドが派遣をお願いしたものだ。
引き出物の箱から選んだよさげなアクセサリーが職人に報酬として約束されている。

森から特によく育ったイチイの木を選んで丸木弓に加工していく。
イチイは年輪が詰まっていて粘り強くしなやかで強く、弓の素材に最適なのだ。

その隣では木の棒をまっすぐに削り出し、鳥の羽で矢羽根をつけ、矢じりをつけて矢に作り上げていく。
余り出来が良くないのは練習用の矢として刈り取った草束を射させている。

これらで村人たちに自衛力を持たせるとともに、いずれ大規模な巻き狩りをして食料と毛皮の確保につなげるのだ。



「これはこう削って、違うって」
「ううーん」

木の板はそのまま売るのと、椅子やテーブルの部品、木の盾に加工するのに分けている。
椅子やテーブルといっても、木の板に穴をあけて棒を差し込むだけの簡単なものだ。
大きさもほとんど一緒で、使い分けもあまりされていない。

「若君、高く売るなら彫刻をいれないといかんが、こいつらじゃ無理だ」
「じゃあ彫刻は要らない。実用品だけ作って」
「安いぞ?」

職人がぶつくさ言う。そもそも市の職人と競合するようなまともな品はまだ早い。

村人たちの分を作り次第、市場に出すための商品を作らせる。
弓矢や盾などの武具に、家具や木のスプーン、ボウル、木桶などの木工品だ。
当然出来は悪いが、安く売らせるので構わない。
スライム掃除より稼げれば別になんでもいいのだ。

市の職人たちには「こんなゴミと君たちの名品が競合するわけじゃないか」と説得済みである。
彼らにはもっと品質の高いものに集中してもらうのだ。

それらの武具や木工品のうち、割合出来がいいのは別の馬車に積み込む。
これはみんなの雇い主であるボクの取り分となる。

日は流れ、木工品を市場や各村々に持ち込み、食料と交換する取引が安定してきた。
村人たちは食料の支援がなくてもちゃんとした食事を取れるようになった。

しかし、服と家はボロボロなままだ。そこに手を入れるほどの稼ぎはまだない。

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