ローカルルールを必読のこと

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神奈いですの雑談スレ10

1 :神奈いです ★:2021/06/27(日) 17:09:29 ID:admin
                         ,.。s≦il
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              ___,.。s≦///////...rj..|
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               ∨ ̄ ̄ |..・....l..・......|........_......|/:.:.:.:.:.:.:.ヽ
             ∨ ........|....... |..........|,...斗匕ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`、
              /:.∨_[]_|斗r七爪/,:へ、:.:.:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.:.‘,
             ‖':.:.:.:|...................../,:へ:斗―ミ___:.:.``ヽ:.:.:.:.:.‘
            ‖!:.:.: /................//ヽゝァテ示iゝ!:.:. ̄:.:.:.`、:.:.:.`、
          |i |:.: /............./,ィテi    ゞ‐',,,レ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`、:.:.:`、       現在は董卓の娘投下報告スレやで
          lハ:/..........//ゞ‐'  '     ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト:.:.:.:`、
              /.......//乂ヘ''''   ( フ ,ィ  ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',  \ヽ
           lニニ/:.:.:.:>/7;≧=‐rくy,|-r七==<:.:.:.:.:.:.:.',   ヽゝ
            lハ:.:.:.:.:./┴┴く/{ r<ヽヽヽ_/::: ::Y丶:.:.:.:',
             乂 ヽ/⌒:: :: :: :: ヽ「 ̄ ̄ ̄:: :: ヽ:: ::|   \:_ゝ
               /´ _ ̄``ヽ::|:: :: ::_::_:: :: ::l/|
              〈..´: :: :: \  Y ____ |_斗ヽ
              /:: :: :: :: :: ::ヽ、|´:: :: :: :: :: :||::`|/||-<
               /:: :: :: :: :: : : : : | :: :: :: :: :: ::|| : |_ハ_/
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                〈:: :: :: :: :: :: :: :: ::人:: :: :: :: :: ::ヾ/:::/
                 \:: :: :: :: :: :/:: ::\:: :: :: :: ::_::イ
                 >-r匕:: :: :: :: :: \_/:: ::|
                __/ :: :: |:: :: ヾ:: :: :: :: :: :: r――へ
            /:: :: :: :: :::| :: :: :: :: :: :: :: :: :::}___/ヽ
          _ノ{:: :: :: :: :: 入:: :: :: :: :: ::_:: :: :: :: :: :: :: ::)ー-__
         ∨/ハ:: :: :: ://|/〕:: :: /////\:: :: :: :: ://////
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
神奈いですの雑談スレ9(文明復興行動案相談スレ)
http://kanaides.sakura.ne.jp/test/read.cgi/kanabbs/1597316873/
神奈いですの雑談スレ8(文明復興行動案相談スレ)
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神奈いですの雑談スレ7(文明復興行動案相談スレ)
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神奈いですの雑談スレ2
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神奈いですの雑談スレ
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 DISCORD (捨て垢でどうぞ) https://discord.gg/jYv8Kfc
 ついったら 直接連絡はこっちに@kana_ides


9702 :名無しさん:2025/01/22(水) 18:13:50 ID:x6N9CCDO0
指輪物語は読みづらいから冒頭飛ばして読めってよく言うよね

9703 :名無しさん:2025/01/22(水) 18:23:23 ID:x6N9CCDO0
キョンは読者視点の皮を被って自分はごく普通ですって顔しておもしれーやつらと読者をつないでるけど
読んでるとちゃんとお前もおもしれ―やつじゃんってなるタイプ

9704 :名無しさん:2025/01/22(水) 18:46:11 ID:x6N9CCDO0
ツッコミ役が大事
漫才と同じでツッコミ、指摘する人がいるから読者や視聴者が理解できる
つねに置くには主人公が突っ込むのが便利

すごいです係とかも一種のツッコミ(指摘)と考えれば、序盤から合流するヒロインがそうなるのは理にかなっていると言えるかも

9705 :名無しさん:2025/01/22(水) 19:56:16 ID:T7OboVDA0
掲示板与えてるのって多分、解脱して仏になった甘粕カズフサかな
あの人はオ−ルスターでは真っ先に投票される人気ぶりだろうけど
立ち位置としては運営側だよな。モンゴルに放り込んでも適応するし戦国適正は高すぎると思われるが…

9706 :神奈いです ★:2025/01/22(水) 20:30:30 ID:admin
自分の作品は割と面白いとは思うんだけど、伏線とか起伏とかは弱点だとわかってる。
その時その時の展開しか考えてないし、お話全体にわたっての起伏調整とかしてない。

なぜかというと、私が自分の話を読みたいので、先までわかってたら楽しくないからだ。


9707 :名無しさん:2025/01/22(水) 20:51:55 ID:x6N9CCDO0
起伏の伏のところ書くのしんどいよね
いつも起のところ書きたい
シナリオの伏線を全部ヒロインとのいちゃラブシーンに仕込んで、
ヒロインの伏線をシナリオ主人公活躍シーンに仕込んで
交互に展開するとかできたら

9708 :神奈いです ★:2025/01/22(水) 21:03:01 ID:admin
それでいいな。
基本シーンはぜんぶイチャイチャさせていれば

9709 :名無しさん:2025/01/22(水) 21:05:38 ID:Rm5O5MY80
じゃあ早くヒロインを家に持ち帰らないと

9710 :名無しさん:2025/01/22(水) 21:20:39 ID:QKhUIPZc0
花嫁姿まで妄想しておいて、先輩以外もヒロインの枠でやるのはどうかと思った

さすがに、複数ヒロインで行くには一人にフラグ立て過ぎでは・・・・?

9711 :名無しさん:2025/01/22(水) 21:31:52 ID:x6N9CCDO0
「大姉……花嫁綺麗だったなあ」
「そうですね、先輩もあんな風になるんだろうと思いましたよ」
「なっ」
「先輩と結婚する人がうらやましいなあ」
「」
いまの先輩には致命傷
まで読んだ

9712 :神奈いです ★:2025/01/22(水) 23:37:27 ID:admin
楽しいんだけどそこのいじりをやりすぎるとちょっと拒否反応でるかなと

9713 :名無しさん:2025/01/22(水) 23:59:12 ID:x6N9CCDO0
匙加減ですか

9714 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 00:14:33 ID:admin
なんかいい感じの女の子にそれ言うほど
鈍感ではないし、政略結婚いやがってるの知ってるからその話題は振らない

9715 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 00:15:17 ID:admin
鈍感ネタはやりすぎると嫌われるんや

9716 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 00:16:49 ID:admin
まずアミリから恋人作ってもいいとか、
政略結婚なら君がいいとか、
恋愛していいよって言わないと。

本人が恋愛嫌だって宣言しちゃってるから。

9717 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 00:17:21 ID:admin
どうやっても告白にしかならないじゃん!!!

9718 :名無しさん:2025/01/23(木) 00:45:31 ID:pwDFCMCO0
そりゃ言ったらゲームセットだわwww

9719 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 00:53:23 ID:admin
うーん、やっぱり初動は一話ごとにヒロイン出るぐらいで良いんだなぁ。
遅すぎた。

9720 :名無しさん:2025/01/23(木) 01:02:36 ID:+3q2wSpT0
初動の顔見せはそうかもですね

9721 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 01:09:23 ID:admin
見切り発車でやってるからヒロインのキャラメイクがさっき終わったぐらいで。

9722 :名無しさん:2025/01/23(木) 01:13:40 ID:WiUELFOT0
無職転生はヒロイン一人で長々と引っ張っておいて長期離脱というすごい事やってるけど
あれは曲芸の領域か

9723 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 01:17:12 ID:admin
それで主人公が外道呼ばわりされてるの見た。

9724 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 01:24:24 ID:admin
ちゃんと主人公のキャラを立てる。
ちゃんとヒロインを早期に出して早期にイチャイチャする。

大体のプロットをきちんと立てて章分けとエンディングに向けた起伏をつける。


大事。

9725 :名無しさん:2025/01/23(木) 01:25:58 ID:IIuSh/110
>遅すぎた。
ぬ〜べ〜のゆきめみたいな例もありますし魅力的なヒロインであれば後からいくらでも挽回できますゾ

9726 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 01:31:47 ID:admin
Q:他人事のように言ってますが、アンタが書くのだからアンタが決めるのでは?
A:いや、ついったーの投票で決めるつもりなんだ。

正確にはフラグいくつかたてて、投票取り続けてフラグ立て切ったらゴールみたいな。

9727 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 01:34:02 ID:admin
アミリ先輩の場合

絶対条件
・アミリ先輩が政略結婚を受け入れる
・アミリ先輩が勘当廃嫡されて自由恋愛できるようになる

その上で
・オウドが恋愛感情を自覚する
・オウドが演劇モードを外して女の子に向き合う(全ルート共通)
・アミリが恋愛感情を自覚する
・自覚して恋愛感情を育てていく(デートイベントなど)

が必要


9728 :名無しさん:2025/01/23(木) 02:12:58 ID:/XihslPx0
ヒロインレースの前提段階まで話進めないといけませんな
全員提示して以降のどこかで迷宮伯が一時帰還して嫡男にあんたどうする気って確認してくるシーンは必要ですよね
それがきっかけになって自身の恋愛について考えるようになるか、最終分岐になるかはまた

9729 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 02:21:36 ID:admin
母さんは「さっさとハメて孕ませろ」「全員でもいいぞ」って言うと思う。

9730 :名無しさん:2025/01/23(木) 02:24:33 ID:CwAfqbtw0
強者が我慢などするな!と覇王色の覇気を持ってそうだけど
オウドくんに覇王色の覇気はあるのだろうか

9731 :名無しさん:2025/01/23(木) 02:56:30 ID:5Bx4nOI70
AAのイメージが世紀末覇王なんだから、まあ覇王色の覇気があってもおかしくはないが

9732 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 04:10:43 ID:admin
西大公の嫡女の結婚式でいきなり刺客が現れた!
招待客しか入れない厳重に警戒された場所になぜ!
客の武装はすべて解除されていたはず!

はい、迷宮伯の長男、オウドだよ。
周りの参列者のみんながひたすら驚いている。

もちろん列席の貴族の皆様のほとんどは魔法騎士でもある。
だから戦おうとする人もいるけど武器も魔法も封じられてて困ってるみたい。

皆の驚きは当然だけど、名簿が書き換えられてたから堂々と入ったんだと思うな。

アミリ先輩と一緒に名簿を確認して、名前がおかしい人を発見したとき。
ボクが最初に考えたのは刺客の可能性だった。

もし悪意のある人がいれば、あんな混乱は逃すはずはない。刺客を紛れ込ませるには最適の状況だ。
で、実際に西大公は南大公と戦争したばかりだし、家の中の統率もあまりとれていない。

あとは盗賊か詐欺師の類かな?どちらにしてもその「間違った名前の人」を見張っておく意味はある。
もちろんただのミスの可能性はあるんだけど、それなら取り越し苦労で笑い話にできる。

というわけで、大神殿の参列客に並んだんだけど、侵入者を見つけるのは大変だけど簡単だった。
まず新郎新婦の親族列は除いていい。ここにいたらさすがにばれる。
そして西大公に従属している西大公派の貴族列。これも自派の貴族の顔を知らないわけがないからばれる。
問題は帝国の東西南北から呼び集めた独立派の列。ここはもう誰が誰だか。
同じ西ならともかく、東から来たんですと言われても名前も家紋も知るわけがない。

で、皆礼服に家紋をつけているし、独立派の参列者の家紋はすべてメモってきた。
なのでメモにない家紋の人を探すだけだ。


で、儀式が最高潮の時。
西大公が祭壇の前で参列客に後ろを向いて護衛もなく立っていた。
神聖な儀式で花嫁と花婿の親か一番親しい親代わりの人しか立ってはいけない場所だ。

目の前の怪しい人が突然前の人を突き飛ばして前に出た。
左手で右手をつかんでうめき声と共に刃を引き抜く。

うわ、義手に仕込み刀をいれてたのか、それは貴族むけのおざなりな身体検査じゃわからないはずだ。

そして西大公のほうへ斬りかかろうとするが、もちろんボクは準備万端。
「早風!」

事前に精神集中しておいた緊急加速魔法を発動!
ボクの得意な風魔法!
効果は一瞬!ちょっと早く動ける!それで十分!
もちろん攻撃魔法じゃないから禁止されていない!

風とともにとびかかったボクのケリが、刺客の膝裏に突き刺さった。

9733 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 04:47:34 ID:admin
「ぎゃああ?!」
いきなり膝を折られた刺客があおむけに倒れ。
仕込み刀が宙を舞って、ボクの目の前に落ちてくる。

「うわ、危なっ?!」
魔法の風と共に軽やかに交わす。

「なっ?!」
驚愕と共に振りむく西大公、手元の公爵宝珠を握りしめ、防御魔法らしきものを展開する。
さすが公爵殿下、対応が早い。

祭壇の上では花嫁の公爵嫡女がドレスのスカートを割って白銀に輝くレイピアを取り出した。
さっと花婿の前に立って、周囲を警戒する。
嫡女さんも対応が早いね……って武装禁止じゃなかったのか。

「きゃああ?!」
「うわあああああ?!」
参列客のあちこちから叫び声がした。

「曲者召し取ったりー!」
「気をつけろ!武器を隠し持ってるはず!」
式場の一角で刺客その2を取り押さえたのはボクの護衛騎士二人だ。
若いほうは貴族の礼服を、年上の騎士はドレスを身に着けている。

「おとなしくしてくださいー!」
「このー!」
もう片隅ではアミリ先輩配下の武装メイドたちが数人がかりで別の刺客を取り押さえていた。

紋章官と騎士たちが入り口近くでもう一人取り押さえて、これで4人。
そして公爵家の騎士たちがわらわらと入り口から殺到してきた。

「取り押さえろ!抵抗するなら口と脳以外は壊して構わん!」
花嫁がレイピアを振るって家臣に指示を飛ばす。

その後ろで、魔法杖を握った花婿がブルブル震えていた。

「……だ、ダーリン?!大丈夫?!」
「……よくも、僕の」

違う、怯えてない。
怒ってる。

ぶわっと長めの黒髪が浮き上がる。魔力が噴き出ている。
黒目が大きく見開いて、黒い光を放っている。
「僕と僕の妻の結婚式を汚したなーーーーーっ?!!!」

バキン……!!
平和結界が壊れる音がした。
中級魔導士4人分と魔法陣で組まれた平和結界を中から壊した?!

魔力を込めた魔導士の杖を横に薙ぎ払うように動かし詠唱する。
「蒼龍の地爪っ!地を裂きて天を貫けえええ!龍爪蒼獄!!!」
大神殿の床から突如具現化した龍の手が4本。
刺客4人を同時に捕らえ、爪が彼らを貫く。
「ぎぁあああああ?!」

痛みに悶える刺客たち。

おお、地属性の上級魔法だ。教科書で見た。
さすが学園主席。
ボクには魔法の上級適正はなかったから、すごい人は素直にすごいと思う。

「さすがは学園の俊英たる主席!お見事な魔法の腕です!」

ぱちぱちぱち……
拍手するボク。

ぱちぱち……
周りの貴族たちもしばらく呆気に取られていたけど、少しずつ拍手に参加してくれた。

「はぁ……はぁ……いや、ありがと……」
「いや、迷宮伯嫡子殿のおかげで助かった!よく瞬時に止めてくれた!」
「うむ!余の命の恩人だ!」
疲れたのか肩で息をする新郎。嫡女と公爵が次々にお礼を言って。


「はーーーはっはっはっはー!どうだ西の公爵よ!我が刺客の毒刃は痛かろう!!」

神殿の外でものすごく大きな声がした。

9734 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 05:00:23 ID:admin
木曜日の更新です 23話 
https://kakuyomu.jp/works/16818093091603659446/episodes/16818093092668967151

9735 :名無しさん:2025/01/23(木) 05:38:54 ID:pwDFCMCO0
魔王さんがプロットで聞いた時より大分悲しいことになってる……

9736 :名無しさん:2025/01/23(木) 06:16:06 ID:7jVJsomd0
年上騎士さんやっぱり女だったのね
そして、婿殿すげぇな

9737 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 06:23:46 ID:admin
「はーーーはっはっはっはー!どうだ西の公爵よ!我が刺客の毒刃は苦しかろう!!」

神殿の外の大広場。

結婚式を外から見守っていた市民たちの上空に巨大な黒い影が現れた。
透き通った青空が薄暗くなり地に落ちる影が伸びて人のような形を作る。

しかしそれは一目でわかるが人ではない。
猛々しい雄羊のような角が頭に生えている。
その顔は髑髏そのものであり、眼窩には血のように紅い火が燃え盛る。
骨の白さが暗い影の中で不気味に浮き上がり、無数の尖った歯があざ笑うかのように並んでいる。

全身は黒いローブで包まれており、闇が溶岩のように吹き上がっては足元に流れていく。

伝説の本に描かれる悪魔をさらに悪意を持って描き替えたような姿に、市民たちにに動揺が広がる。

「あ、あ、悪魔?!」
「いや、あれは……絵本で見た西の魔王じゃ……!?」
「まさか?!復活したのか?!」
「いま、公爵様に刺客を放ったっていわなかったか?!」
「まさか殿下はもう……?!」
動揺し、怯える市民たち。

「落ち着け市民たち!余は無事だ!」
そこに大神殿の正門を大きく開き、西大公と護衛の騎士たちが現れた。
側近が使う風魔法により、風にのって声が広場全体に行き渡る。

「おお!殿下!」
「信じておりました!」
信じていなかった市民も含めて領主の登場を歓迎する。

公爵は空に浮かび上がる魔王に向き直り叫ぶ。
「残念だったな西の魔王!この者が貴様の刺客を見抜いておった!刺客の刃は余にかすりもせんかったわい!」
隣のオウドを指し示す公爵。
またもや市民から歓声があがる。

「……」
魔王は黙りこくって身動きもしない。

そこにオウドが芝居がかった動きで前に進み出た。朗々とした声が広場中に響き渡る。
「聞け、愚かなる魔王よ!貴様の悪辣で腐敗に満ちた企みはすべて防がれた!
人の叡智の前では悪魔の策はぼろ布のごとき欠陥ばかり。
ああ、闇の衣はいかに深くとも、正義の太陽の前には埃と散るばかりと古き歌に言うがごとし!」
「おーーー!!!」
「よく言った!」
「カッコイイぞ!」

今度は市民たちだけでなく、後ろの貴族たちからも賛同と称賛の声があがる。

すると魔王が動き出した。
「「はーーーはっはっはっはー!どうだ西の公爵よ!貴様の娘の結婚式は我が刺客で無茶苦茶にしてやったわ!!
人間どもの結界や警備など所詮この程度!いつでも貴様らを殺せることを思い知るがよい!」

その魔王の言葉に新郎が怒りを爆発させた。
「黙れこの寄生虫!大地の力よ呼び覚ませ、剣を伸ばせ、天を裂け、青を抜け、地霊神天刃!!!」

大地から巨大な刃が現れ魔王を貫いた。
見事な上級魔法の行使に市民たちが歓喜に沸く。

と思いきや魔王は身動きもしていない。
「くっ、幻術だ!どこかに中継してるやつがいる!」
「騎士たちよ、怪しいものを探せ!」
新郎の声に、公爵嫡女が騎士たちを群衆の中に放った。

上空では魔王が高らかに宣言している。
「我は荒野の大魔王。人間どもよ、貴様らに安寧の時は無し。我を恐れよ!我の尖兵に羽虫のごとく狩られる日は近い!」

オウドが拡声魔法で言い返す。
「聞け!虚勢と欺瞞に満ちた魔王よ!
貴様は言ったことの万分の1も成し遂げられない!
人の知恵と魔力に怯え、幻覚でこけおどすしかできない!
ねじ曲がった心は直き心に勝たず、邪は正義にかなう無し、
天の許さぬ邪悪に、などて恐るる事がある!と歌にあるのを知らないのか!」
身振り手振りを踏まえて、演劇で有名な歌を歌い上げるオウド。

「おお!貴族さんの言うとおりだ!」
「いいぞ、もっと言え!」
「うちの姫様と婿さんは強いぞ!魔王め戦ってみろ!」
「バカやろーー!」
市民たちが一斉に乗ってきた。
罵声と怒号が一斉に魔王に浴びせられ、親指を下に向けて挑発するものもいる。

「……」
魔王はまた黙りこくる。

そして突然消えうせた。

突き抜けるように青い空には、闇のかけらも残っていなかった。

公爵は周りを見渡すと、市民たちに向かって叫ぶ。
「皆のものよ!よくやった!魔王は恥じて逃げ去ったぞ!人間の勝利である!」

「やった!」
「公爵殿下、ばんざーい!」
「逃げたぞ!魔王が逃げた!」
「はははは口ほどにもない!」

市民たちが口々に喜びの声を上げる。


そこに公爵嫡女が新郎を連れて現れた。
「聞け市民たち!神殿はゴミ虫がいてかなわんので、我が結婚式はここで完遂する!」
「おおーー!!」
「わが市民たちが神々に代わり、我が婚姻の証人となる!」
というと嫡女は新郎を抱き寄せて力いっぱいに口を吸った。

「おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「いいぞー!」
「もっとやれー!」

貴族たちと市民たちに祝福され、この前例のない結婚式は終わるのだった。



9738 :名無しさん:2025/01/23(木) 06:34:21 ID:7jVJsomd0
絵本すげぇな。記録残した人いるんだ

>「「はーーーはっはっはっはー!どうだ西の公爵よ!
ここカッコが二重になってます

>側近が使う風魔法
>オウドが拡声魔法で言い返す
同じものなら表現統一したほうがいいかと

9739 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 06:41:14 ID:admin
風属性の魔法で拡声魔法だから……修正する。

9740 :名無しさん:2025/01/23(木) 07:01:40 ID:7jVJsomd0
マリーが使ってたからバストラ読者には同じものって分かると思うんですが
違う表現されると、何か違うのかと混乱するかなと

9741 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 07:12:23 ID:admin
公爵家に婿入りしてきた新郎は思う。

西の魔王と眷属の悪魔どもというのは寄生虫の一種だ。
人間や知性のある種族『話す子ら』の恐怖や悲しみなどの負の感情から生まれ、恐怖を啜って生きている。

人々の恐怖がそのまま魔王の力となり、恐れられれば恐れられるほど魔王は強大になっていく。

最初にやつらが現れた時はその特性が理解できず、恐怖が恐怖を呼んで帝国西部の半分が悪魔の軍勢に支配されたこともあった。
当時の皇帝が全帝国に総動員をかけて領土を奪回し、帝国クエストを受けた勇者パーティが皇帝宝具を授けられてようやく討伐できたのだ。

その後、何回か復活したことがあったが、特性がだんだんと明らかになり、被害を限定して討伐できるようになった。
だんだんと復活の間隔がのび、前回の討伐からは100年以上経過している。魔王の特性を知るものも少ない。


あの迷宮伯の嫡子だったか。芝居がかった言い方だが、小気味よい言いっぷりでよく市民や貴族の恐怖を一掃してくれた。
悪魔族の習性までよく調べている。
しかも名簿を調べて刺客のあたりをつけて刺客をすべて防いでくれもしたんだ。

しかし、名簿に工作して暗殺者を送り込むなど、こんな姑息な作戦は初めてのはずだ、何か変わったのだろうか。

いずれにせよ、僕は美しい妻との結婚式に舞い上がって警戒が足りてなかった。恥ずかしいことだ。

調子に乗って平和結界の破壊までしてしまった。
そんなことはやるもんじゃない、反動が大きすぎる。そのあと上級魔法を2回使っただけなのにもう疲労の極みだ。

「あの迷宮伯の子にはお礼をしなければ」
「そうね」

妻である公爵嫡女は裏切りものの首を廊下に並べている。
返り血が頬についていてぞくっとするぐらい綺麗だ。

魔王を崇拝する邪教の信者が紛れ込んでいたらしい。
広場で騎士が幻覚魔法を中継しているやつを捕らえ、調査したところ芋づる式に城内の裏切り者を見つけ排除することができたのだ。

「で、将軍に書記官長はどう思うかしら?」
廊下に立たせた将軍と書記官長を前に、珍しく口調を柔らかに話しかける妻。
二人とも冷や汗でびっしょりである。

「はっ!このような隙を見せたことは我が不明と無能に起因しますが、さらに大本はこやつが悪いのです!」
「何を言うのですか!私の責任も当然ありますが、貴方が名簿を無茶苦茶に!」
さっそく言い争いを始める二人。何も反省していない。

「誰が悪いとか、私はどうでもいいんだけど」
レイピアをもてあそぶ妻。

「まず自分の仕事を完璧にして?」
「ははっ!!!致します!申し訳ございません!」
「かしこまりました!!」

「反省したなら行ってよろしい」
平身低頭して逃げるように下がっていく将軍と書記官長。


「いいのあれ?」
「父上が長年の功績があるからってかばうのよ。でもね、次はないの」
「そうだね」

というと、妻が僕を抱き上げ、寝室に運ぼうとする。

「あ、あの、ハニー……今日はいろいろあって疲れたよね?」
「ええ、いろいろあったよね……ドキドキしちゃって……いい初夜にするよ?」

初夜の練習は沢山したし、ちょっと今日は僕は体力が……

そして僕は頑張って夫の義務を果たした。煙ももう出ない。










9742 :名無しさん:2025/01/23(木) 07:48:54 ID:HXx+WQys0
ショタから搾り取る長女w

9743 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 07:52:47 ID:admin

暗闇の中。

我は荒野の大魔王。我が領地の東方に広がる人間と呼ばれる家畜どもを支配する大王である。

「支配できてないですけど」
「うるさい、なの」

人間は家畜のくせにすぐ手を噛んでくる。
ようやく復活出来たと思えば我の身体は小さく、魔力も随分と衰えてしまった。

「可愛いですよ」
「黙れ、なの」

いずれにせよ、家畜どもに誰が支配者かきちんと思い出せてやらねばならない。
恐怖が十分に産まれれば我が力も全盛期にすぐ戻るはずである。
そうすればこの秘書の再教育も可能だ。

「どっちにしても今は正面から攻めるのは難しいの。だから魔王教の信者を増やして恐怖を少しずつ広めるの」
「あれは魔王様には珍しくいい考えでしたね。定期的に恐怖もらえますし」
「珍しいとはなんだ、なの」

秘書は無表情だ。
復活してすぐ部下を作ったのはいいが、なかなか忠実で有能な部下にならない。
こいつは有能で、魔王教の組織などいろいろやってくれているが、どうも魔王への敬意がかけている。

「ただ、南の公爵の使者を装って独立派を煽るのはなぜか失敗しましたね」
「あれだけバカにされて戦わないとか家畜の風上にもおけないゴミなの」
「公爵の謝罪が思ったより早かったですね」

まぁ、よい。そちらは本命ではない。

「そろそろ我が信者が暗殺を成功させてるはずなの。成功すれば帝国西部に我が名と恐怖が一発で広がるの」

 ― ― ― ― ―

「はーーーはっはっはっはー!どうだ西の公爵よ!我が刺客の毒刃は苦しかろう!!」

水晶玉を見ている秘書が報告する。

「公爵無事みたいですが」
「なんで4人も送り込んだのに全員失敗してるの!?幻影止めるの!」
「はい」

水晶玉の中の魔王像が停止して黙りこくる。

「えっと、この場合は録画パターンC、再生」
「せめて名乗りはきちんとあげて、魔王だって認識させるの。怖い怖い自画像作ったから皆恐怖するの」

「我は荒野の大魔王。人間どもよ、貴様らに安寧の時は無し。我を恐れよ!我の尖兵に羽虫のごとく狩られる日は近い!」

「……恐怖を感じないの」
「……なんか家畜が言い返してますね」
「なんでちょっと言い返したぐらいで恐怖が消えるの!」

怒りのままに叫ぶが恐怖が来ないことにはしょうがない。

「……どうします?」
「さっさと接続切るの!信者たちも逃がすの!」
「……遅かったですね捕まりました。あ、自殺してます。魔王様ばんざーい!」

秘書が無表情なまま、信者の口真似をする。

「さっき言い返したやつを特定するの!どうせどっかの家畜の長だから殺すの!」
「……今回の作戦で大赤字ですが?」
「……」
「一領主を攻めても黒字にならないので、公爵家に工作してたんですよね?」
「……」
「表立ってどっか攻めたらまた勇者が来るから裏からやってるんですよね?」
「正論は嫌いなの」

「いま、家畜どもの帝国西部で魔物に魔石食わせて回ってるんで、そのうち恐怖が広まります、そこからなら黒字化も望めるかと」
秘書がなだめるように言ってくる。

まぁよい。我らにはまだまだ時間がある。
今回は表立って攻撃はせず、少しずつ家畜どもの世界を揺るがしてやろう。

この世が恐怖で満ちるまで。



9744 :名無しさん:2025/01/23(木) 07:59:46 ID:jFR9/7hM0
おお!魔石の販売先あるじゃん!!

9745 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 08:03:20 ID:admin
あ、帝都大結界の話抜けてた。いれるわ

9746 :名無しさん:2025/01/23(木) 08:28:36 ID:IIuSh/110
これ読者は魔王様のこと新しいヒロイン候補だと思うんじゃないかな…w

9747 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 08:30:28 ID:admin
いいんだけど、純粋に悪い子だぞ。

9748 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 08:37:27 ID:admin
うおお、5千文字かくと肩こりが

9749 :名無しさん:2025/01/23(木) 08:46:06 ID:/XihslPx0
怒りを食うタイプの亜種がいたらげらげら笑いながらNDKしにいきそう

9750 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 09:26:09 ID:admin
公爵宮殿の大広間は魔道灯に照らされたシャンデリアのきらめきに包まれていた。
一面の壁には公爵家の歴史を語るタペストリーが貼られており、その前に設えた豪奢な席に、新郎と新婦が座っている。
その両側を両家の親族が固め、来客を待ち構えていた。
会場には楽隊のお祝いの曲が満ちており、参列者たちの心を浮き立たせる。

結婚式の翌日は半日をかけた大披露宴である。

名だたる貴族たちが次々に現れ、婚姻を祝う贈り物を贈呈する。
贈り物自体はすでに倉庫に回収しているので、実際には見本を一つだけと目録を代わりに贈るのだ。
この席で贈り物をもらっていては、新郎新婦が贈り物につぶされて死んでしまう。
見本だけでもすぐに倉庫にしまいなおされる
それだけの規模で披露宴が進行している。

それぞれ帝都産の名品や魔道品、工芸品などを次々に献上していく。

そして新郎新婦、そして側に付き添う公爵と言葉を交わしていく。
新婦がなぜか眠そうで、新郎がお疲れ気味なのを除けば大きな問題はなく式が進んでいった。

親族たち、西大公派閥、それ以外の領主たちの番が終わった。
会の大詰めに近づいてきたときに番が回ってきたのが、迷宮伯嫡子のオウドである。

「グリムホルン迷宮伯嫡子、オウドリヒト・フォン・グリムホルン卿ーー!」
執事が名前を読み上げる。

礼服に身を包んだオウドが新郎新婦の前に進み出る。
新郎新婦に一礼をし、また親族席に一礼をする。
親族席に座っているアメルニアーナ姫と目が合い、微笑むと向こうもにっこりと笑い返してくる。

「この度はご結婚おめでとうございます。我が領地から些少ではありますが贈り物を」
オウドが贈り物の毛皮のうち一番いいものを1枚。
護衛の騎士に持たせて新郎新婦の前に差し出した。

「へっ」
「ふふっ」
新郎新婦の後ろに控えている重臣席で将軍と書記官長があざ笑う。
田舎領主らしく貧乏くさい贈り物だ。みな大枚をはたいて帝都の最上級品を持ってきているというのに。

眠そうな顔をしていた新婦が目を見開く。
新郎の脇を突っつきながら大げさに言う。

「おお、これは何と素晴らしい毛皮なのかしら」
「うん、とてもいいね。送り主の心がこもってるのが見えるようだ」

合わせて贈り物をほめたたえる新郎。

「ねぇ、将軍、書記官長は、どう、思う?」
新婦である公爵嫡女が冷たい笑みをたたえて、後ろの重臣に振り向いた。

「……は」
「えっと……」

硬直する二人。

「こ、これは……艶やかで……」
「毛並みもそろっており……」
ぴくぴくと頬を引きつらせながら、必死に毛皮をほめる二人。

「過分なお言葉にお礼の言葉もありません。ありがとうございます。
しかし、この毛皮を手に入れるまでにはとある話がありまして」
「ほう、ぜひ聞きたい」

オウドの言葉に首を乗り出す新婦。

そこでオウドは芝居がかった身振りで歌い始めた。
「これはお金のない貴族の嫡子のものがたり」
「おお、ゴブリンがいるならば、討伐せざるをえず」
「兵糧もなく資金もないが、騎士たちの気持ち一つを頼む嫡子」
「封建の契約を忘れ、ただ正義のために立ち上がる騎士たち」
「集まりしは精鋭の騎士、富も報酬も求めず、ただ名を惜しむ」
「悪霊小鬼は二百三百。収穫を損ない家畜を奪い民を苦しめる」
「精強無比の騎士たちは数倍の小鬼たちを蹴散らす」
「そのとき、小鬼どもの後ろからは魔石を食ったオルク、悪霊大鬼」
「か弱き村人なれど、大鬼小鬼の悪行は見逃せず」
「逃げんとするオルクに対し、立ち向かうは十尺の棒一つ」
「ここで逃がせば千年の憂い、勇敢なる村人はオルクを追い詰め」
「嫡子は見事魔石食いの大鬼の首を刈りおわんぬ」
「その討伐で手に入れたのがこの毛皮」
「わが領地の民と騎士との信頼の証であります」
といってオウドが一礼する。

そこまで聞いて、新郎新婦が拍手した。
「……素晴らしい!」
「歌上手いな」

横から公爵も口を出す。
「かように君臣一体の素晴らしい領地の嫡子であるから、余の命を救い、
魔王の陰謀をくじき、広場で魔王を追い払うことができたのだ。改めて礼を申す」

深々と礼をするオウド。
「私など何もしておりません、すべては皆様の徳とお力によるものです」
「皆の者も、この勇敢で民想いの若君に拍手を!」

「おお!」
ぱちぱちぱち……

満場の拍手が会場を包むのだった。


オウドは深々と礼をして思った。
やっとボクの家臣と領民たちを認めさせてやったぞ。すっきりした。

なお、そのあとグスタフ伯爵のポーションも紹介した。
なぜか新郎さんがすぐ飲んでとても喜んでいた。

披露宴が終わった。



9751 :名無しさん:2025/01/23(木) 10:11:47 ID:/XihslPx0
新郎新婦から今回の件の歌作る依頼が来ないかな
まあお抱えの詩人に作らせるか

この魔王対策なら笑い話か英雄譚にして広めるのが効きますよね
「魔王が出た」だけ広まったらよくないし
間抜けな魔王がこてんぱんにされた西大公家は安泰だ若者の勇気に祝福をみたいな

9752 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 10:11:49 ID:admin
「なぁ、本当に要らないものないのか?」
「要らないよ」

迷宮伯嫡子のオウドです。
さっきからアミリ先輩が褒美を押し付けようとしてきます。

うーん、西大公にあんまり頼りたくないし、あんまり多大な贈り物貰っちゃうと従属への道がつながってる気がする。
母さんからも他家に貸しは作っても借りは作るなと言われているし。

なお、毛皮の返礼の引き出物はすごい豪華な食器とかナイフとかベルト飾りとかボタン飾りとかを4箱ぐらいもらっている。
これは贈り物の交換だから貸し借りはない。
うち、1箱は今回活躍した護衛騎士へのご褒美に使った。自分ちの家臣にはどんどん贈り物をして従属させて問題がない。

なんていえば諦めるかな。素直に言うか。
褒美とか欲しくないって。
先輩のお姉さんの結婚式が壊れたらかわいそうだと思ったのと、ウチが巻き込まれるのも嫌だなって思っただけだよね。
だから。

「そんなことのためにやったんじゃないし、ただ先輩が悲しむと思って」
「えっ……」

なんか先輩が照れてる。可愛い。
でもなんで照れるの……あ。

「あ、いや、先輩のためっていうか、ウチの領地のためにもなるし!」
「……」

なんか変な誤解を生んでるのがわかる。誤解……かなぁ?

「……」
「……」

なんか無言が続いて耐えられない。
とにかく話題を変えよう。

「そうだ、錬金術ギルドを紹介してくれない?魔石と土の護符を交換したいんだ」
「それぐらいタダで貰ってあげるぞ」
「だから褒美とかじゃなくて取引がしたいんだって」
「うーん、分かった」

アミリ先輩はあまり納得してないようだったが、公爵領都の錬金術ギルドを紹介してくれた。

 ― ― ― ― ―

「土の護符か、大得意だ。僕に任せろ」

なぜか錬金術ギルドに行くとお婿さんがいた。
大喜びで自分がやるといいだして魔石を奪われた。

そういえば婿さん、土属性の上級魔導士だった。

「この魔石を使うか……これだとあれだな。半分以上余るぞ」
「そうですか?土の護符と交換して足りないって聞いてたんですが」
「それは商人への売値じゃないか?素材としての価値なら半分はあまる。何か護符以外でほしいものがあれば作るがどうする?」
「でしたら……」

婿さんに加工をお願いした。
加工待ちの間に町にでて一通り必要な買い物を済ませる。

そして出発の日になった。

 ― ― ― ― ―

数日だったはずだが、なんかとても長くいた気がする。

ボクたちは帰り支度を始めている。
公爵宮殿の中庭で荷造りだ。

護衛の騎士たちがそれぞれに荷物を馬車に積み始めた。
なんか来た時より荷物が増えてる気がする。


「この砂糖を持って帰ったら嫁が喜ぶだろうなぁ」
「俺は砂糖は売って指輪にしたぜ、これであの子に結婚を申し込む!」
「ああ、金欠で結婚資金なかなかなかったからな」
「こっちは砂糖を売って、夫の服にしたよ」

騎士たちもお土産を持ってうれしそうだ。
みんな時間を見つけて買い物に行けたんだな。

「休み取っていくから……」
「待ってるよ……」

アミリ先輩のメイドとウチの騎士の一人がなんか別れを惜しんでいる。
いつ仲良くなったんだ。

「ねぇ、ご褒美で貰ったこの耳飾り、似合うと思って」
「え……いいの?実は私もこれ……」
なんか若手騎士と年上の騎士さんも何かアクセサリ交換とかしてる。

いいなぁ、ボクも恋人がほしい。


と思ってるとアミリ先輩がいつもの色眼鏡と魔導士ローブ姿で現れた。
いつもの中性的な口調になっている。
「もう帰るのか」
「領地を長く開けてられないしね……先輩は帝都の魔法学園に戻るんだよね?」
「ああ、ちゃんと卒業したいしな……」
先輩は遠い目をしてつぶやくと、真剣な口調になった。

「なぁ、やっぱり魔法学園に戻らないか?学費ぐらいは出すって父上が」
「……その借りは返せないよ」
「……そうだよな。済まない」

先輩は元気なく伏し目がちに言う。
「お互い、身分と家から自由になれないな……」
「貴族だしね」
家の外交方針に反することはなかなかできない。たとえそれがいろいろな意味でベターでもだ。

「なぁ、その、もし私が家を捨てれば……いや、いい。忘れてくれ」
「……うん?わかったよ?」

先輩が最後に何を言いたかったのか、分かるようなわからないような。分かってはいけないような気がして。
ボクはグリムホルン迷宮領に帰るのであった。







9753 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 10:12:18 ID:admin
やっと2章終わったーーーーーっ!!!?クッソ長かった!!!!!寝る!!!

9754 :名無しさん:2025/01/23(木) 10:27:03 ID:VSg/nY++0
おつです

9755 :名無しさん:2025/01/23(木) 10:36:32 ID:QQa3TRqE0
乙ー
おやすー

これなら、後々他のヒロインがいる中で押しかけてくれば十分コントロール効くな

9756 :名無しさん:2025/01/23(木) 10:50:23 ID:/XihslPx0


迷宮産出から買って消費地まで運ぶと倍以上になる
すると帝都製品とかも倍以上になるのか

婿さんもうちょっと柔らかい印象があったけど対外はこんな感じなんですね
背伸びしてるショタみ

9757 :名無しさん:2025/01/23(木) 10:50:54 ID:w7YoWO4o0
おつおつ

9758 :名無しさん:2025/01/23(木) 12:17:45 ID:jFR9/7hM0
将軍と書記官長は大丈夫なのかコレ

自分の主君筋を、大事な結婚の場で身を呈して守った、皇帝直参の貴族に対して
披露宴の場で失笑をかますとか、色々と立場分かってんのかな?

9759 :名無しさん:2025/01/23(木) 13:08:35 ID:/XihslPx0
「我々がいないと巨大なる西大公領は回らんからな、強く咎めることなどできんのだよ、がっはっは」
「父上への義理は今回で果たしたから」

9760 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 14:18:31 ID:admin
そいつらは割と思い上がってるから。

査読してもらって違和感なければ投下していくか。

9761 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 14:48:57 ID:admin
24話 闇が現れた!
https://kakuyomu.jp/works/16818093091603659446/episodes/16818093092675330430

25話、26話カクヨムで16時、17時更新予約です。

9762 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 15:04:47 ID:admin
<3章プロット カネがないけど領地の諸課題>

・オウド君、途中でグスタフ先輩と別れ故郷に帰る。結婚式での対応のお礼を言われる
・帰国してルークに結婚式の話をする。「そこまでしろと言ってない」「えー」「で、ご不在の間の宿題です、領内向け借金の借り換えスキップ、裁判が3件、各支城と本城の収支報告、グリムホルン市からの定例報告と市参事会の人事承認願い、神殿人事です」
・たまってた許認可申請を一晩で片づけ、ついでに行政書類を読み込む。
・「お金がないのはわかるけど、表面的な報告で領地の状況がよくわからないな……」
・よし、自分で見に行こう。

・ルーク「こんな一晩で終えるとか、まぁ適当でもサインだけしてもらえればいいんですが……うわめっちゃ赤はいってるなにこれ」

・外出するが妹ちゃんにつかまる。デレ。
・ビア樽ババアのところへ行く。
・迷宮を見学させてもらう
・女冒険者ちゃん登場、ツン。
・冒険者登録する
・クエストを貰う。
・クエストをやる
・移民差別を見る
・流民娘登場
・よし流民村に行ってみよう
・みんなで歌って仲良くなる。流民娘ちゃん歌が上手くてかわいい。

9763 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 15:10:20 ID:admin
突然キャラが増えすぎだろ

9764 :名無しさん:2025/01/23(木) 15:25:16 ID:/XihslPx0
領からの仕事が減って、
下級や初級冒険者救済の半公共事業仕事も減って、
商人が減ったから護衛も減って、
領主にカネ貸してる大商人からの迷宮系依頼ばっか
依頼料が低くて放置されてる都市外の村の魔物被害対策の仕事が手を付けられずに余ってる

9765 :名無しさん:2025/01/23(木) 16:53:22 ID:jFR9/7hM0
手っ取り早く儲けるには、魔王教の人達に魔石を売って金に買えるのが良さそう

直接やると色々とマズいから、後で始末しても良いやつにやらせてマージン取るか

9766 :名無しさん:2025/01/23(木) 17:31:33 ID:JCwRrQF+0
魔王教の信者パーティが魔石掘りに潜ってそう

9767 :名無しさん:2025/01/23(木) 17:56:44 ID:B2KqeB3t0
舞台が領地の迷宮に移るから仕方なくない?

9768 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 17:56:44 ID:admin
人類の敵を認識して売るのもそんなキャラじゃないし、
認識しないで売っててバレたらコメント欄で叩かれるだろ。
危険だぞ

9769 :名無しさん:2025/01/23(木) 18:25:53 ID:7jVJsomd0
搾り取られてるショタ新郎に栄養ドリングが上手いなぁ
予想してなかったので、おぉってなった。

9770 :名無しさん:2025/01/23(木) 18:30:30 ID:7jVJsomd0
ルーク君視点で、若君は思ってたのと違うってのを入れていいかも

9771 :名無しさん:2025/01/23(木) 18:49:04 ID:jFR9/7hM0
じゃあ迷宮の魔石在庫を囮に魔王教の人達を集めて拿捕して、奴隷に売るとか?

奴隷に売るのも評判悪いなら、刑罰として労役を課して開墾や灌漑水路の整備をさせるとか

9772 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 18:49:26 ID:admin
ルーク君が若君をどう見ててどうかわったか。採用したいので、
具体的にどこを褒めるのが良いでしょうか。提案募集です。


9773 :神奈いです ★:2025/01/23(木) 18:50:39 ID:admin
そもそも魔王教が魔石集めてるってのがメタ情報だから
自然にその展開にするの難しくない?

9774 :名無しさん:2025/01/23(木) 19:18:14 ID:7jVJsomd0
ルーク君、若様が学園言ってる間のこと知らないから、
母親の執務態度から息子も似たように思ってたんじゃないかな

母親は今までの描写からすると豪傑って感じだし、ざっくばらんな印象
でも、オウド君は内容読み込んでしっかり判断してる

あとは騎士たちにしろ、ビア樽ババアにしろ、ルーク君からすると理屈で動かせない人を
なぜか動かせてるとか?

9775 :名無しさん:2025/01/23(木) 19:33:26 ID:/XihslPx0
元は破天荒な当代と比べてまじめで大人しい印象だった
いまはなんかチャラいし英雄を夢見る若者どころか英雄になったような言動をしていて不安を感じる
ただ、やる気と行動力、決断力があり、想像以上の結果を出してくるのでわからなくなった
話は通じるが通じた上ですっとんでいくので共有してほしい
どこかで派手にすっ転ぶかもしれないので足元を支えないと

9776 :名無しさん:2025/01/23(木) 21:48:32 ID:4zVAAtOIi
>>9765
取引とかせず、魔王教を探してそのまま襲撃して金奪えばいいのでは・・・?

9777 :名無しさん:2025/01/23(木) 22:54:25 ID:B2KqeB3t0
流民が流民できるのは生活魔法で大抵の問題を解決できるから?ただし魔石がいるとか

9778 :名無しさん:2025/01/23(木) 23:19:58 ID:zRhltExa0
>・帰国してルークに結婚式の話をする。「そこまでしろと言ってない」「えー」「で、ご不在の間の宿題です、領内向け借金の借り換えスキップ、裁判が3件、各支城と本城の収支報告、グリムホルン市からの定例報告と市参事会の人事承認願い、神殿人事です」

まずい。この一文だけでルークへのヘイトが芽生えてしまった。疲れてるかもしれん。
多分、西大公での活躍に水が刺されたような気分になったんだろう。ご不在の間の宿題って、別に遊んでたわけやないんやで。

9779 :名無しさん:2025/01/23(木) 23:43:48 ID:arr6SwJs0
>各支城と本城、グリムホルン市
本城は領主の住居と軍事拠点だけでグリムホルン市を城下町としてるのではなく別個に存在している?もしそうなら読者に解説挟まないと理解難しそう

市参事会もあるから自治度の高い自由都市で迷宮攻略した英雄を担ぎ上げて領主に据えて判子係にしてるのかな
母さんのうちはいいけど代を重ねるごとに関係悪化しそう

9780 :名無しさん:2025/01/24(金) 00:34:33 ID:hEBrQmzV0
歴史ある西大公家の家臣団が外交関係であれほど質が低かったから
一代の英雄が起こした迷宮伯家の家政の質も察するべきではあるんだよね

そこはオウド君の留学経験に絡めて明確に描写した方がいいかも?

9781 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 01:33:35 ID:admin
低いというか鎌倉武士しかいない

9782 :名無しさん:2025/01/24(金) 01:58:53 ID:N0u71xiK0
宿題っつーか、領主の一族自身でないと決済できない案件じゃないの?
いや、家宰に仕切りを任せても別に問題ないはずだよな

領主本人限定ならともかく、領主の嫡子ならOKだけど家宰などの部下には
決済できない案件って何だ?

9783 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 02:03:45 ID:admin
家宰ですか、冒険の旅に出てますな。

9784 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 02:04:24 ID:admin
重臣がみんな旅に出ているんだ。しかもそれで行政が回ってるんだ。つまり行政など存在しない。

9785 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 02:06:04 ID:admin
Q:市の行政は?
A:市参事会の金持ち市民が回してる
Q:村の行政は?
A:村長と村役人が回してる
Q:城の行政は?
A:城代騎士が回してる

9786 :名無しさん:2025/01/24(金) 05:54:23 ID:N0u71xiK0
じゃあマジで、オウド君に勉強させるためだけの宿題?

9787 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 06:21:09 ID:admin
宿題って単語が悪いので変えます

9788 :名無しさん:2025/01/24(金) 06:45:19 ID:42F3Pn3e0
オウド君じゃないと処理できない案件がたまってますとか?

9789 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 07:08:17 ID:admin
第三章 カネがないので無料で内政


夏に向けて少しずつ強くなる日差しが騎馬と馬車の一行を照らしている。
道沿いの草木は生き生きとした緑で覆われ、太陽の祝福を浴びて輝いている。
目の前に広がる道は視界の限りに続いていて、風がみんなの背を押すように足取りは軽やかだ。

迷宮伯嫡子のオウドリヒト・フォン・グリムホルン、つまりボクは初めての外交を成功させた達成感と、
政治の重圧から逃れた解放感に浸りながら、馬を進めていた。

「いやぁ、しかしオウド君のおかげで良い取引ができた。感謝するぞ」
隣で同じように馬を歩ませているのは、小山のような背丈と筋肉をもつ隣領の伯爵、グスタフ先輩だ。

「ボクは先輩のポーションを婿さんにおススメしただけだよ。気に入ってもらえたのは先輩のウデだと思う」
ここでいう先輩というのは魔法学園の先輩だ。特技は錬金術でポーションを作ること。
西大公嫡女の結婚式で婿さんにポーションをおススメしたら、大変気に入ってもらえ、いい値段で定期購買の契約を結ぶことになったのだ。
不作の影響で景気が悪く、ポーションの売り上げが落ちて困ってたグスタフ先輩はホクホク顔だ。
もちろんこれは正当な取引だから公爵への借りにはならない。

「いや、しかし効き目や回復能力ならば帝都や公爵領都にもっといい錬金術師は居ると思うのだが」
「先輩のポーションって細かく成分とか調整してあって、怪我だけじゃなくて疲労の回復や栄養補給にも良いって母さんが褒めてたよ」
母さんである迷宮伯は元冒険者だ、長期で戦い続ける迷宮探索では疲労回復や栄養補給はとても重要だと言っていた。

「そうか、普通は戦傷や事故の怪我を治すのに使うから回復効果だけを狙うものな……俺の付与効果はダンジョンに潜らないなら不要か。まぁお疲れだったようだし……」

そこまで言うと、グスタフ先輩は「ん?」と何かに気づいたようだった。

「待てよ、それを定期的に飲みたいってどんだけ疲れて……ああ!」
「何に納得してるの?」
「……わからんか?」
「わからない、教えて」
「ははっ、オウド君が結婚したらわかるさ!」

むっ。

先輩は自分は小さくて可愛い奥さんがいるからって偉そうに。
さっきから先輩、先輩って言い続けたせいで帝都に帰っていったアミリ先輩を思い出す。

魔法学園で同じ魔物学の道を選んだ学友であり、一緒に大公家の問題を見つけて魔王の陰謀を防いだ仲間でもある。
彼女としばらく会えないと思うと、なんか急に寂しくなった。

結婚か……その前に恋人が欲しいなぁ。


9790 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 08:03:47 ID:admin
「というわけで、ボクに許嫁とか居たりしないよね?」
「帰ってきて最初の発言がそれですか。居ません」
「えー」

えー、ではない。
久々に帰ってきた若君を出迎えた若い書記官のルークは思った。
無事に帰ってきてくれてありがたいのだけど、外交の結果はどうなったんですか。

「そもそも近隣の同格の領主に適齢の令嬢がいないから、学園で探すように迷宮伯閣下からも言われてたんですよね?」
「うん」

「で、そちらの成果は……あ、いや予算不足で留学打ち切らせたのは申し訳ございません」
「はっはっは、ルークのせいじゃないよ。ボクも勉強で忙しかったしね」
謝るルークを宥める若君。

若君は思い出す。
辺境の新興貴族の嫡男ということで嫁入り前提になるから、向こうから狙ってくる人はほぼいない。
ただ自分から行くのは恥ずかしかったので演劇部で話し方や接し方を学んだ。
演劇っぽく振舞うことでなんとか女子と話せるようになったが、ウケはしても仲良くなれた子はいなかった。
魔物学ゼミで先輩と自習してる方が楽しかったので、勉強ばかりしてたのもある。

そこに少女が現れた。淡い青色の亜麻のドレスをひらめかせながらオウドに抱き着く。
「おかえりなさいお兄様。婚約者など不要ですわ!私がおりますもの!」
「ありがとうボクの美しく可憐なドルミーナ!」

オウドは妹の亜麻色の髪に軽くキスをすると、妹を離した。

「妹君がいらしても婚約者は必要ですよね?」
「そうだね」
「そんな!?」
ルークの冷静な指摘にうなづく若君と驚く姫君。

出来るだけ早く借金を返して妹のほうを留学に出さないとまずいのでは、と書記官ルークは思った。
妹は久しぶりに兄が留学から帰ってきてからなんかいちいち距離が近いし、兄は妹に甘い言葉をささやいている。

この兄妹はそろいの紺青の瞳を持っているが、髪は兄が茶色で、妹が亜麻色だ。
母である迷宮伯には固定の夫がいない。冒険先で気に入った男と付き合っては別れを繰り返してきた。
つまり、父が違うのである。

兄妹婚は推奨されていないが、半兄妹で稀に結婚に行きつくのがいる。
しかしグリムホルン伯爵家としては血縁が広がらずに閉じてしまうのはあまりよろしくない。
貴族と結婚して味方となる親族を増やすのが貴族の家として一番ありがたいのだ。

今は兄しか見えてないが、姫君も年頃の貴族の若者だらけのところに行けばきっとまっとうな恋愛をしてくれる……はずだ。と信じたい。

悩むルーク書記官をよそに、若君は違うことで悩んでいた。

演劇で訓練したのに年頃の女性の容姿を褒めるのってなんか恥ずかしいんだよな。
妹みたいに小さな子や一世代以上年上なら気楽に女性の容姿を褒められるんだけど。
アミリ先輩にも知性や人柄を褒めたことはあるけど容姿を褒めるのができなかった。
これでどうやって恋人を作ったもんだろうか……。

兄の誉め言葉を無邪気に喜んでいるドルミーナ姫を置いて、若い男二人は悩み続けるのであった。

9791 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 08:10:21 ID:admin
んーーーー。ちょっと違うな?

9792 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 08:12:47 ID:admin
※やりなおし

第三章 カネがないので無料で内政

夏に向けて少しずつ強くなる日差しが騎馬と馬車の一行を照らしている。
道沿いの草木は生き生きとした緑で覆われ、太陽の祝福を浴びて輝いている。
目の前に広がる道は視界の限りに続いていて、風がみんなの背を押すように足取りは軽やかだ。

迷宮伯嫡子のオウドリヒト・フォン・グリムホルン、つまりボクは初めての外交を成功させた達成感と、
政治の重圧から逃れた解放感に浸りながら、馬を進めていた。

「いやぁ、しかしオウド君のおかげで良い取引ができた。感謝するぞ」
隣で同じように馬を歩ませているのは、小山のような背丈と筋肉をもつ隣領の伯爵、グスタフ先輩だ。

「ボクは先輩のポーションを婿さんにおススメしただけだよ。気に入ってもらえたのは先輩のウデだと思う」
ここでいう先輩というのは魔法学園の先輩だ。特技は錬金術でポーションを作ること。
西大公嫡女の結婚式で婿さんにポーションをおススメしたら、大変気に入ってもらえ、いい値段で定期購買の契約を結ぶことになったのだ。
不作の影響で景気が悪く、ポーションの売り上げが落ちて困ってたグスタフ先輩はホクホク顔だ。
もちろんこれは正当な取引だから公爵への借りにはならない。

「いや、しかし効き目や回復能力ならば帝都や公爵領都にもっといい錬金術師は居ると思うのだが」
「先輩のポーションって細かく成分とか調整してあって、怪我だけじゃなくて疲労の回復や栄養補給にも良いって母さんが褒めてたよ」
母さんである迷宮伯は元冒険者だ、長期で戦い続ける迷宮探索では疲労回復や栄養補給はとても重要だと言っていた。

「そうか、普通は戦傷や事故の怪我を治すのに使うから回復効果だけを狙うものな……俺の付与効果はダンジョンに潜らないなら不要か。まぁお疲れだったようだし……」

そこまで言うと、グスタフ先輩は「ん?」と何かに気づいたようだった。

「待てよ、それを定期的に飲みたいってどんだけ疲れて……ああ!」
「何に納得してるの?」
「……わからんか?」
「わからない、教えて」
「ははっ、オウド君が結婚したらわかるさ!」

むっ。

先輩は自分は小さくて可愛い奥さんがいるからって偉そうに。
さっきから先輩、先輩って言い続けたせいで帝都に帰っていったアミリ先輩を思い出す。

魔法学園で同じ魔物学の道を選んだ学友であり、一緒に大公家の問題を見つけて魔王の陰謀を防いだ仲間でもある。
彼女としばらく会えないと思うと、なんか急に寂しくなった。

結婚か……それ以前にボクに恋人はできるんだろうか。

 ― ― ― ― ―

「というわけで、ボクに許嫁とか居たりしないよね?」
「帰ってきて最初の発言がそれですか。居ません」
「えー」

えー、ではない。
久々に帰ってきた若君を出迎えた若い書記官のルークは思った。
無事に帰ってきてくれてありがたいのだけど、外交の結果はどうなったんですか。

「そもそも近隣の同格の領主に適齢の令嬢がいないから、学園で探すように迷宮伯閣下からも言われてたんですよね?」
「うん」

「で、そちらの成果は……あ、いや予算不足で留学打ち切らせたのは申し訳ございません」
「はっはっは、ルークのせいじゃないよ。ボクも勉強で忙しかったしね」
謝るルークを宥める若君。

若君は思い出す。
辺境の新興貴族の嫡男ということで嫁入り前提になるから、向こうから狙ってくる人はほぼいない。
ただ自分から行くのは恥ずかしかったので演劇部で話し方や接し方を学んだ。
演劇っぽく振舞うことでなんとか女子と話せるようになったが、ウケはしても仲良くなれた子はいなかった。
魔物学ゼミで先輩と自習してる方が楽しかったので、勉強ばかりしてたのもある。

そこに少女が現れた。淡い青色の亜麻のドレスをひらめかせながらオウドに抱き着く。
「おかえりなさいお兄様。婚約者など不要ですわ!私がおりますもの!」
「ありがとうボクの美しく可憐なドルミーナ!」

オウドは妹の亜麻色の髪に軽くキスをすると、妹を離した。

「妹君がいらしても婚約者は必要ですよね?」
「そうだね」
「そんな!?」
ルークの冷静な指摘にうなづく若君と驚く姫君。

出来るだけ早く借金を返して妹のほうを留学に出さないとまずいのでは、と書記官ルークは思った。
妹は久しぶりに兄が留学から帰ってきてからなんかいちいち距離が近いし、兄は妹に甘い言葉をささやいている。

この兄妹はそろいの紺青の瞳を持っているが、髪は兄が茶色で、妹が亜麻色だ。
母である迷宮伯には固定の夫がいない。冒険先で気に入った男と付き合っては別れを繰り返してきた。
つまり、父が違うのである。

半兄妹なので万が一にもこの二人がくっついてしまうとグリムホルン伯爵家として血縁が広がらずに閉じてしまう。
家臣としては貴族と結婚して味方となる親族を増やしてほしいのにそれは困る。迷宮伯閣下もそうお考えのはず。

今は兄しか見えてないが、姫君も年頃の貴族の若者だらけのところに行けばきっとまっとうな恋愛をしてくれる……はずだ。と信じたい。

悩むルーク書記官をよそに、若君は違うことで悩んでいた。

演劇で訓練を続けたのに、年頃の女性の容姿を褒めるのがとても気恥ずかしい。
妹みたいに小さな子や一世代以上年上なら気楽に女性の容姿を褒められるのだが。
アミリ先輩にも知性や人柄を褒めたことはあるけど容姿を褒めるのができなかった。
こんな感じでもボクを好いてくれる人はいるんだろうか。

兄の誉め言葉を無邪気に喜んでいるドルミーナ姫を置いて、若い男二人は悩み続けるのであった。

9793 :名無しさん:2025/01/24(金) 08:14:54 ID:N0u71xiK0
おお、以前より危機感を感じて健全な感じがする

「結婚適齢期のド新興貴族が、何を悠長な」という感じが減った

9794 :名無しさん:2025/01/24(金) 09:34:14 ID:hEBrQmzV0
ここに問題があるぞって端的に示されてていいね

9795 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 10:34:48 ID:admin
迷宮伯の住居であるグリムホルン城はその名の元となった角笛の迷宮を見下ろす高台に建てられている。
角笛の迷宮のすぐ近くにはグリムホルン市が狭い市壁にひしめき合う家々を抱えて存在していた。
城は割と新しい。迷宮伯が皇帝から伯爵位を綬爵したときに、市の防衛の弱点である高台に城を築いてそこに移り住んだのである。

その城の一角、領主の椅子と最低限の家具しかない質素な石造りの謁見の間で若い書記官のルークは若君に問いかけた。

「で、西大公家の訪問と魔石の売却はいかがだったのですか?」
「はっはっは、忘れてた」
「忘れないでください!」

「えっとね」
若君はルーク書記官に西大公家での活躍を語る。
西大公家で無礼な扱いと丁重な扱いを同時に受けたこと。
従属するように迫られたこと。
独立派伯爵たちが怒って戦争寸前だったこと。
学友を通じて公爵を説得して謝ってもらったこと。
名簿整理をしたら魔王の刺客を見つけたこと。
魔王の刺客が西大公を暗殺しようとしたところを蹴り倒して止めたこと。
歌って魔王を撃退したこと。
領地の毛皮がバカにされたこと。
でもゴブリン討伐の経緯を説明したら褒めてもらったこと。
魔石は無事に土の護符と交換できたこと。

「まぁ、お兄様!まさに英雄のようですわ!」
「ありがとうドルミーナ!」

若君を手放しで褒めたたえるドルミーナ姫とその姫の頭をなでる若君。
その横でルーク書記官は唖然として口がふさがらなかった。
えー……と言いたい気分である。
まるで演劇や伝説のようなことを平然とやりきってきたというのだ。
留学前は破天荒な元冒険者の迷宮伯閣下に似ず、まじめでおとなしい若者だったはず。
いや、話を聞くかぎりマジメでマメなところは変わってない。ただ単に想像を超えることをし続けているだけだ。

一体この若君をどう支えていけばいいのだろうか。

そんな考えにルークが耽っていると若君がルークの肩に手をかけた。
「そうだ、領地の行政書類を確認しようと思ってたんだ。一式持ってきて」
「は、はい!ただいま!」

若君の前に文机が置かれ、その上に所せましと書類が並べられた。

「こちらが過去の決済分で、こちらは報告書類。こちらはお戻りになったらサインを頂こうとしていた分です」
「なるほど」

報告書はグリムホルン市や各支城、村々からの定期報告、そして本城の収支報告などだ。

迷宮伯領は封建制だ。
市は商人やギルド長などが参事会を作って自治しているし、城や村々は騎士たちの所領になっている。
よって簡単な定期報告は受けるが基本は彼らが行政を行っている。

「ご領主代理としてのサインを頂きたいのは、借金の借り換え契約書が2件、これは領内の商人から借りた分ですね」
「うん」
「あとはグリムホルン市参事会や神殿の神官、騎士の人事の承認、あと裁判結果の承認依頼……」
「わかった、ちょっと読むから時間頂戴」
「サインだけでいいんですが」
「読むよ」

領内のほとんどは自治していたり、家臣の領地だったりするのでほとんど彼らの提案を認めるだけでいい。
むしろあまり口を出すと家臣たちを信頼してないのかという話になる。
迷宮伯がいる間は書類を読むのを面倒がって、内容を読み上げさせては適当にサインしていた。

まぁ、過去の書類を含めると結構な量があるし、読み終わるのに10日はかかるだろうか。
「ではわからないところがあればお呼び出しください」
ルークには仕事がある。
迷宮伯が書類仕事ができる重臣たちをごっそり冒険に連れて行ってしまったため、書類仕事はほとんどルークが一人でやっているのだ。

ただ、行政というほどの行政をしているわけではないので何とかなっている。
せいぜい、本城の食費や修繕費などの経費の集計をするぐらいである。

足早に書記部屋に戻るルークを尻目に、若君はさっそく行政書類を読み込み始めた。

 ― ― ― ― ―

翌日、書記部屋に積み上げられた書類を前にルークは驚いていた。
すべてサインが終わっている。

まぁ、流石に読むのをあきらめたのか……と思っていたら各資料に細かく下線やメモが書いてある。
まさか全部読んだのか。

マメにもほどがあるだろう……やっぱり母君である迷宮伯閣下には似ておられない……。
と思っているとメイドが書置きをもって飛んできた。
見ると妹と散歩に行ってくるので探さないでください、と書いてある。

「そういえば迷宮伯様もよく城を脱走されてましたね」
「そこは似なくていいんだよおおおお?!」
とぼけたようなメイドの言葉にルークは叫んでいた。

9796 :神奈いです ★:2025/01/24(金) 10:36:27 ID:admin
眠い寝る

9797 :名無しさん:2025/01/24(金) 11:57:11 ID:cxmjUbQT0
プロット段階であったルークくんへのヘイトがすっかり無くなって面白かった。
ここで断片的に語られただけの設定なんかもするりと盛り込まれて良かった。

9798 :名無しさん:2025/01/24(金) 12:18:19 ID:BdF+7Yy10
若君は事務能力も高いよね

迷宮伯は堂々と出かけるイメージ
咎められたら視察だ視察って有無を言わさず出る
だけど
仲間の重臣の中に口うるさい真面目なやつがいて面倒だから脱出していた。そしてルークとその人が苦労してたとか
フットワークが軽いのはあいつの長所だから仕方ないってあきらめ気味。でも言う。
ルークが一番関わっていたのがその人で、ルークもその人が言うから迷宮伯の破天荒なところを受け入れられていた
でも今はその人も一緒に出掛けてて、心労の方向性が変わったかと思いきや若君がやんちゃになって帰ってきた

みたいな妄想

9799 :名無しさん:2025/01/24(金) 12:33:17 ID:gjcBqrSm0
なんか逆に欠点や暴走する部分が無い、無個性な万能キャラに見えてきたな(クソワガママ)

はよう甘粕や河井ぐらい暴走しなきゃ

9800 :名無しさん:2025/01/24(金) 12:39:39 ID:H45LltQj0
>まるで演劇や伝説のようなことを平然とやりきってきたという

ルーク君はもっと半信半疑な方がよさそう
貴族は武勇伝を大きくしがちだし話を盛ってるのでは?
いやいや、英雄の息子だから本当にしたのかも?ぐらいで

9801 :名無しさん:2025/01/24(金) 12:40:12 ID:bFm5ioY60
オウドくんの設定だと異母兄弟居そうだよね
認定はされてないけどお互いに多分そうだろうと思ってる

9802 :名無しさん:2025/01/24(金) 12:51:41 ID:m6O4rtsl0
ママは出産しても元気に外を出回ってそうだから
他に育てる乳母がいて乳兄弟とかいそうな気がする

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